映画「ダンスウィズミー」ーーミュージカルに憧れていた少女時代の夢が催眠術で甦る元気回復ムービー
女性アイドルグループ「さくら学院」初期メンバーだった三吉彩花を主演に迎え、彼女の歌唱、ダンス、演技を堪能させてくれるミュージカル。準主役のやしろ優が味のある役どころで三吉と息の合った歌とパフォーマンスも心地よく、ミュージカルの大ベテラン宝田明がしっかり脇を支えている。とにかく映画を愉しみたい人には、暑気払いに笑って、ウキウキして、スッキリするMovie。
【あらすじ】
めざしていた一流企業・四つ葉ホールディングスに勤める勝ち組OLの鈴木静香(三吉彩花)。同僚たちの憧れの先輩・村上涼介(三浦貴大)のプレゼン企画の資料まとめを金曜日夕方に頼まれ、村上に近づくチャンスとばかり休日返上で在宅仕事。だが、間の悪いことに姉が小学生の娘を連れて自宅マンションに押しかけてきて、娘を預かってほしいと無理やり娘を置いて行った。しかも「場合によっては一泊するかも…」と言い残して姉は出掛けてしまう。
日曜日にプレゼン資料を仕上げて村上に送信した静香は、姪を連れて拾った入場無料券で遊園地へ。姪は学校のミュージカル劇に出演することが決まったが、歌も踊りもまったく自信がない。同じ小学校だった静香もミュージカル劇で失敗したことがトラウマになりミュージカルを嫌うようになっていた。園内イベントの催眠術ルームの看板を見つけて中に入る。かつてはテレビ番組を持つほど人気者があった催眠術師のマーチン上田(宝田明)だが、いまは催眠術にかかった客を演じるサクラに斎藤千絵(やしろ優)を雇っている落ちぶれよう。姪が上田にリクエストした催眠術は、ミュージカルスターのように歌って踊れること。上田は「明日から音楽が聞こえるとミュージカルスターのような気分になって歌って踊れるようになる」と催眠術を掛けるが、掛かってしまったのは姪ではなく後方に座っていた静香の方だった。
翌朝、出勤途中から音楽が聞こえると身体が反応して、勝手に踊りだしてしまう静香。会社でのプレゼンの時間でも、村上がプレゼンのBGMに用意した“Happy Valley”が流れると会議室からオフィルへと踊り歩く。ミュージカルスター気分で踊っていた静香だが、音楽が終わり我に返るとオフィスのデスクの上は物が散乱し、いっしょに踊っていたはずの同僚たちは唖然としている。夢と現実はかけ離れている状況。
会社を出て専門医に駆け込み精密検査を受けた静香。診断は、催眠術が深くかかっていて、掛けた催眠術師でないと解放できないという。遊園地の催眠術ルームに行くと上田は夜逃げした後で、玄関先にはマチ金融の怪しげな男たち3人が、管理人が来るのを待っているところだった。そこに千絵がアルバイト代を受け取りにやって来た。静香と千絵は、探偵事務所の看板を見て飛び込み所長の渡辺義雄(ムロツヨシ)に捜索を依頼する。2週間後、渡辺から上田発見の連絡が入った。静香は会社に休暇を取り千絵の車で名古屋へ。上田追跡の旅が始まる…。
【見どころ・エピソード】
静香は作中のセリフで、ミュージカルが好きになれない理由の一つとして「そもそもミュージカルっておかしくない?さっきまで普通に話してた人が、急に歌い出したりしてさ」と姪っ子にぶち上げる。その違和感を矢口監督は、催眠術にかかり音楽を聴くと勝手に歌って踊りだす情況をキーにして、どんなジャンルの楽曲でもストーリー展開に溶け込ませてしまう。楽曲はオリジナルではなくすべてカヴァー曲。催眠術にかかっていることを知る出勤シーンではスペクトラムの「ACT-SHOW」、村上と食事するレストランでは山本リンダの「狙いうち」、食事する聴いた瞬間に身体が勝手に反応して踊りだす。上田を追って新潟で出会ったシンガーソングライターの山本洋子(CHAY)と3人で日銭を稼ぐ路上ライブではキャンディーズの「年下の男の」、マーチン上田の催眠術ショーでは山下久美子の「Tonight 星の降る夜に」などかなり幅広い年齢層に親しまれている楽曲をカヴァーしている。
マーチン上田を追うロードムービーで、いろいろな出会いとドタバタが起こるコメディ。だが、勝ち組OLの静香には背伸びしている心の疲れもあるし、何をやっても売れないできた斎藤千絵だが果たしたい夢をもって地道に努力している姿が見られる。落ち込んでいたり、元気が出ない情況にあっても、どこか励ましを感じさせてくれる味付けが効いている和製ミュージカル。 【遠山清一】
監督・原作・脚本:矢口史靖 2019年/日本/103分/ 配給:ワーナー・ブラザース映画 2019年8月16日(金)より全国ロードショー。
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/dancewithme/
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*AWARD*
2019年:第8回トロント日本映画祭観客賞受賞