映画「教皇選挙」――これは神の御心か 権謀術数の結実か

13世紀中期に確立されたといわれるローマ・カトリック教会の教皇を選出する選挙(コンクラーベ)。およそ750年間ベールに包まれてきた教皇選挙を舞台に展開されるローバート・ハリスの同名小説を映画化したスサスペンスに満ちた教会政治ドラマ。
逝去した教皇の意志で公表
されなかった枢機卿の登場
物語は、ローマ教皇がバチカンの「聖マルタの家」内の居室で心臓発作を起こし突然死したことから始まる。教皇の篤い信頼を受けていたローレンス首席枢機卿が駆け付けた時には逝去していた。「神の代理人」とされる教皇の座(使徒座)空位が生じてから20日を過ぎないうちに次の教皇を80歳未満の枢機卿の中から選挙で選出する規定がある。ローレンス枢機卿はこの教皇選挙を執り仕切ることになった。
全世界の教区から100人を超す枢機卿が、宿泊施設でもある「聖マルタの家」に集まる。世俗の権力、マスコミの影響、テロ攻撃などから防御するため戒厳令が敷かれ、教皇選挙中は外部と接触できないよう隔離状態になる。選挙開始が迫るころ、次期教皇候補者でもある選挙人リストにないアフガニスタンのカブール教区からベニテス枢機卿が到着した。前教皇が生前、秘密裏に任命した枢機卿の出現に驚くローレンスだが、教皇選挙への出席を認めた。
教皇選挙の幕が開くと、有力候補と向くされていた4人が投票を獲得していく。リベラル派の教皇が数代続いていることに反発する伝統主義の保守派テデスコ枢機卿と穏健保守派のトランブレ枢機卿に対し、リベラル派のベリーニ枢機卿とローレンス枢機卿。だが最初の投票で獲得票1位はアフリカ人のアデイエミ枢機卿だったが当選数には至らなかった。そして保守派、リベラル派の票読みと対策、また候補者のスキャンダルが暴かれたり疑念をささやく噂が噴出する。公正な選挙管理を全うしたいローレンスは、苦悩とともに自らの信仰にも悩みを抱く状況が次々に起こる…。

人間のエゴが渦巻くなかで
「信仰とは」の問い掛けか
神の御心を祈り求める言葉を唱える教皇選挙で、人間のエゴや権力への執着に人間の弱さを露呈する展開。信仰者に「信仰とは何か」との問いかけているようで動揺させられる。そして予想を超える結末は、現代への神の御心の現れとして作品が提示するクリスチャンへの本質的な問いなのか。真摯な問い掛けとして受け止めるべき作品といえる。【遠山清一】
監督:エドワード・ベルガー 2024年/120分/アメリカ=イギリス/英語・ラテン語・イタリア語/映倫:G/原題:CONCLAVE 配給:キノフィルムズ 2025年3月20日[木・祝]よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー。
公式サイト https://cclv-movie.jp
X/twitter https://x.com/CCLV_movie
*AWARD*
2025年:第82回ゴールデングローブ賞脚本賞(ピーター・ストローハン)受賞ほか作品賞(ドラマ部門)・主演男優賞(ドラマ部門:レイフ・ファインズ)・助演女優賞(イザベラ・ロッセリーニ)・監督賞(エドワード・ベルガー)・作曲賞(フォルカー・ベルテルマン)ノミネート。第97回アカデミー賞脚色賞(ピーター・ストローハン)受賞、作品賞・主演男優賞・助演女優賞・美術賞・衣装デザイン賞・編集賞・作曲賞ノミネート。第78回英国アカデミー賞12部門ノミネート。 2024年:ノースカロライナ映画批評家協会賞作品賞・主演男優賞・助演女優賞・アンサンブル演技賞・ブレイクスルー演技賞・脚色賞・編集賞・衣装デザイン賞・作曲賞ノミネート。ほか多数。
*2025年3月3日 第97回アカデミー賞脚色賞(ピーター・ストローハン)受賞。