5月8日にローマ・カトリック教会の新教皇に選出されたレオ14世に、初の米国出身の教皇として注目が集まる。一方、本紙提携の米福音派誌クリスチャニティ・トゥデイは、レオ14世の教皇選出は「キリスト教がグローバルサウス(南半球)へ向かっていることを反映している」と分析する記事を掲載した。翻訳して掲載する。


5月8日、バチカン市国のサン・ピエトロ広場で演説する、新教皇レオ14世。Vatican Media via Vatican Pool / Getty Images

 

ペルーの市民権を持つシカゴ出身の教皇

シカゴ郊外の神学校ノーザン・セミナリーの教授によれば、福音派の教授たちは、レオ14世をシカゴ出身者と主張して興奮したという。米国のラテン系福音派は、レオ14世が最初の教皇演説の一部をスペイン語で行ったことを喜んでいる、とクリスチャニティトゥデイ紙に語った。フィラデルフィアでは、福音派のリーダーであるシェーン・クレイボーン氏が、教皇はビラノバ大学の出身であり、したがってフィラデルフィアのルーツも持つ、と指摘した。ペルーでは、大統領がレオ14世を自国民の一人として祝った。
そして南北アメリカの福音派は、地域的な誇りをもって、新しい教皇に好奇心を抱いていた。
多くの福音派の信者は、彼を自分たちの教会の指導者だと主張してはいないものの、ローマカトリック教会の指導者が宗教対話、世界政治、そしてキリスト教の教えに対する世界の理解にどのような影響を与えるのかに注目している。

以前はロバート・プレヴォストとして知られていた69歳のレオはシカゴ生まれだが、成人後はほとんどをアメリカ国外で聖アウグスチノ会の修道士として過ごしてきた。ペルーで宣教師を務めた後、バチカンで重要な役職に昇進した。
ジェームズ・マディソン大学の宗教史家で、ラテンアメリカの福音主義に関する研究を専門とするデビッド・カークパトリック氏によれば、多くの人々はレオを米国出身者初の教皇として祝福しているが、彼のラテンアメリカでの経験を強調する方が理にかなっているだろう、と言う。
「プレヴォストは米国にルーツを持つが、グローバル・サウス(南半球)出身の教皇がフランシスコから継続している、という見方もできる。米国や、権力者を中心に据えた教皇庁と距離を置き、抑圧され疎外されている世界の人々を重視するフランシスコ教皇の姿勢を、レオ14世は引き継ぐだろうと期待している」とカークパトリック氏は語った。

木曜日、教皇レオ14世選出のニュースが世界中に広まり、彼の人生とミニストリーについて知られるにつれ、多くの福音主義者たちは勇気づけられた。
「ラテンアメリカのキリスト教の現実と移民の現実に精通している教皇がいることを高く評価します」と、米国を拠点とする全米ラテンアメリカ福音連合代表のガブリエル・サルゲーロ氏は語った。「彼は移民、家族、貧困者の支援など、私たち米国福音派コミュニティーの共通基盤となっているすべてのことを公言しています」
サルゲーロ氏は、「レオ14世という名前は、産業革命後のワーキングプアの擁護で知られるレオ13世に倣うことを示している」と付け加えた。レオ13世はカトリック大学アメリカ校を創立した。
「我々は非常に興味深い時代に生きている。グローバルな相互関係を理解する宗教指導者が必要なのです」とサルゲーロは続けた。

4月21日に死去したフランシスコは、1000年以上ぶりの非ヨーロッパ系教皇だった。フランシスコは、聖アウグスチノ会の修道士であるプレヴォストを2023年の司教任命の顧問に選んでいた。
「ペルーのような辺境も辺境の教会出身の司教をバチカンの中心に据えるという、フランシスコ教皇が行ったことに沿った人事だ」と、ペルー・リマのパシフィコ大学の教授で歴史学者のフアン・フォンセカ氏は言う。
プレヴォストがバチカンに昇格する以前は、「彼はカトリック教会の上層部に属していなかった」とフォンセカ氏は言う。「リマやアレキパのような一流の司教座に就くのは、たいていエリート階級のペルー人です」

プレヴォストが帰化したペルーでも、彼は縁の下で働いていた。
1985年に初めてペルーに到着したプレヴォストは、エクアドル国境に近い人口4万人強の砂漠の町チュルカナスで短期間奉仕した。1986年、ローマの教皇庁立聖トマス・アクィナス大学で博士論文を完成させるためにペルーを離れた。1988年から1999年の間、ペルーのトルヒーヨ北部教区で様々な役職を歴任。1999年に生まれ故郷のシカゴに戻り、2014年まで南米に戻ることはなかった。
同年、ペルー北部にある60万人の海岸都市チクラヨ教区の使徒的管理者に任命され、2015年、教皇フランシスコによって同教区の司教に任命された。サン・ピエトロ広場に集まった群衆を前にした教皇就任演説で、レオはスペイン語で「愛するチクラヨ教区」に挨拶を送った。
ペルーの「平和と希望の福音協会」の副会長であるロランド・ペレス・ベラ氏は、「彼は、排除された人々との深いつながりに根ざした司牧的アプローチを持っていました」と語った。「カトリックの司祭であれ福音派の牧師であれ、周縁部で奉仕する指導者たちは、不正を直接目にし、人々の痛みを目の当たりにしているため、不正を糾弾しやすいのです」。

