2009©coop99 filmproduktion, Essential Filmproduktion, Parisienne de Production, Thermidor
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フランス南西部ピレネー山脈の麓にある小さな町ルルド。1858年に聖母マリアが少女ベルナデッタの前に現れ、言われるままに洞窟の土をすくうと泉が流れだし、その泉の水で失明した石切り工の目を洗ったところ視力を回復した。

「マリア出現の地」「奇跡の水が湧き出る泉」として有名になったルルドには、年間600万人もの人々が奇蹟を求めて巡礼に訪れる。このルルドをロケーション撮影し、奇蹟を求める人々、奇蹟的な出来事を目の当たりにした人々の心模様が見澄ますように描かれていく。

クリスティーヌ(シルヴィー・テステュー)は、多発性硬化症のため手足を自力では動かせず、長年車いす生活を送っている。心の寂しさから解放される旅行は、ボランティアの介護が充実している聖地にしか行かれない。聖地ルルドも、見方によってはシステマチックに流れていくツアー地。ホテルの広いレストランに、時間になると食事に集まってくる巡礼者とボランティアたち。その日の巡礼コース、ピクニックなどのスケジュールが説明されたあとは、いくつもの聖堂が建ち、ルルドの泉がある洞窟など聖域を巡り、癒しのための祈りとミサに与かる日々。

クリスティーヌと同室のハートゥル夫人は、介助をおろそかにされてきたクリスティーヌの世話をしながら独り暮らしの孤独な思いが癒されていく。息子の車いすを押して何度もルルドを訪れ、熱心に祈り求める母子。さまざまな思いを抱きながら、巡礼ツアーの終わりが近づいたある日、クリスティーヌは、ルルドの泉につながる洞窟の入り口で、少し身体に変化を感じた。そして眠りについた深夜、不思議な声に目覚め、自力でベッドから起き上がることが出来た。

2009©coop99 filmproduktion, Essential Filmproduktion, Parisienne de Production, Thermidor
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長年歩くこともできなかったクリスティーヌが、一行とともにピクニックに同行できるようになった。なぜ信仰深い母子ではなく、クリスティーヌに奇蹟が起こったのか。司教にそのような質問を向ける婦人たち。羨望の眼差しを感じながら、同様の疑念を抱いていたクリスティーヌだが、やがて「奇蹟を受けた者としてふさわしくありたい」と願うようになっていくのだが。

神のひとり子イエスが、世に現れた’奇蹟’と神の愛を想うクリスマス・イヴを前に公開される。奇蹟について、じっくり思いをめぐらしてみたい。【遠山清一】

監督:ジェシカ・ハウスナー 2009年/オーストリア=フランス=ドイツ/99分/原題:Lourdes 配給:エスパース・サロウ 12月23日(金)よりシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

公式サイト:http://lourdes-izumi.com