©2011 Twentieth Century Fox
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旧約聖書に「善良な人は子孫にゆずりの地を残す。罪人の財宝は正しい者のためにたくわえられる」(箴言13章22節)と書かれているが、先祖が連綿と守ってきた土地を受け継ぐことは、本来は神さまからの祝福。だが、現代では様々な制度法律の中で、先祖からのゆずりの地を受け継ぎ、守り続けていくことが困難になる状況がままある。ハワイ全島を統一したカメハメハ大王の末裔マット・キング(ジョージ・クルーニー)が、先祖からの土地の管理をどうするかの悩みを骨格に、子育てや夫婦の絆にからむ問題に対処していくヒューマン・コメディ。ギャビー・パヒヌイやレイ・カーネ、若手実力派マカナ、ジェフ・ピーターソンらなどハワイアンのネイティブな歌詞とゆったりとした調べに乗せてジョージ・クルーニーのユーモラスな演技が、弱さを持った人の心をじっくりといやし、回復させてくれる。

オアフ島で弁護士事務所を開いているマット・キングは、人生の大転機に直面している。妻のエリザベスが友人のパワーボートに乗っているとき事故に遭い、意識不明のこん睡状態に陥っている。医師は、意識を取り戻す可能性はほとんどないだろうと診断している。

もう一つ、大問題を抱えている。先祖からの広大な土地の相続権を持っているマットだが、国からの土地管理委託権の期限が迫り、個人の所有を認めない法律に改定される。期限内に譲渡することはできるが、オアフ島に残されているハワイの自然は再開発事業で壊されることは必至。だが、マットは先祖が大切にしてきた土地と自然を守りたい思いが強く、法律と親族の思惑との間で悩まされてきた。

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カメハメハ大王の家系に生まれ、十分裕福な生活を送れるマットだが、堅実だった父親の教えを守り弁護士としての収入を基本に質素な生活を旨としてきた。妻エリザベスは、実家の両親にマットのことを「ケチ」と評してその不満をぶちまけて憂さ晴らししていた。病院の個室に簡単なデスクを置き、付き添いながら仕事を片付けるマットは、エリザベスの意識が戻れば少しは贅沢な暮らしをさせてあげようという思いに駆られている。

真面目な仕事人間で、家のことはエリザベスに任せてきたマット。だが、クリスマスごろから仲のよかったエリザベスと長女で高校生のアレックス(シャイリーン・ウッドリー)が仲たがいしたまま。二人に何があったのか、マットには分からない。10歳の次女のスコッティ(アマラ・ミラー)は、母親の事故のショックから気持ちが不安定な行動や問題を起こし始めている。難しい年頃の二人の娘に、どう接していいか戸惑うマット。とりあえず、アレックスを学校の寮から連れ帰り、スコッティの面倒を見てもらうことにする。ところが、アレックスが家に戻ると、暇をもてあましているボーイフレンドのシド(ニック・クラウス)が出入りするようになり、とうとう居ついてしまう。

家に帰っても母親エリザベスのことに冷たいそぶりのアレックス。マットはその理由を問いかけると、「ママは浮気していた」と予想もしていなかった事情を聞かされる。そのことは二人の共通の友人夫婦も知っていた。浮気相手の名前がブライアン・スピアー(マシュー・リラード)と聞いたマット。アレックスも母親とその男関係を、知らないままでいたくはない。ブライアンがカウアウ島で休暇を過ごすのを知り、マットは、家族の絆を確かめるためにもじっとしていられない。娘たちとブライアンを捜しに行くことにしたのだが、なぜかシドまでもついてきた…。

まったく知らなかった妻の浮気。それを知った娘のショックと傷いた心。なんとも重いストーリーになりそうなテーマだが、ゆるやかなハワイのムードとどことなくユーモラスなマットとシドの立居ふるまいは緊張感を柔らげ、人生のさまざまな出来事をしっかり受け止めようとしていく。先祖からのゆずりの地は、自然の風土と人間の心を養い培っているものなのだ。第84回アカデミー賞では、5部門にノミネートされ脚色賞を受賞した。  【遠山清一】

監督: アレクサンダー・ペイン 2011年/アメリカ/115分/英題:The Descendants 配給: 20世紀フォックス映画 2012年5月18日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公式サイト:http://movies.foxjapan.com/familytree/