兵役拒否に権力の側が青ざめた　教会の土台を〝共に〟考える⑦

戦後80年特別連載 前回 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-jsqrbueml0f9aw36/ ⑦兵役拒否と弾圧 山口陽一 東京基督教大学特別教授 第一次世界大戦時、イギリスでは1万6千人が徴兵を拒否した。アメリカでは国防法において良心的兵役拒否者に対して戦闘任務を免除した。今日では徴兵制度のある国のほとんどで兵役拒否が認められている。キリスト教の非暴力に始まった良心的兵役拒否は、基本的人権としての兵役拒否になりつつある。 日本では1873年に徴兵令が公布されるが免除規程もあり徴兵忌避も頻繁だった。89年の改訂を経て1927年の兵役法で徴兵が徹底された・・・ 《応答 信仰の確信に立ち続けるために 中谷 献一（同盟基督・徳丸町キリスト教会 牧師）》 諸外国において戦中の良心的兵役拒否者たちの存在が、現在の基本的人権、特に良心の自由の理解に寄与したことを思う時、私たちもこの国で真に良心の自由が確立されるための努力を続けてきたかと問われる。 神学校の卒業論文で、教会の戦争責任を告白する書籍『深き淵より−キリスト教の戦争体験』の著者・安藤肇について研究した・・・（次ページに全文） ⑦兵役拒否と弾圧 第一次世界大戦時、イギリスでは１万６千人が徴兵を拒否した。アメリカでは国防法において良心的兵役拒否者に対して戦闘任務を免除した。今日では徴兵制度のある国のほとんどで兵役拒否が認められている。キリスト教の非暴力に始まった良心的兵役拒否は、基本的人権としての兵役拒否になりつつある。 日本では１８７３年に徴兵令が公布されるが免除規程もあり徴兵忌避も頻繁だった。89年の改訂を経て１９２７年の兵役法で徴兵が徹底された。１８８５年に来日したフレンド派（クエーカー）は兵役拒否をしなかったが、トルストイや社会主義の影響で帝国主義戦争に反対するクリスチャンがいた。 内村鑑三は、聖書から絶対非戦の立場をとったが兵役拒否は主張しない。花巻の斎藤宗次郎が内村の感化により１９０３年に兵役を拒否しようとしたとき、内村は、真理とその応用を混同せず無抵抗の精神で兵役につくことを勧めた。戦争は「多くの非戦主義者の無残なる戦死を以てのみ終に廃止する」と説いた。内村は信仰の覚悟を語るが、これは戦争加担でもあった。後の海軍中尉太田十三男は内村の弟子として葛藤を抱えながら軍人伝道に尽す。 矢部喜好（１８８４～１９３５年）は、会津中学在学中にセブンスデー・アドベンチストに入信し伝道者を志す。日露戦争に召集されたが、「殺すなかれ」の戒めを守ると宣言し、軽禁固２か月の実刑後、軍の説得を受け容れ看護兵として応召した。これは日本における最初の良心的兵役拒否であった。除隊後はアメリカに留学、同胞教会に転じ、膳所と大津で牧師となり幼児・児童伝道、農村伝道に尽力、平和の教えを説き続けた。セブンスデーでは最初の日本人牧師国谷秀が日露戦争時に兵役を拒否した。 須田清基（１８９４～１９８１年）は、群馬県に生れ、入隊に際して柏木義円から受洗、兵役を終え台湾伝道に従事するが、柏木やトルストイの感化により１９２３年に軍隊手帳を焼き捨て、陸軍大臣に38項目に理由を記した離脱届を提出した。柏木はこれを支持し非戦論の実践をめざすが、須田の届は却下されたまま終わり、彼は２年後に「我は戦ふ」という一文を著して、台湾で伝道に従事した。戦後は群馬で真イエス会の伝道をし、戦後復興の一環で考案された「上毛かるた」発案者の一人となり内村鑑三と新島襄の札を担当した。 明石順三（１８８９～１９６５年）は、彦根中学時代に受洗し日本力行会に加わり渡米、ワッチタワーに加わり帰国して灯台社を設立した。神の絶対性から帝国主義、共産主義、ナチズムを批判し、１９３３年に治安維持法違反で弾圧された。39年１月には長男の真人が入隊直後に銃を返却。信者の村本一生も兵役を拒否して陸軍刑務所に収監され、６月21日には灯台社の130人が検挙された。灯台社関係では善通寺師団で三浦忠治も兵役を拒否している。真人も村本も兵役を拒否したことで本人は安堵し、逆に軍隊の方が狼狽（ろうばい）したという。 石賀修（１９１０～１９９４年）は、福岡高校から東京帝大の西洋史学科に学び、大学院在学中に肺結核を患い帰郷、エスペラント語を習得し、34年２月に国際抵抗者インターナショナル（ＷＲＩ）に入会した。