介護通して神の愛伝える人材育成 「シャローム」がインド・ミゾラム州に日本語学校開校
インドから「ゴスペルtoジャパン」
大阪府堺市で「やすらぎの介護シャローム」を運営するシャロームグループが、北東インドの、クリスチャン人口が99%を占めるミゾラム州に、職業訓練型日本語学校を開校した。10月4日に入学式が行われ、28人の若者が希望を胸に式に臨んだ。全員クリスチャンの若者たち。志望動機に「介護を通して神の愛を伝えたい」と書いた人もいた。今後学びを終えた卒業生は、シャロームのスタッフとして、また他のクリスチャン企業も視野に入れた働き手として、身に付けた日本語と介護技術と宣教の情熱を携えて日本に向かう。来日は来春の予定だ。シャロームでは、ビジョンに賛同し、ぜひミゾラムの若者と共に働きたいと願うクリスチャン企業を募集している。
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日本とミゾラム州の架け橋となる人材育成プロジェクトの名前は「ゴスペル to ジャパン」。中心となって進めているのは、シャロームグループのエクレシア株式会社(俣木泰和代表取締役)だ。介護・看護に特化した人材派遣、人材紹介サービスを行っている。介護業界の慢性的な人手不足の解消と、37%というミゾラム州の就職率改善に一役買えればと願って、プロジェクトに着手した。
シャロームグループの母体、シャローム株式会社は25年前に「介護を通して福音を伝えよう」との祈りをもってスタートした会社だ。現在堺市に6施設を擁し、来年に向けて2施設の開設を準備している。事業は年々拡大しても、設立時のビジョンは寸分もブレたことがない。
常に「ピカピカ」のクリスチャン企業であり続けてきたシャロームに、チャプレンの寳生(たからぎ)大輔牧師は「宣教の働きを企業としてやっていることはすごいこと。堺から世界へ介護の仕事を広げようとしているスケールの大きさにも驚きます」。
教会が社会を支えるコミュニティー
エクレシアの海外事業部顧問を務める加藤征男さんは、開校に向けて「宣教師ではない若者たちが、介護を通じて、福音を受肉させるために日本に来る」というビジョンを抱いた。ミゾラム州の人々の暮らしには、福音が生活に根付いている。日本人の多くが抱くインドのイメージとは違い、カースト制はなく、教会が社会を支えるクリスチャンコミュニティーが形成されていた。
「ここは福音に生きている人が多い」
現地の人々と交流を重ねる中で、加藤さんはそう実感した。犯罪率は国内で最も低く、識字率は91・3%、英語が公用語の一つだ。学歴にかかわらず若者の知的能力が高いのは、教会学校の教育のたまものだ。加藤さんらスタッフは、訪問した教会学校で「AI時代のキャリア形成」というテーマの授業が行われているのを見て驚いた。
「経済だけが社会を支えるわけではないのだと気付かされました。教会の様々な奉仕活動を通して、信徒が日々能力を磨いていることを知りました」
ここの若者たちに、ぜひ働いてほしい。そう願って、現地のインフルエンサーであるアンジェリーナさんの助けを借りて、テレビCMで入学者を募ると、180人もの応募があった。第1期生28人を選考、開校にこぎ着けた。校歌は『もちいてください』という歌。「誰を遣わそう 誰がわたしのためにゆくのだろう」という神の問いかけに「あなたの愛と力によって 私をもちいてください」と応答する歌詞に、未知の国日本で働こうとしている若者へのエールを込める。
シャイで優しく道徳心に富むお国柄
ミゾラムの人は風貌も性格も日本人に似ているという。顔立ちはモンゴル系、シャイで優しく、高い倫理観を持つ。交通ルールは守るし、日本と同じような野菜の無人販売所が成り立つほど道徳心に富んでいる。ただ、平均給与は十分の一以下。地域で立派な教会を維持しながら、住まいは貧しいままだ。
「日本にあってミゾラムにないものは、キャリアチャンスと経済力と健康寿命。ミゾラムにあって日本にないものは、キリストの愛に基づく地域コミュニティー」だと、同プロジェクトは分析している。
「だから、お互いに欠けているものを補い合えればと願っています」と、加藤さん。教会を中心に、強い絆(きずな)で助け合って生きているミゾラムの人々は、とても豊かだと感じた。日本の職場や教会や地域に、ミゾラムの若者がその温かさを届けてくれれば、福音の受肉は少しずつでも実現に向かうのではないか。俣木社長は「彼らが日本に福音の種をまいてくれる」と、期待する。ぜひ彼らに来てもらいたいと願うクリスチャン企業を待っている。
・エクレシア株式会社=〒590- 0048大阪府堺市堺区一条通3番24号 ℡072・233・3345、080・4797・2852、mail:ma.katou@ecclesia.co.jp
(2024年10月20日号 08面掲載記事)