コロナ禍のただ中で粘り強く思索された〝災禍における教会の姿〟、そして〝改革され続ける教会の神学〟に関する珠玉の講演・対談集の誕生を、心から喜んでいます。

本書は、2021年6月から23年2月にかけて、カルヴァン・改革派神学研究所が主催した公開リレー講座「災禍において改革された教会」(全11回)の記録です。パンデミックで世界中が混迷する中、同研究所は、この災禍を生き抜くための羅針盤を「教会の歴史と神学」に求めました。

その皮切りは、あのペストが大流行した時代と並んで展開した16世紀スイス宗教改革に始まります。改革者たち、そして教会はこの災禍にどう向き合ったのか。

興味深いのは、本書で用いられる「災禍」という言葉の射程が、「自然災害や感染症」を超えて、それに伴う「人災」や「剥(む)き出しになる社会構造」、さらには「戦時の暴力・破壊」をも捉えていることです。それ故、本書に収録された講演内容も、関東大震災や東日本大震災、亡命や人権・憲法の問題、バルメン宣言や中国の宗教事情等、実に多岐にわたっています。

しかも、こうした豊かな広がりと共に、各々のテーマの奥行きに至ってこそ響く神の言葉と、それによって形成される教会の姿が折り重なって露わにされるところが本書の醍醐味(だいごみ)と言えるでしょう。

この点で、「たえず神の御言葉によって改革される」教会は、降りかかる災禍にどう対応するか? という危機に迫られるまさにそこで、真に克服され、なお救われねばならない危機が何であるかを見抜く眼差しが求められるでしょう。

災禍という現実の危機以上に、災禍によって決定的に顕在化される人間の罪と飢え渇きという根本危機に対して、福音に裏打ちされた「告白の事態」(8頁)に立つことができるか。コロナ禍が収束しても死臭が方方に漂う今こそ本書が広く読まれ、時代に生き残るための教会ではなく、時代を新しく切り開くための教会の歩みが鼓舞されることを願ってやみません。(評・朴大信=日本基督教団松本東教会牧師)

 

『災禍において改革された教会 その祈りと告白、実践の歴史と現在』
カルヴァン・改革派神学研究所編、教文館、3,960円税込、A5判