映画「エンジェル、見えない恋人」ーー目には見えなくとも存在する“愛”の実体を語るメルヘン
姿が見えない特異体質で生まれた少年と盲目の少女とのファンタジーなラブストーリーだが、お互いに見えないことで“愛”の実体を確かなものにしていく物語と映像美が心に残る作品。
【あらすじ】
母親のルイーズ(エリナ・レーヴェンソン)が、息子のエンジェルに語り掛ける。「エンジェル、お前が生まれる前の話よ。パパはマジシャンだった。得意技は姿を消すイリュージョン。パパとママは愛し合っていたの」。だが、マジシャンの恋人は失踪した。心を病んだルイーズは、施設で男児エンジェルを産んだ。だが、エンジェルは誰の目にも見えない不思議な特異体質を持っていた。エンジェルの存在と挙動が分かるのはルイーズただ一人。ルイーズは、施設の中で勉強も遊びも、いつも一緒。特にエンジェルは、ルイーズが小さいころ両親に連れられて行ったという、湖のほとりにある小屋の話が大好きだ。ルイーズの深い愛情に包まれて、彼は優しい男の子に育っていった。
エンジェルは、施設の部見える屋から向かいにある館にいる一人の女児のことが気になっていた。ピアノを弾いたり、ブランコに乗っていたり、いつも一人で遊んでいる。ある日、エンジェルは私設をに抜け出して館の庭で一人でブランコに乗っているマドレーヌ(幼少期:ハンナ・ブードロー)の傍に近づく冒険を試みた。普通の人には見えないエンジェルに、マドレーヌは「ボンジュール」とあいさつする。匂いと声でエンジェルの存在を身近に感じる。孤独な二人は初めての友達になった。盲目のマドレーヌにはエンジェルの秘密を知ることもなく、かくれんぼをしたりしていつも一緒に遊ぶ日々。二人きりの小さな恋人、幸せなが過ぎていく。
10代になったエンジェルとマドレーヌ(マヤ・ドリー)。初めてのキスもマドレーヌと…。ある日、マドレーヌが目の手術をするためしばらく館を離れるという。エンジェルを見たいというマドレーヌの言葉に、エンジェルは自分の秘密を打ち明けることができないまま「待ってるよ…ずっと。毎日毎分毎秒、君を想うよ」と約束する。
数年たち、ルイーズは私設で亡くなった。そして、ある日。20代の美しい女性に成長したマドレーヌ(フルール・ジフリエ)が館に戻ってきた。手術は成功し、ひとりで旅行できるまでに視力も回復していた。エンジェル母子が暮らしていた施設を訪ね、ルイーズが他界したことを知ったマドレーヌは、ルイーズのお墓に「手紙を読んだら、姿を見せて」と置き手紙をした。マドレーヌが館に帰ったときからつかず離れず彼女を見守っていたエンジェルは、決心して「昔みたいに会いたい。目を閉じてくれる?」と返事を書いた。エンジェルの言うとおりに、目をつむり、ときには目隠しをして一緒に時を過ごすマドレーヌは、エンジェルの秘密に気づかない。身も心も燃えていく二人。やがてエンジェルは自分の秘密をマドレーヌに隠したままでいることができなくなる…。
【見どころ・エピソード】
姿が見えないエンジェルの内面から語られるロマンティックな物語。盲目の少女が、透明なエンジェルと語らい戯れる情景もメルヘンティックな映像で観る者をエンジェルの幸福感へと昇華させていく。姿が見えないエンジェルの怖れと苦悩、それを知ったマドレーヌの絶望感。目に見えないものは愛されることは不可能なのだろうか、目に見えないものを愛することはできないものだろうか。目には見えなくとも形はあり、存在する。それを確かなものにする“愛”という実体があることに希望を抱かせてくれるファンタスティックなメルヘンだ。 【遠山清一】
監督:ハリー・クレフェン 2016年/ベルギー/ 79分/映倫:PG12/原題:Mon ange 配給:アルバトロス・フィルム 2018年10月13日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野ほか全国順次公開。
公式サイト http://angel-mienai.com
Twitter https://twitter.com/angel_mienai