映画「三姉妹」――「お父さん、謝ってよ…ジンソプに! 私たちに!…」
ソウルで暮らす三人の姉妹の物語。海辺の町にある実家には、両親と末の弟が暮らしている。ソウルに出てきた三姉妹、傍目には問題なく暮らしているように見えるが、それぞれに問題を抱えながら付かず離れず適当な距離感を保っている。
気弱で小心な長女、教会も家庭も完璧な次女
自暴自棄で酒のみの三女、仮面の奥に隠した想い
長女ヒスクは、別れた夫の借金を返しながら小さな花屋を営んでいる。反抗期の一人娘ボミは、離婚しているのに借金の返金をせびられても大丈夫なふりをしているヒスクを疎ましく思っている。だが、気弱なヒスクの体に異変が起きていた。
次女ミヨンは、大学を卒業しキャリアウーマンだった才女。夫トンウクは大学教授で一男一女に恵まれ、夫婦ともに教会では執事の妻で聖歌隊リーダーとして尊敬されている。だが、ふとしたことから夫が聖歌隊の若手ヒョジョンと浮気してことに気づく。ミヨンが描いていた完璧な暮らしは崩れ始めている。
三女ミオクは、劇作家がだ最悪なスランプに陥っている。夫サンジュンの後妻になったが、中学生の息子ソンウンは家事もせずに酒浸りのミオクになつかない。泥酔すると「私はゴミよ」などミヨンに電話して愚痴る。
三姉妹は久しぶりに帰省し、ミヨンが予約したホテルで父の誕生祝いを開く。末弟ジンソプは引きこもり生活が長く、ミオクが何度呼び出しても実家の部屋から出ようとしない。そのジンソプが、突然入ってきて挨拶の口上を述べている父親に侮辱的な行為をして地元の牧師はじめ一同が騒然とするなかで、ミヨンは心の奥に閉じ込めていた出来事を思い起こす…。
家族間でも真摯な謝罪が
なされなければいけない
イ・スンウォン監督は、香港での映画祭で「私がこの映画で言いたかったのは、真摯な謝罪が家族の間でもなされなければいけないということです。たとえ真摯な謝罪を受けられなかったとしても、当事者である父親に、謝罪しろと堂々ということが大切だと思います」と質問者に答えている。クリスチャンの監督は、罪の赦しを求める教会を舞台にして、信頼し助け合うべき家族の絆に深い傷、閉じ込めていた罪に真摯に向き合うという重いテーマを、映画というエンターテイメントで軽妙な筆致で描き込んでいる。三姉妹が思い出したくない浜辺で日差しを浴びて心を寄せ合うシークエンスが希望をくれる。【遠山清一】
監督・脚本:イ・スンウォン 2020年/115分/韓国/韓国語/カラー[一部モノクロ]/原題:세 자매、英題:Three Sisters 配給:ザジフィルムズ 2022年6月17日[金]よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。
公式Webサイト http://www.zaziefilms.com/threesisters/
公式Twitter https://twitter.com/threesistersjp
*AWARDS*
2021年:第30回釜日映画賞助演女優賞(キム・ソニョン)受賞。第41回韓国映画評論家協会賞最優秀主演女優賞(ムン・ソリ)・最優秀助演女優賞受賞。 第22回 釜山映画評論家協会賞 女子演技賞受賞。第57回百想芸術大賞最優秀主演女優賞受賞。第42回青龍映画祭最優秀主演女優賞・最優秀助演女優賞受賞。第41回 黄金撮影賞授賞式 審査委員特別賞(ムン・ソリ)。第8回 韓国映画制作家協会賞脚本賞(イ・スンウォン)・女優助演賞。第16回大阪アジアン映画祭特別注視部門出品ほか。