
(1面から続く)「能登半島地震支援のための代表者の集い」(キリスト全国災害ネット主催)が5月23日、支援拠点でもある聖書教会連盟・内灘聖書教会(石川県河北郡内灘町)で開かれ、全国から40団体、70人が参加。「能登を知り、祈り、今後の支援について考える時」と題して、報告、懇談、祈りの時を持った。
翌日24日は、希望者が被災地の現場を視察。午前8時に内灘聖書教会に集合。「能登地震キリスト災害支援会(能登ヘルプ)のワークリーダー、ボランティアと一緒にデボーションの時を持ち、大嶋重徳氏(鳩ヶ谷福音自由教会牧師)が奨励した。その後、車8台に分乗し、能登半島の被災地へ向かった。

最初に、羽咋郡志賀町の富来病院を訪問。ここでは、炊き出しが行われるが、病院のロビーでは金沢グレイスチャペル(辻本眞悟牧師)によるコーヒーサービスが始まっていた。コーヒーは辻本氏自ら焙煎(ばいせん)した本格的なコーヒーだ。
富来病院での炊き出しは、辻本氏の娘婿が医者であることがきっかけで始まった。このつながりを通し、他の病院を含む約200人ものエッセンシャルワーカーへの支援が展開されている。「近くでお弁当を買えない、お店もない中、温かい食事やコーヒーを出させていただき、大変喜ばれている」と、炊き出しに協力する救世軍の吉田有氏から説明があった。

輪島市に入ると、瓦屋根が崩れ落ち、1階が押しつぶされ、大きく傾いた家々が目に飛び込む。最初に、被災した輪島塗り工房を訪問。能登ヘルプの依頼を受け、広島の工務店から派遣された大工(重機隊)が、輪島塗りの漆器や、貴重な筆や刷毛などの道具を取り出した現場だ。その救出された品々の価値は、1億円を超える。
この工房の漆芸作家は箱瀬淳一さん。10人の塗師(ぬし)を抱えており、輪島塗りの世界では知られた人だ。荒川康司氏(聖書教会連盟・輪島聖書教会牧師)が主宰する英会話に参加していたつながりで、荒川氏から工房内の貴重品を取り出せないか、依頼が来た。「公費では、倒れた家から貴重品を取り出すことはしてくれない。放っておいたら1億円分の貴重品が押しつぶされてしまう。でも、重機隊なら可能とのことだったので、このプロジェクトがスタートした」と全キ災代表の北野献慈氏は言う。

作業は3月上旬から始まった。「私たちにはその価値が全く分からないような、貴重な筆や刷毛も取り出せた。工房の中のものを全部取り出せたので、箱瀬さんも大感激だった。この作業を他の工房の方々が見に来られていたこともあり、案件が増えていった」
次に、輪島塗漆器商工業協同組合代表者の工房を訪問。9年前のNHK朝の連続テレビ小説「まれ」のロケ地にもなった場所だ。すでに貴重品は取り出された後で、重機隊のクレーンが倒壊した土壁から出た廃材などを片付ける作業を行っていた。「300坪ほどの土地に蔵が建っていた。700年続く蔵だった。崩れた土壁の土は大変貴重で、その土は別に取っておいて再利用しようとしている」

この案件は、荒川氏と親しい地元建設業者が、たまたま重機隊の貴重品取り出し作業を見学し、「組合代表の工房もぜひやってほしい」と依頼されたことから始まった。この重機隊による貴重品取り出し作業は、他の輪島塗り工房でも6月末まで行われる。
続いて、被災教会である輪島聖書教会(輪島市河井町)を訪問。荒川氏が、発災当時の様子を語った。「私は牧師館2階のテレビでサッカー観戦をし、妻と娘と孫はホテルの温泉に行っていた。午後4時10分頃に最初の揺れが来た。17年前の地震の時、コンピューターが全部壊れたので、1階に降りてコンピューターとモニター、プリンターを押さえた。そこで二度目の揺れが来て、私もソファーも机も本箱も全部ジャンプした。初めての経験だった。妻たちは輪島中学校に避難。道の途中で、道路の亀裂やビルの倒壊を見て、妻は『夫は死んだ』と思った。妻が私を捜しに家に戻ると、大丈夫だと分かってへなへなと座り込み、抱き合った。朝市通りはまだ燃えていたが、暗闇の中、毛布と羽毛布団を担いで避難所に持っていった」

発災から1、2か月は「ボランティアは何度もお断りした」とも明かした。まだ上下水道が復旧せず、ボランティアを受け入れる体制が整っていなかったからだ。だが3月末には復旧。「これからはいろんな形で整っていく。ボランティアの働きは大きい。お金に換えられないモチベーションを与えてくれる。初期の段階で入れなかった分、どんどん来てほしい」と語った。

視察中、輪島市内でハプニングも起こった。市内は地震の影響で道路状況が悪く、1台の車がパンクした。たまたま約300mの場所に自動車修理の店があり、自動車整備士による応急処置で再び車が動き出した。
全壊した日基教団・輪島教会の会堂も見学。掲示板の礼拝の説教題が2023年12月31日の時のままだった。火事で全焼し、焼け跡が延々と続く朝市通りでは、参加者全員が丸くなり、代表して堀川寛氏(アッセンブリー・三滝グリーンチャペル牧師)が、「主のしもべたちの奉仕を通し、この地に平安が与えられるように」と祈りを捧げた。【中田 朗】


