【PR】東京基督教大学 学長に聞く TCUの務めと未来
昨年8月、東京基督教大学(TCU)の学長に、卒業生としては初めて篠原基章教授が就任。TCUがなすべきこと、めざすこと、教会と社会に仕えるため負うべき責任は何か。学長に聞いた。
隔ての壁を越え 教会と社会に仕える
神学校でもあり大学でもある「神学大学」であり続ける理由は、なんですか?
神学大学とは、教会の使命に仕えると共に、教会が置かれている社会に仕えていくための学び舎だといえます。神学校プラスアルファともいえます。神学校の目的は牧師養成ですが、神学大学は牧師養成をしながら信徒のための神学教育も同じように重視していきます。もちろん、牧師養成に対して本気で取り組んでいます。
昨年のローザンヌ世界宣教会議で信徒は99%で、教職者が1%というデータが示されました。この99%の信徒がキリストの弟子として、それぞれの働きを通してキリストを証しすることがどれほど重要であるかと問われました。ここに、信徒が神学を学ぶ意味があります。
25年度から名称変更する「神学・国際教養学科」では二つのW、Word(聖書)とWorld(世界)を知ることをめざします。神学、国際、教養の分野がクロスする学びを提供していきます。「Stand in the Gap 破れ口にキリストの平和を」。この理念をより一層教育に落とし込んでいき、傷んだ世界にさまざまな人が送り出されていくことが神学大学であるTCUの使命だと思っています。
学長が学生時代のTCUと今のTCUで、変わったこと、変わっていないことはなんですか?
まず変わっていないことは、「献身の思い」、「宣教への情熱」です。牧師になるということに限定された献身ではなく、職業に関係なく、みんなが献身者であるということは、開学から現在に至るまで変わっていません。そして、献身者が整えられて教会と社会へと遣わされていくということもずっと続いています。
また、キリスト教リベラルアーツ教育も変わらないことの一つです。その人の思想を形作り、物事を判断する力を養い、クリスチャンが人生を歩んでいくための基礎を築く学びです。
変わった部分は、グローバルな共同体になったということです。23年前に「ACTS-ES」として始まった、全ての授業を英語で行い、学位を提供する英語トラックが根付いてきて、4分の1が留学生という環境になりました。TCUがグローバルな共同体をつくっているのは、時代の流れを追ったのではなく、福音が隔ての壁を越えていくものだから、教会がそういう存在だからです。グローバルは日本の弱点でもあります。言語の壁だけではなく共生するということが苦手です。TCUは先取りしています。国や文化を超えてともに生活しています。
日本で最小規模の大学として、TCUの魅力はどこにありますか?
TCUの大きな魅力の一つは、普遍的な学びを提供していることです。神の存在、人はなぜ生きるのか、なぜ世界に痛みがあるのか。そういった課題にキリスト教世界観で向き合うことができる場所であるということが独自性であり魅力です。
もう一つは、寮生活を中心とした共同体です。安心して悩み考えることができる共同体があるということ。TCUの寮生活はその人の一生に大きな影響を与える素晴らしい経験となっています。
そして、TCUには自由さがあります。キリスト者の自由は、信仰者として喜んで人に仕えること、神の心を自分のものとすることです。福音によって学生たちは、自ら進んで人に仕えるように変えられていきます。
TCUは、この世の価値観に左右されない教育機関です。そこに魅力を感じ、成長できる自分を描くことができるから、今なお入学者が起こされているのだと思います。
卒業生たちはどのように教会と社会に影響を与えてきましたか?
教会に対しては大きな貢献をしてきたのではないかと思います。卒業生が牧師となってさまざまな教団教派に広く遣わされ、中堅となり、リーダーシップを担っている牧師もいます。学生時代のネットワークがあるので、宣教協力が自然にできます。TCUのネットワークが日本宣教に与えている影響は決して小さくないと思っています。
また、社会に対しては、これまで多様な進路に卒業生を送り出してきました。企業、福祉施設、教育機関、出版、国際NGO、公務員、クリエイティブな分野、宣教団体などなど。また、教会が社会的な痛みに応える働きを先駆的に担っている卒業生たちもいます。特に福祉や教育など直接的に人に仕える仕事に就く人が多い傾向があります。目の前の人に仕えることが世界を変えることになる、そのように神様が一人ひとりを用いられることを願っています。
YouTubeチャンネル「あのTCU卒業生はいま?」もぜひご覧ください。
今後の展望をお聞かせください。
TCUがめざしていることは、キリストの働き人の育成とともに、次の世代の働き人へとバトンを渡すということです。現在学んでいる学生も、その次の世代へ宣教のバトンを託すことを意識してほしいと願っています。一人ひとりがバトンの受け取り手であり、渡し手です。
また、日本社会の急激な変化は、地域に外国の方がいるのが当たり前になっていることです。そのような中でグローバルな共同体をすでにもっているということは大きな強みです。ぜひ在日外国人の子弟の方に入学してほしいと思います。その結果、これまでの35年間で超教派による宣教協力が進んだように、やがては在日外国人教会と日本人教会との宣教協力につながり、日本社会に大きなインパクトを与えることになります。
TCUで学んだ人たちが、「Stand in the Gap 破れ口にキリストの平和を」を実践し、「キリストがすべて」というキリスト教世界観が地域社会であらわされていくことをめざして大学改革を進めていきたいと願っています。
篠原 基章(しのはら もとあき)
東京基督教大学神学部国際キリスト教学科卒業。共立基督教研究所共立研修センター、米国・カルヴィン神学校修士課程組織神学専攻(Th.M.)、トリニティー神学大学院博士課程宣教学専攻(Ph.D.)を修了。
著作に、「宣教と教会―20世紀の宣教思想史を踏まえて―」(『福音と世界』12月号、2015年)、「宣教の神学から考える神学教育―序論的考察―」(『福音主義神学』第50号、2019年)など。ティモシー・ケラー『センターチャーチ』(いのちのことば社、2022年)監訳。
(企画・制作:クリスチャン新聞)
(2025年03月09日号 06面掲載記事)