Zoomで長岡さんが講演 右は岩村さん

「阪神宗教者の会」によるオンライン集会が、「憲法9条はどうなる」の題で、5月22日に開催された。憲法学が専門の長岡徹氏(関西学院大学名誉教授)が講演し、参加者が活発に議論した。

 

「阪神宗教者の会」と憲法9条

「阪神宗教者の会」は,災害、戦争、など社会課題について特定のテーマに基づいて、第一線で取り組む人をゲストに、オンラインで対話の場を作っている。世話人代表を、「憲法9条をノーベル平和賞に推す神戸の会」(推す会)代表でもある岩村義雄さん(神戸国際支縁機構代表)が務めている。「推す会」では、今年も推薦資格のある大学教授ら135人連名による推薦状をノルウェー・ノーベル委員会に送り、受理されている。

 

長岡氏は、精神的自由、信教の自由、表現の自由など、をテーマにするが、自身「宝塚9条の会」に所属し、9条についても広く発言している。

講演では、まず石破茂首相の憲法9条論を確認し、安倍晋三内閣の安保法制にさかのぼり、岸田文雄、石破内閣の「大軍拡路線」を解説。最後に憲法9条の意義を語った。

 

石破茂首相の憲法9条論

「石破さんは根っからの9条2項削除国防軍設置論者」と長岡さんは言う。

石破首相の憲法9条論として、昨年9月の自民党総裁選直前に米国のシンクタンク・ハドソン研究所に出された寄稿「日本の外交政策の将来」を紹介した。同機構では、アジア版NATOの創設、国家安全保障基本法の制定、米国の核共有・持ち込み、米英同盟並みの日米同盟強化が提案された。

石破氏は、9条二項削除をした2012年自民党憲法改正草案の該当部分責任者だった。「安倍元首相の自衛隊明記論には、批判的だったが、昨年の総裁選の中で、自衛隊明記論を改憲の主軸にするという方針を受け入れ、アジア版NATOや地位協定改定も封印した。安倍さん、岸田さんに受け継がれた改憲路線を継承している」と長岡さんは指摘した。

 

安倍政権、岸田政権、石破政権の「軍拡」

次に安倍内閣以降を振り返った。2014年に、集団的自衛権一部容認を閣議決定。15年に日米防衛協力のための指針を改定、これに基づき、安保法制が制定された。22年、岸田内閣時には、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の三法が成立した。これらのポイントとして、①防衛力の抜本的強化、②米軍との協力の深化=統合、③同志国との連携、④防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤の強化、を挙げた。「岸田さんの『軍拡』は、安倍さんの時と比べ、憲法との矛盾が拡大し、憲法や『平和国家』への言及がない」と批判した。

 

憲法9条の意義

憲法9条の「空洞化、死文化」も言われる中、長岡さんは、憲法9条の意義として、戦争による抑圧を防ぐ自由の基盤、戦争加担への批判の根拠、自衛隊の軍事活動の抑制、などを挙げた。「9条があることで日本が『平和国家』であることを世界に発信できる」とも述べた。

9条改正について、朝日新聞、読売新聞、NHKの世論調査を示したうえで、「9条を変えない方がいいという意見が半数で拮抗している。自衛隊明記を望む人も、海外での戦闘を認めているということではないだろう」と分析した。

各地で起きている「九条の碑」建設運動も紹介した。質疑応答では、憲法9条の法的効力、中国の目的、台湾有事、沖縄の基地問題などが話題になった。

岩村さんは、「『憲法9条』は,人間のいのち,人権,非戦につながる。今時,はやらない『アンファッショナブル』なぼろぼろになった旗かもしれません。子ども,孫,子孫に対する責任の重みをひしひしと思えばこそ,『平和』を紡ぎ出し、日本のみならず、アジア、世界の潮流に融合させ、表面化では見えていない地下水脈が断たれないように流し出していきたい」と語った。

「憲法9条をノーベル平和賞に推す神戸の会」(略称 推す会) 携帯 070-5045-7127 岩村

 

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