プレヴォストは、カトリックの社会教義に基づく人権擁護のためのペルー司教団の組織である「社会司教委員会」のメンバーであった。
1992年に当選し、翌年自らクーデターを起こし、2000年まで権力の座に居座ったペルーの指導者アルベルト・フジモリの恩赦に反対し、彼は人権擁護のために批判的かつ困難な立場をとった。
フジモリは2005年にチリで逮捕され、ペルーに送還された後、懲役25年の判決を受けた。その後のペルー大統領が2018年に恩赦を決定したが、最高裁は1年後にその決定を覆した。
プレヴォストはフジモリにペルー国民への謝罪を要求した、とペレスは振り返った。「人権がしばしば踏みにじられるラテンアメリカにおいて、教会は預言的なミニストリー、つまり権力者の犯罪を告発するミニストリーを受け入れる責任がある。教会は、構造的な罪、不処罰、権力の乱用に挑戦しなければならない」とペレス氏は語った。

ハーバード大学神学部で世界のキリスト教について客員講師を務めるジーナ・ズルロ氏は「レオ14世の選出は、世界的なキリスト教の変化について重要なことを語っている」と語った。
1900年には、カトリック信者の73%がヨーロッパと北米に住んでいた。現在では25%に過ぎず、残りはグローバルサウス(南半球)に住んでいる。
ズルロ氏はそのような状況の中で、「カトリック教会を率いるのはグローバル・サウス出身の人物になるだろうと予想していた」と語った。「米国とつながりのある人物が教皇になるとは、ほとんどの観察者が予想していなかったが、米国にはキリスト教徒の移民が多く、仕事、勉強、宗教的使命のため海外へ行くキリスト教徒も多いことから、米国のキリスト教も根本的にグローバルです」

レオ14世は英語、スペイン語、イタリア語、フランス語、ポルトガル語を話す。
レオは自身が宣教師であると常に語ってきた。「私は宣教師です。私は遣わされたのです」。バチカンに赴任した2003年、チクラヨのカトリック信者に語った。
教皇選出前に受けた数少ないインタビューのひとつで、2023年に『バチカン・ニュース』紙に対し、自身のアイデンティティーを改めて強調し、「私は今でも自分自身を宣教師だと思っています」と語っている。
レオ14世は最初の教皇演説で、カトリック教会は「宣教する教会」でなければならないと述べた。

米・ペルー両国の政治指導者たちは木曜日、自国出身の人物が教皇になることがいかに名誉なことであるかを語った。ペルーのディナ・ボルアルテ大統領はソーシャルメディアに、プレヴォスト氏の選出は「わが国の誇りと希望を満たすもの」であり、彼は「愛と献身をもってわが国民に仕えている」と書いた。
ドナルド・トランプ米大統領は、米国出身の教皇が誕生することは「大きな名誉」だと述べた。
レオはトランプ氏の移民政策を批判した経歴があるが、それでもトランプ支持の米国福音派の一部は彼の教皇就任を歓迎した。全米ヒスパニック・キリスト教指導者会議の代表であるサミュエル・ロドリゲス氏は、レオの選出は「分水嶺の瞬間」であり、「信仰はあらゆる場所であらゆる人のためのものであり、福音はすべての人への招きであることを思い起こさせるもの」だと述べた。

新教皇は、招きの重要性を強調している。あるインタビューでは、それがキリスト教指導者の第一の務めであると述べている。
「私たちはしばしば教義を教えることに夢中になっている。私たちの第一の務めは、イエス・キリストを知ることの意味を教え、主との親密さを証しすることですが、私たちはそれを忘れがちです。まず第一に、信仰の美しさ、イエスを知ることの美しさと喜びを伝えることです。それは、私たち自身がそれを生き、この経験を分かち合うことを意味します」

福音を分かち合いたいという願望は、米国福音主義者の一部と共鳴している。
「ローマとの意見の相違は今後も残るでしょう」。シカゴにある神学校ノーザン・セミナリーの新約聖書の教授で、プロテスタントとカトリックが神学的に共通の基盤を見出すことについての著作の経験があるマシュー・ベイツ氏は述べた。「しかし、これは教会全体の将来にとって重要なことであり、たとえレオを私たちの指導者と見ていなくても、カトリック教徒をキリストにおける兄弟姉妹として見ることなのです」
カトリックと福音派はすでに、移民や難民のケアなどの社会的関心事について協力している。キリスト教救援団体「ワールド・リリーフ」のアドボカシー・ポリシー担当副会長であるマシュー・ソーレンス氏は、「それはカトリック教会が長年受け継いできたものだ」と語った。
「福音主義キリスト教徒として、もちろん神学的な違いはありますが、移民の幸福に対する聖書に根ざした懸念は共通しています。レオ14世が教皇に就任されるにあたり、カトリックの兄弟姉妹と協力し続けることを切望しています」と彼は述べた。

ほとんどの観察者は、レオ14世はフランシスコが示した方向性を引き継いでいると見ており、レオはフランシスコの先例を踏襲すると話している。
キリスト教社会運動「レッド・レター・クリスチャンズ」共同代表でもあるシェーン・クレイボーン氏は、この考えをやんわりと否定して、こう述べた。
「フランシスコが急進的だったのはイエスの故です。彼が実際に受刑者の足を洗うというアイデアは、彼自身が思いついたわけではありません。レオ14世も同じで、常にイエスを指し示す矢印のような存在でありたい、と願っています。(中略)イエスは、キリスト教の中で捻じ曲げられてしまった多くの物事を、癒やす存在なのです」

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