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人間が生まれながらにもつ性質の腐敗を’原罪’と呼ぶならば、人種差別はその顕現したものといえるのではないだろうか。肌の色が違うというだけで被るいわれなき偏見と差別。ときには相手の心に増幅された恐怖感から命を奪われることもある。オスカー・グラント、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコに住んでいた22歳の黒人青年は、一人の警察官からいわれなき’偏見と恐怖感’を被り、無抵抗の状態で射殺された。実在した黒人青年の最後の一日ををとおして、ありのままの姿を見つめようとしない人間の罪深さが描かれていく。

恋人ソフィーナ(メロニー・ディアス)と保育園に通う愛娘タチアナ(アリアナ・ニール)と3人で暮らすオスカー(マイケル・B・ジョーダン)。ケンカ早く、ドラッグの売人もやっていた前科者。刑務所を出て務めていたスーパーのアルバイトをクビになった。だが、タチアナのためにもまともな生活を築きたいと心底思っている。残りのドラッグを売り払い当座の生活費にと考えたが、心に芽生えた回心は一時的な誘惑を棄てさせ立ち直らせる。

しかし、現実は厳しく生活の立て直しはまだ見えてこない。口げんかしながらも懸命に立ち直ろうとするオスカーを受け入れているソフィーナ。大晦日の夜、家族3人と身内が集まり、ささやかながら母親ワンダ(オクタビア・スペンサー)の誕生日を祝った。

ソフィーナとオスカーは、サンフランシスコの花火を見て新年のカウントダウンを楽しむことにした。タチアナをソフィーナの姉の家に預けて、電車で仲間たちとサンフランシスコへ向かったオスカー。だが、刑務所にいるときからいざこざの絶えなかった男と車中で出会いトラブルになった。停車したフルートベール駅で仲間たちと降り、トラブルを回避したのだが、通報を受けた鉄道警察官らがオスカーたちのところにやって来て。。。

気心のいい島民は、負傷している兵士にジャガイモを差し出したというのに… ©2013 OG Project, LLC. All Rights Reserved.

フルートベール駅で何が起きたのか。駅の利用者らが黒人のオスカーらにどう対応しているのか、その顛末をスマトフォーンなどで動画サイトにアップされた実際の動画も挿入されいる。立ち直ろうとするオスカーの内面に寄り添っていた思いが、’黒人”グループ”トラブルの通報’といった治安業務のカテゴリーに押し込められ、極度に緊張した警察官らの対応に怖さを覚えさせられる。

事件が起きてからオスカーのために病院で祈り続ける家族と知人たち。その人をありのままに受け入れようとする人間と、知ろうとはせず対抗意識で臨む姿の大きな違い。いわれなき’偏見と恐怖感’で対応されたの一人の黒人犠牲者とその家族。人は何らかの希望をもって生きようとする。その心を描くことで刻まれた名前。いつまでも語り継がれるべき出来事を知ってほしい。 【遠山清一】

監督:ライアン・クーグラー 2013年/アメリカ/85分/映倫:PG12/原題:Fruitvale Station 配給:クロックワークス 2014年3月21日(金・祝)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー。
公式サイト:http://fruitvale-movie.com
Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画フルートベール駅で321金祝公開/583897061699635

2013年サンダンス映画祭作品賞・観客賞受賞、第66回カンヌ国際映画祭ある視点部門フューチャーアワード賞受賞作品、第85回ナショナル・ボード・オブ・レビュー新人監督賞・助演女優賞・ブレイクスルー男優賞受賞作品、ほか多数受賞。