42年に岩波文庫からラーゲルレーヴ『エルサレム』第1部を翻訳出版する。43年８月１日に非戦平和主義により兵役を拒否し、拘留されて10月には東京憲兵隊本部へ送られ、12月３日に罰金50円で釈放された。筑陽女子校で教え、ハンセン病療養施設星塚敬愛園に転職し敗戦を迎えた。生涯を無教会の信徒として平和主義を貫いた。 北御門二郎（１９１３～２００４年）は、幼時にハリストス正教の洗礼を受け、旧制五高から東京帝大でトルストイに傾倒しハルピンでロシア語を学んだ。１９３８年、刑を覚悟して徴兵検査への出頭を拒否すると母は泣き父は荒れ狂う。検査に行き、故意に出頭しなかったことを告げると精神病とみなされ、兵役と無関係とされた。北御門は帝大を中退し郷里で農民となる。戦後も晴耕雨読の生活を続け、トルストイの翻訳家として生きた。 日本における良心的兵役拒否の先駆者たちは、揺れる心で「殺すなかれ」を貫こうとした。そのとき権力の側が青ざめたことが印象に残る。 信仰の確信に立ち続けるために 応答 中谷 献一 同盟基督・徳丸町キリスト教会 牧師） 諸外国において戦中の良心的兵役拒否者たちの存在が、現在の基本的人権、特に良心の自由の理解に寄与したことを思う時、私たちもこの国で真に良心の自由が確立されるための努力を続けてきたかと問われる。 神学校の卒業論文で、教会の戦争責任を告白する書籍『深き淵より−キリスト教の戦争体験』の著者・安藤肇について研究した。安藤は教会の天皇崇拝や戦争協力に聖書との矛盾を感じながらも、軍の身上調査でキリストよりも天皇が偉いと答えた。その挫折を心に刻んで牧師となった安藤は、戦後、教会が「市民的自由の担い手」となることを目指して教会形成、平和活動を行なった。 私は安藤にインタビューする機会も得た。共産主義との協力はキリスト者から批判されもしたが、その対話の中で、キリスト教信仰が永遠の真理であるという確信が深まったと語る安藤の顔は清々（すがすが）しかった。キリスト教信仰は、自己の確信に閉じこもるのではなく、その確信の故に開かれていく力をもっている。 他の思想を持つ者たちとの協同は簡単なことではない。キリスト教信仰を持つ者同士にも多様性がある。しかし、キリストが主であるという確信に立つからこそ、社会の中での孤立ではなく、共通の価値のために仕えることを選び取る者たちでありたい。 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-e9ue3rndxax1nmr7/ 【リニューアル購読キャンペーン】 現在まだ新サイトの復旧に時間がかかり、お待たせしています。紙面は無事配送しております。 以下リニューアル紙面のご案内です。 リニューアル号2025年7月1日より ■電子版 ■併読版 web 版：速報・詳報記事を随時掲載 紙版：月2回発行 紙面ビューアー：月2回 web 版：速報・詳報記事を随時掲載 ※バックナンバー閲覧可能 紙面ビューアー：月2回 900円/月(税込) ※バックナンバー閲覧可能 1,400円/月(税込) ☆年払いプラン新登場！ 10,300円/年(税込) ☆年払いプラン新登場！ ※毎月払いより約5％お得です 16,000円/年(税込) ※毎月払いより約5％お得です ■無料試読キャンペーン 新規年間購読の方には、柏木哲夫著『幸せのかたち』を贈呈。また新聞の無料試読特典（紙版1か月、紙・電子併読１か月、電子版２か月）がございます。 ■電子版購読済みの方 現在の購読プランを2ヶ月間の無料期間に自動移行させていただきます。 (無料期間：2025年7月1日～8月31日まで) 大変お手数ではございますが、 無料期間のうちに下記の新ご注文受付サイトより、 ご希望のプランの再注文手続きを頂けますようお願い申し上げます。 ※無料期間中のご注文の場合、最初の課金日は無料期間終了後の9月1日になります。 ※無料期間中のプラン変更(電子版→併読版など)は、無料期間終了後に反映されます。 ■新ご注文受付サイト（新サイト開設と同時に開設） https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/start-checkout/ リニューアル企画などのご案内は、こちら（※）から https://www.wlpm.or.jp/shinbun/

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