【レビュー】『教会とは何か』『弱くてやさしい牧師の説教集』『いと小さく貧しき者に』『年を取るレッスン』『夢をあきらめないで』
教会一致を願いながらも、分断が生まれる現状がある。多元主義、相対主義の思想・神学状況とともに、牧師や賛美・プログラムのえり好みで教会を渡り歩く傾向が生まれる中、『教会とは何か』(R・C・スプロール著、老松望・楠望訳、いのちのことば社、990円税込、B6判)は教会の根本を問う。今年成立千700年となるニカイア信条の「唯一の、聖なる、公同の、使徒的」という四つの教会の要件を軸に、教会史や神学的背景をコンパクトに紹介しながら考察を促す。
『傷によって共に生きる 弱くてやさしい牧師の説教集』(北口沙弥香、ヨベル、千430円税込、新書判)の著者は、重度身体障害者施設でヘルパーをして生計を立てながら、小さな教会で主任牧師をする。家庭環境、不本意な学校生活、セクシャリティーの違和、という弱さや傷を経験してきた。神学校時代から現在の教会までの説教集。弱さの視点で聖書と人間を見て、占い師、宦官、罪深い女、悪霊にとりつかれた男、などの救いの意味が深まる。
「生涯必ず弱い者の味方となろう」。『新版 いと小さく貧しき者に』(深津文雄著、いのちのことば社、2千750円税込、四六判)の著者深津は、牧師であり、旧約学者。「日本独自の問題」として売春女性の保護に取り組んだ。同書は、戦争末期東京の空襲の緊迫から、「奉仕女」の働きの展開、現在様々な困難を抱える女性たちを保護する「かにた婦人の村」の創設までを克明に振り返る。
「老いて分かることがある」。『年を取るレッスン』(結城いづみ著、いのちのことば社、千430円税込、B6変)は85歳の著者が、老いの特徴や生活、家族への思い、死への備えなどを語るエッセイ集。励ましとなった聖書の言葉もある。同世代の励ましとなるとともに、「老い」を理解したいすべての世代に参考になる。
「世界を美しく」の理想で、写真家の家族が、山村で庭造りに取り組んだ軌跡。『ルピナス・ヴァレーへの道 夢をあきらめないで』(森本佳代・森本二太郎著、日本キリスト教団出版局、千760円税込、A5判)は季節ごとの鮮やか風景の背後に、祈りの生活がうかがえる。