Movie「いのちがいちばん輝く日 -あるホスピス病棟の40日-」――最期の“とき”まで寄り添うケア
亡くなった老婦人の遺体の周りを近しい遺族が佇むなか、ホスピス長の細井 順医師の司式で「お別れの会」が執り行われている。細井医師は、静かに告げる。「人生の総決算を迎えられましたが、物語は決して終わりではありません。ご家族に受け継がれ、綴られていきます」。その言葉に、愛する人がこの世から旅立った悲しみに涙しつつも、どもか’最期まで’故人の思いに寄り添え、看取ることが出来たことへの和やかな表情と空気感が伝わってくる。
滋賀県近江八幡市にあるヴォーリズ記念病院のホスピス「希望館」。2006年秋に竣工したこのホスピス棟での患者と医療スタッフのケアと触れ合いが、11年12月から12年1月までの40日間をとおして描かれていく。
‘自分らしく、より良く、より自然に人生の幕を引きたい’。その当然のような願いを、末期患者の家族とともに細井医師はじめホスピス病棟のスタッフが受け止め、励ましていく。患者が人生の最期に願っていることに細井医師は真摯に耳を傾ける。そして、実現できるための最善の方法はないかと思いを巡らす。’支える’というより、患者と家族に’寄り添う’ホスピスの医師と病棟スタッフらのそうした姿勢に心動かされる。
ある日、外来通院を続けていた一人の老人が入院してきた。細井医師との面談の中で、関東に住む二男の孫に会いたいと言うが、生まれて間のない乳児ではかなわぬ夢か。しかし、細井医師は患者の家族や病棟スタッフらと相談しながら何とかできないと方法を探る。
人の臨終の瞬間は、尊厳の問題も絡まり映像の世界ではタブーとされてきた。その厳粛な瞬間に観客も’とき’と’空気’を共有させられる。その人の最後の輝きを映画をとおして見つめることが許されているで心の奥に何か深いものが残る。「これからも物語が綴られていく」ように、’魂’の永遠性を実感する瞬間に立ち会えた感動がいつまでも記憶に残る。 【遠山清一】
監督:溝渕雅幸 2012年/日本/95分/ 2013年2月2日(土)より新宿K’s cinemaにてロードショー。
公式サイト:http://inochi-hospice.com