映画「ボストン ストロング ダメな僕だから英雄になれた」ーー爆弾テロに遭って目覚めた本当の自分
メジャーリーグのベースボールやアメリカンフットボール好きの男性は、少年時代から自分のヒーローを持ち、自分もヒーローになりたい夢を持ち続けているのかもしれない。ベースボールのボストン・レッドソックスをこよなく愛する青年が、ボストンマラソン爆破テロで重傷を負い、現場で容疑者を目撃し、容疑者特定に貢献したことから一躍ヒーローに祭り上げられていく。だが身体の痛みと環境の大変化についていけない精神的なギャップ。実話の映画化は、気楽なボーイズライフを過ごしていた青年が、爆弾テロに遭ったことから自分の弱さと強さに向き合わされていく心の軌跡を、真摯に見つめ繊細に描いていく。
【あらすじ】
アメリカ独立戦争開戦に因み「愛国者の日」(4月第3月曜日)に開催されるボストンマラソンには、一流選手から一般市民まで2万人ものランナーが参加出場する国際陸上競技連盟(IAAF)ゴールドラベルのマラソン大会。2013年4月15日、Costcoのフードコートで働くジェフ・ボーマン(ジェイク・ギレンホール)は、チャリティランナーとして出場している元カノのエリン・ハーリー(タチアナ・マスラニ―)を応援するためゴール付近でプラカードを掲げて待ち受けていた。いつも時間にルーズなジェフの言葉は当てにしていなかったが、レース開始から4時間9分過ぎ、ゴールに向かっていたエリンは応援する観客たちの中で2度の爆発を目撃する。
手製爆弾はジェフのすぐ近くで爆発した。両脚に大けがを負ったジェフは、病院に担ぎ込まれ、意識が戻ったときは両脚ともひざから下を切断されていた。ジェフは、爆発現場でバックパックを下ろした容疑者を正面から見ていた。FBIの捜査に協力し、容疑者の写真公開に大きく貢献。マスコミは大きく取り上げ、町のヒーローになったジェフ。自分が参加した大会に応援に来たジェフが重傷を負ったことを悔やむエリンは、ジェフの自宅に同居して介護とリハビリに付き添っていく。
プロスポーツの試合開始イベントにメインで招かれ、マスコミのインタビュー取材も多くなりスター扱いされていくジェフ。母親のパティ(ミランダ・リチャードソン)は、マスコミ取材やイベントのメインゲストにジェフが呼ばれることは大賛成。だがエリンは、傷口の痛みやリハビリの苦痛に耐えるジェフが、ヒーローとしてチヤホヤされる環境の変化についていけない精神面でのもろさに気づいている。パティはエリンとそりが合わず、二人の溝はしだいに大きくなっていく…。
【みどころ・エピソード】
自分の失敗で残業になりそうになっても、他人に押し付けてボストン・レッドソックスの試合に応援に出かけてしまうお気楽なジェフ。いわば努力することは好まない楽天的なお人よしのタイプの男が、エリンや事件に巻き込まれた人たちとの出会いをとおして自分のもろさや弱さをみつめ、より強くされていくストーリー展開と丁寧な描写が、いわゆるヒーロー物語とは一味違う深みのある作品です。 【遠山清一】
監督:デビッド・ゴードン・グリーン 2017年/アメリカ/120分/映倫:PG12/原題:Stronger 配給:ポニーキャニオン 2018年5月11日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
公式サイト http://bostonstrong.jp
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