し尿収集車が登場する絵本『つながり』 何に耳を当てるか 宣教アイテム特集
伊藤愛さんと河合進一さんとのコラボ絵本第2弾が商品化する。絵を担当した伊藤さんは文字の読み書きが苦手で、文を担当する河合さんには愛さんが描いた絵が見えない。二人の生み出す作品は、目に見えるもの以上の何かに、そっと気づかせてくれる。
題名は、『つながり』。今回の物語に登場するのは、今ではあまり見かけなくなった、各家庭の排泄物を回収する「バキュームカー」だ。河合さんの幼い頃の思い出が、関西弁と、伊藤さんの絵で色鮮やかに描かれる。
音が聞こえてくると外に飛び出るほど好きだったという、バキュームカーの音やにおい。それがどんなに面白く、心地よいものだったのか。読んでいると、絵本から伝わってくる音やにおいに、河合少年と同じように耳をあて、大きく息を吸い込みたくなる。
バキュームカーに乗ってやってくる「おっちゃん」と、河合少年とで交わされる台詞は、ほんの少し。バキュームカーのエンジンをだまって弱めるのが、仕事の終わった合図だ。けれど、おっちゃんとの言葉のいらない関係性や、あたたかい時間が不思議と浮かび上がる。
確かに感じられるつながりはそれだけではない。普段は別々の場所にいる人々の排泄物が一本のホースによって平等に混じり合い、つながっていく。その様子を、今でいうネットワークそのものだと河合さんはいう。「私は今でも何かに耳をあてています。そこで世界を知り、世界に話しかけているのです(あとがきより)」
目に飛び込んでくる確かかどうかさえわからない情報で、いっぱいになりがちな今日。自分の感覚を研ぎ澄ませ、周りに確かにある「つながり」に想(おも)いをはせるのもいい。【松尾結実】
1部千円(+送料)。購入希望者は、近江平安教会・鳥井まで。TEL090-9628-8188 Mail ohmi.heian.church@gmail.com
(2025年05月11・18日号 09面掲載記事)