アレグリア'わが娘サリータに'を踊るサラ・バラス
アレグリア’わが娘サリータに’を踊るサラ・バラス

いま、日本のフラメンコ愛好者人口は5万人とも言われ、あの独特な節回しと情熱的な声が印象的な歌(カンテ)のファンも増加し、スペンに次ぐフラメンコ好きな国として認められてきている。スペイン新世代を担うフラメンコギターリスト、カンタオール(男性歌手)、カンタオーラ(女性歌手)、バイラオール(男性舞踏家)、バイラオーラ(女性舞踏家)らが出演するこの作品は、フラメンコの醍醐味と明日を予感させ存分に味わわせてくれる。

監督・脚本を手がけたカルロス・サウラは、ギュスターヴ・ドレやジュリオ・ロメロ・デ・トレスなどヒターノ(スペイン語でジプシー)絵画の数々を舞台背景のようにふんだんに使い、パコ・デ・ルシア、マノロ・サンルーカル、ホセ・メルセーたちのギターや、サラ・バラス、エストレージャ・モレンテ、エバ・ジェルバブエナらバイラオーラとイスラエル・ガルバン、ファルキートらバイラオールを舞わせるホセ・メルセー、ミゲル・ポベダのカンテでフラメンコを体現させる。

説明や台詞はなく、’生命の旅と光’をテーマにフラメンコの多彩なパロ(曲種)と作品で21幕に構成し描いていく。「最初の作品ルンバ’緑よ、私が愛する緑よ’に始まり、。誕生<アンダルシアの素朴な子守歌>、幼少期<アンダルシア、パキスタンの音楽とそれが融合した音楽>、思春期<より成熟したパロ>、成人期<重厚なカンテ>、死期<奥深く、純粋で清浄な感情>から、希望に満ちた再生へとつなげ、命の蘇りを想起させる。」(プレス資料より)
img4f308c4b6487e 21幕で演じられる曲種と作品名(主な出演者)は以下のとおり

[1]ルンバ’緑よ、私が愛する緑よ’(カルロス・ガルシア、マリア・アンヘレス・フェルナンデス、ホセ・カルモナ)
[2]アレグリア’わが娘 サリータに’(サラ・バラス、マロ・モントーヤ)
[3]ソレア・ポル・ブレリア’フアン・モラオ’(ディエゴ’エル・モラオ’、モンセ・コルテス)
[4]カンタヘネーラとゴレリアス’二つの魂’(ダビド・ドランテス、ディエゴ・アマドール)
[5]ガロティン’不思議な者の美しさ’(ロシオ・モリーナ)
[6]コプラ・ポル・ブレリア’それら四つのカポーテ’(ミゲル・ポベダ)
[7]ソレア’哀歌’(エバ・ジェルバブエナ、パコ・ハラナ)
[8]’サタエ’(マリア・バラ)
[9]’聖週間’(群舞)
[10]マルティーネーテとトナー’立ち上がれ’(ホセ・メルセー)
[11]ブレリア’シギリージャ’(マヌエル・フェルナンデス’エル・カペータ’、ヘスス・ゲレロ)
[12]無伴奏’静寂’(イスラエル・ガルバン)
[13]グアヒーラ’夜が明ける前に’(アルカンヘル)
[14]アレグリアス’孔雀の踊り’(マルロ・サンルーカル)
[15]タンゴ’タンゴス’(エストレージャ・モレンテ)
[16]’時’(群舞)
[17]ブレリア’時の伝説’(トマティート、ニーニャ・パストーリ)
[18]子守歌’子守歌とコーヒー’(エバ・ジェルバブエナ、ミゲル・ポベダ、パコ・ハラナ)
[19]サバテオ’いっぱいの夢’(ファルキート)
[20]ブレリア・ポル・ソレア’アントニア’(パコ・デ・ルシア)
[21]ブレリア’ヘレスのブレリア’(ルイス・フェルナンデス’エル・サンボ’、ヘスス・メンデス、モライート・チーコ)

ブレリア・ポル・ソレア'アントニア'を弾くパコ・デ・ルシア
ブレリア・ポル・ソレア’アントニア’を弾くパコ・デ・ルシア

独自の文化と因習を疎まれ、偏見と迫害の長い歴史を歩んでいるヒターノとフラメンコは深いつながりがある。苦しみの哀歌に留まらず、さまざまな曲調を歌い、踊り、演奏する’生命の旅と光’の競演は、まだフラメンコを知らない人たちにも新たな情熱と躍動の息吹を感じさせてくれる。   【遠山清一】

監督:カルロス・サウラ 2010年/スペイン/101分/原題:Flamenco, Flamenco 配給:ショウゲート 2012年2月11日(土)よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

公式サイト:http://www.flamenco-flamenco.com