【3人に聞く】④ 「解散命令」と信仰 キリスト教会は どう受け止めるべきか
「解散命令」の意義と限界
根田恵多(福井県立大学准教授・憲法学)
「解散命令」は宗教法人法に定められた制度で、宗教法人が「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」をした場合に、裁判所が解散を命じることができるというものである。解散が確定すると、宗教法人格が消滅し、財産を清算する手続に入る。裁判所の選んだ「清算人」が財産を管理し、被害者への損害賠償などの債務があれば、法人の所有していた財産を処分して弁済にあてることになる。
今回、東京地裁が旧統一協会にこの解散命令を下したことには、一定の意義がある。
一つは、霊感商法などの違法行為による被害の重大さを裁判所が認めたことである。東京地裁は、今回の決定において被害の実態について詳細に論じており、多数の民事訴訟で損害賠償が認められてきたことだけでなく、旧統一協会が被害の調査や根本的な改善措置を行ってこなかったことを指摘している。
また、この決定の中では、旧統一協会の詳しい資産が初めて明らかになった。決定によれば、教団の収入はほぼすべてが信者からの献金で、一昨年の三月末時点での総資産は千181億円であった。今後、東京高裁でも解散命令請求が認められれば、この財産の清算が始まり、被害者救済が進められることとなる。今回の決定は、その第一歩と言うことができる。
他方、今回の解散決定にはいくつかの点で限界もある。
第一に、解散後も従来の活動が継続する可能性がある。清算後の残余財産は「天地正教」という後継団体に移されることになっており、かなりの額が残ることが予想される。そうなれば、「看板を換えただけ」でこれまでと同様の活動が継続することにもなりかねず、被害者救済や再発防止が十分になされるのか、懸念が残る。
第二に、解散が信者の信教の自由に与える影響について、十分に検討されていない。解散によって法人格が失われると、法人名での口座開設や不動産登記ができなくなるなど、団体の維持・継続に大きな影響が生じる。そうなると、信者個人の宗教活動にも相当の支障が出ることが想定され、信教の自由との関係が問題になる。
この点については、オウム真理教の解散に際しても議論になっている。当時の最高裁は、解散によって法人格が無くなったとしても信仰そのものが否定されるわけではなく、信教の自由への影響は「間接的」なものに過ぎないとした。今回の地裁決定もこれを踏襲しているが、本当に「間接的だから問題ない」と言って良いのか、疑問が残る。解散が信者の宗教活動にどれだけの影響を及ぼすのか、具体的に、丁寧に検討するべきであるが、今回の決定はこの点を詳しく論じてはいない。
それでは、キリスト教会はこの決定をどう受け止めるべきだろうか。
まず言えるのが、透明性を確保しなければならないということである、、、、、
(2025年05月11・18日号 07面掲載記事)