最新作「WONDER」は、ベルリン国際映画祭短編映画コンペッション部門にノミネートされた。 ©2014 CALF
最新作「WONDER」は、ベルリン国際映画祭短編映画コンペッション部門にノミネートされた。 ©2014 CALF

物語のないアニメ。フライヤーの’噂のノ・ナラティブ・アニメーションムービー!’。短編アニメでは、30か国200以上の国際的な映画祭からのオファーを受け、上映されている水江未来監督・アニメ作品。美術大学時代から、高く評価されてきたノンナラティブ・アニメの代表作と最新作「WONDER」など短編14本を1本の長編映画に編集収録した作品。

小さな細胞たちが、音楽にのってさまざまなキャラクターに変幻自在に蠢(うごめ)く。作品によっては色分けされ立方体や長方形のピースが、細胞のように離合集散し何かを形作っては流れていく。細胞が作り出していくさまざまな抽象画が、音楽と融合していく変化をみていると心のなかにいのちの鼓動のようなものが生まれてくる。音楽に引っ張られていくのでもなく、変化し続けるアニメーションに意味を押し付けられるわけでもない。おそらく、観ている人の数だけ特有な鼓動が響きあっているのだろう。押し付けられることのない不思議な世界だ。

チャイコフスキーの「くるみ割り人形」の音楽にのって展開する細胞のダンス。最初に映し出される「FANTASTIC CELL」(2003年)は、細胞をモチーフにした水江アニメーションの処女作。水江作品のほとんどがコンピュータ・グラフィックではなく、線画1本1本手書きされたフル・アニメーション。自然でなめらかな動作に魅入られていく。

2003年作「minamo」は、水面に流したマーブリング用インクの変化を捉えた実写ベースの作品。豊かな色彩の映像美そのものがもつ'音楽'性を表出させた水江ワールドの原点とも言える作品。 ©2014 CALF
2003年作「minamo」は、水面に流したマーブリング用インクの変化を捉えた実写ベースの作品。豊かな色彩の映像美そのものがもつ’音楽’性を表出させた水江ワールドの原点ともいえる作品。 ©2014 CALF

終わりの14作目の最新作「WONDER」は、この2月7日から開催されている第64回ベルリン国際映画祭短編映画コンペテイション部門でノミネートされている。いのちを感じさせてくれる細胞の踊りに、自分なりのいのちの鼓動が共鳴しあっているようで愉しい。 【遠山清一】

監督・アニメーション:水江未来 2013年/日本/79分/アニメーション/英題:WONDER FULL!!/カラー/デジタル上映/ 配給:マコトヤ+CALF 2014年2月22日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。
公式サイト:http://wonder.calf.jp/wonderfull/
Facebook:http://www.facebook.com/wonderfull2014/

第64回ベルリン国際映画祭短編映画コンペティッション部門ノミネート作品(「WONDER」収録)。