コルティッツ将軍とノルドリンク総領事は、夜を徹して緊迫した外交交渉を闘わせた © 2014 Film Oblige ? Gaumont ? Blueprint Film ? Arte France Cinema

ヒトラーが発したパリ壊滅作戦の命令遂行を直前にして、ドイツ軍将軍と折衝する中立国外交官。刻々と変化する軍事状況、心理戦…互いにすべての能力を駆使し夜を徹して交渉する2人。歴史的事実を一夜の出来事に凝縮した戯曲を元にした言葉のやり取りと緻密な演出は、観る者をその緊迫感に引きこみ、自分の存在をかけて守るべきものとは?と改めて深く問いかけてくる。

1944年8月25日、ナチス・ドイツ軍の本営となったパリ中心部に建つホテル’ル・ムーリス’。フランス人建築技師ジャック・ランヴァン(ジャン=マルク・ルロ)は、パリ防衛司令官のディートルヒ・フォン・コルティッツ将軍(ニエル・アレストリュプ)らに、セーヌ川にかかる33本の橋を破壊して市内の低地域を冠水させ、同時にエッフェル塔、ルーブル美術館はじめ歴史的な建造物すべてを爆破するための実行計画を説明する。コルティッツ将軍は、作戦実行をヘッゲル中尉(トマシュ・アーノルド)に命じる。

作戦会議後、コルティッツ将軍は司令官室でベルリンから電話を受けようとしたとき、部屋の明かりが消えた。明かりが戻ったとき、いつのまにか中立国スウェーデン総領事のラウル・ノルドリンク(アンドレ・デュソリエ)が立っていた。いぶかるコルティッツ将軍にノルドリンクは、この部屋はナポレオン3世が愛人との逢瀬のために誰にも見られずに外から入れる秘密の階段が造られていたことを説明する。

パリ壊滅作戦の中止を説得しに来たノルドリンクは、自由フランス軍のルクレール将軍からのコルティッツ将軍への手紙を手渡して交渉の糸口を探ろうとする。だが、コルティッツ将軍は封も切らずに手紙を破り捨ててしまう。

だが、ノルドリンクはあきらめない。コルティッツ将軍にヘッゲル中尉から1本の緊急電話が入った。ノルドリンクは、ヘッゲル中尉からか?と切り出す。なぜ、ヘッゲル中尉のことを知っているのかといぶかるコルティッツ将軍。互いに心理を読み合う交渉が繰り広げらrていく。そして、突然コルティッツ将軍は持病の喘息の発作に襲われた。ノルドリンクは、コルティッツ将軍に言われるまま指示された引き出しを開けると、薬といっしょに拳銃も入っていった。いま、コルティッツ将軍が死ねばパリ壊滅作戦を中断できるかもしれない。ノルドリンクに一瞬そんな気持ちが走る…。

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コルティッツ将軍は、戦略上これまでにも村落の破壊指揮した経験はある。だが、軍人として戦略的に意味のない作戦は蛮行に過ぎないことは存分に知っている。そのプライドに、外交官として迫っていくノルドリンク。これまでも中立国総領事としてドイツ軍と交渉し、3000人以上の政治犯釈放をまとめてきた。パリ生まれでパリに育ちパリを愛するノルドリンク。ヒトラーの命令に背けば、家族は処罰される連座制が法律化されているコルティッツ将軍の苦悩。鬼気迫る2人の交渉。

エッフェル塔やセーヌ川の多くの橋が現存している事実は、2人の決断と結果を証明している。知恵と言葉と誠意で平和的解決を導き出した外交。武力(戦争)による紛争解決は選ばないと謳う’平和憲法’をもつ国が、武力による紛争解決を選択する国に転換しつつある。外交に対する信頼と自信を築いていくことの大切さが、歴史と文化を重んじるノルドリンクの言動から伝わってくる。 【遠山清一】

監督:フォルカー・シュレンドルフ 2014年/フランス=ドイツ/83分/原題:Diplomatie 配給:東京テアトル 2015年3月7日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー。
公式サイト http://paris-eien.com
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