©Coriolanus Films Limited 2010
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ウィリアム・シェイクスピアの最後の悲劇『コリオレイナス』の舞台を現代に置き換え、新解釈と見応えのあるサスペンスアクション作品に仕上げられている。勇猛果敢な戦いぶりと多大な戦功に対して’コリオレイナス’の尊称を与えられるローマの将軍ケイアス・マーシアス(レイフ・ファインズ)。その敵国ヴォルサイ軍の将軍タラス・オーフィディアス(ジェラルド・バトラー)。登場人物の名前、ストーリーの流れはほぼ変わらず、格調あるセリフや情景設定などはシェイクスピア劇の香りを楽しませてくれる。

食糧難のローマ市の市民にマーシアス将軍が穀物支給を反対したことから、貧民層の暴動が起きようとしている。責め寄る貧民たちに対して、国を守る義務意識の低さなどを愚弄するかのような言葉で批判し、一層の反感を買ってしまう。そのような国情の隙を突くように攻め込んできたヴォルサイ軍。マーシアスの軍に4度も排斥され、そのリベンジを燃えるオーフィディアスだが、2人が直接闘った今回もマーシアスが勝利しローマは守られた。

凄まじい戦いを制したマーシアスの戦功に対して元老院は’コリオレイナス’の尊称を与え、執政官に推挙する。執政官になるためには市民に選挙に当選しなければならない。政治的な職務を潔しとせず執政官を固辞するマーシアスだが、最後は母ヴォラムニア(バネッサ・レッドグレーブ)に説得され選挙に臨むことを承諾する。しぶしぶながら選挙活動に駆り出されるマーシアスを、二人の護民官が策をめぐらし民衆を煽り立てる。激怒したマーシアスは、民衆の政治参加を公然と批判する言動をしてしまう。

©Coriolanus Films Limited 2010
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戦功を称賛された栄誉から急転直下の裁判に掛けられ追放刑を言い渡されるマーシアス。信念をもって闘い、戦功をもって国を守ってきた自尊心を、策謀によって屈辱と悲嘆に貶められたその心に激しい義憤と決意が燃え上がる…。

主演と初のメガホンをとったレイフ・ファインズとライバル役のジェラルド・バトラーは、共にシェイクスピア劇から俳優の歩みをスタートしている。そして脇を固める演技派の俳優たちとリアルな戦闘シーンなど贅沢な演出が、民衆政治の危うさと母の説得に心動かされ翻意していく人間関係の強いつながりをみごとに描いていく。現代のシェイクスピア劇を堪能させてくれる。

監督:レイフ・ファインズ 2011年/イギリス/123分/原題:Coriolanus 配給:プレシディオ 2012年2月25日(土)より丸の内ルーブルほか全国ロードショー

公式サイト:http://www.eiyu-shoumei.jp