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2011年3月11日の東日本大震災。仙台市も大きな被害に見舞われ、大勢の人たちが生活の基盤を失い不安の中にあった。そんな状況の中で、仙台市の冬の風物詩、クリスマス光のページェントの開催が待ち望まれていた。だが、準備されていた55万個のLED電球は、大津波にさらわれた。危ぶまれていた光のページェントの開催。だが、各地からの応援で電球が集まり、開催への希望と道筋が開かれ、ついに実現。クリスマスをめぐって、人々の心に届けたい温もりを感じさせてくれるドキュメンタリーだ。

仙台市出身の岩淵監督は、被災した両親を見舞うとともに、途絶されなかった仙台市の光のページェントを撮りに行く。暗闇の町が、一斉に灯された数万個のイルミネーションに輝く。歓声があがり、赤い三角帽をかぶった少女たちのブラスバンドに集まった人たちの華やいだ笑顔。
岩淵監督の祖母が通うカトリック教会でのクリスマス・イヴ礼拝。子どもたちが演じる降誕劇と神父が語るクリスマス。

友人の車に同乗してその友人宅へ。妻を愛し、子どもをかわいがり、家庭を大事にする友人。友人は「普通が楽しいよ。ほんとに」と、日々生かされていることの喜びを語る。

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被災地の重い日々にあって、いつものようにライブ活動するミュージシャン。音楽を演奏し、伝えることがミュージシャンとして普通のことだから。
夜、実家に着く。今朝、家を出て今帰宅したてきたかのように、しごく普通に振る舞う母親。がだ、仕事場は津波に流され、職を失うのか、継続して雇用されるのかまだ分からない状況で、大きな不安を持っている。ここにも、「いつもどおり」に生活したい思いが強くある。

それぞれに、願っている「いつもどおり」。クリスマスのクライマックスは、イブと当日。喜びの明るさと、世に来られ十字架へと進み行く静謐さ。それは、日常的ではない出来事だが、人々の心に覚えさせられる’記念’のページェントは毎年巡ってくる。「いつもどおり」を失いたくない人々の心に、大切なものを届けるために。 【遠山清一】

監督:岩淵弘樹 2012年/日本/80分/ 配給:東風 2012年12月8日(土)より渋谷ユーロスペースにて3週間限定クリスマスレイトショーほか全国順次公開。

公式サイト:http://chasing-santa.com