【訃報】ブルッゲマン氏逝去、『預言者の想像力』著者
日本でも多くの著作が翻訳されている、聖書学者、説教者のウォルター・ブルッゲマン氏が6月5日、逝去した。本紙提携の「クリスチャニティトゥデイ」誌は、福音派の教師らの声を取り上げた(記事後半参照)。
『預言者の想像力』(日本キリスト教団出版局)訳者の鎌野直人氏(関西聖書神学校校長 AGST/J関西研修センター長)は本紙に以下のコメントを寄せた。
北米留学時代、ブルッゲマンの著書を読み、その講演を幾度か、直接聞いたこともありました。彼の釈義について「あれ?」と思うことはありましたが、その人気はすさまじいものでした。そして、『預言者の想像力』を翻訳するなかで、神のことばが想像し、創造する世界に生きるという彼の解釈学に共感し、聖書学者としての自分のテキストへの向き合い方が整えられていったと思います。ブルッゲマンの直弟子である左近豊先生(青山学院大学教授)が中心となって幾冊か日本語にも翻訳されています。私の訳書も含めて、ぜひ、手に取っていただければ、と願っています。勿論、批判的に、でも教えられつつ、読んでください
以下は、クリスチャニティ・トゥデイの訃報記事
死去:ウォルター・ブルッゲマン、預言的想像力の学者
旧約聖書の教授は神学校で広く教えられ、多くの主流派および福音派の牧師に影響を与えた。
Christianity Today2025年6月6日
写真=ウェストミンスター・ジョン・ノックス・プレス / クリスチャニティ・トゥデイ編集
ウォルター・ブルッゲマン氏は、20世紀で最も広く尊敬された聖書学者の一人であり、6月5日にミシガン州の自宅で亡くなった。享年92歳だった。
100冊以上の神学と聖書批評の著書を持つブルッゲマン氏は、2003年に退職するまで、ジョージア州ディケーターのコロンビア神学校の旧約聖書研究の名誉教授であった。
彼の専門はヘブライ語聖書、特にヘブライの預言者であり、彼の著書は主に聖職者や教会指導者を対象としていた。しかし、説教を通して、ブルッゲマン氏の考えは多くの教会員に親しまれてきた。
ブルッゲマン氏は按手は受けたものの、自身の教会の牧師を務めることはなかった。しかし、彼は非常に人気のある、雄弁な説教者であり講演者でもあった。
「彼は世界と教会で何が起こっているかを見抜き、非常に必要とされている言葉でそれについて語る素晴らしい才能を持っていました」と、ペンシルベニア州エリザベスタウン大学の名誉教授で、ブルッゲマン氏の伝記を書き、彼の著書数冊を編集したコンラッド・L・カナギー氏は語った。
ブルッゲマン氏の著書は、特に主流派プロテスタント界隈で広く影響力を持ったが、彼の著作は多くの福音派にも影響を与えた。1978年の著書『預言者の想像力』は100万部以上を売り上げ、今でも神学校で頻繁に課題として出される古典となっている。この本の中で、彼は聖書の預言者たちが、異なる世界を想像するよう召命を受け、いかにして政治や支配的な文化、そしてその前提を覆したかを示した。
「預言者の使命とは、想像力という働きを生かし続けること、王が唯一考えられる選択肢だと主張したいことに代わる、未来の選択肢を思いつき、提案し続けること」と彼は書いた。
ブルッゲマン氏自身はアメリカの消費主義、軍国主義、国家主義に批判的だった。
「ウォルター・ブルッゲマンは、預言者についての世界的に偉大な教師の一人です」と、ポッドキャスト番組「オン・ビーイング」の司会者クリスタ・ティペットは語った。「彼は、預言者たちの想像力を古代の混沌から現代へと移し替えた。彼は、この伝統の恐れを知らない真実の語りと、力強い希望、そして心を和ませる言葉で思想を伝える力も体現しています」
彼の死のニュースがネット上で広まると、福音派の教授らが彼から受けた影響について語った。
「23歳の神学生だった頃、彼の『旧約聖書神学』は聖書へのアプローチを根本から変えてくれました。彼の他の著作も、私に挑戦し続けてくれました」と、ベイラー大学ジョージ・W・トゥルーエット神学校の牧会学と神学の教授、スティーブ・ベンザー氏はソーシャルメディアで述べた。
ミネソタ州ベテル神学校の旧約聖書教授カズ・ハヤシ氏は、ブルッゲマン氏を「私にとっても教会にとっても大きな祝福」と呼んだ。
ブルッゲマン氏は聖書本文を重視していたが、読者と本文の間に距離を置く従来の聖書解釈方法には抵抗した。彼は牧師たちが聖書本文の中に神の声を聞けるよう助けようとした。
ブルッゲマン氏は1933年、ネブラスカ州ティルデンで生まれた。北米ドイツ福音教区の牧師であった父によって按手を受けた。兄のエドと共にミズーリ州ブラックバーンで育った。
10代の頃、ブルッゲマン氏は兄と共に町外れにある黒人教会を訪れた。この経験が、後に彼が社会正義に傾倒するきっかけとなった。
彼の学問の旅は、イリノイ州エルムハーストにあるエルムハースト・カレッジ(現大学)から始まった。その後、エデン神学校とユニオン神学校で学び、セントルイス大学で教育学の博士号を取得した。セントルイスのエデン神学校で教鞭をとりながら、1986年にエデン神学校を離れ、長老派教会系のコロンビア神学校で教えた。
ブルッゲマン氏はキリスト教合同教会の教職者として活動を続け、教会会議で頻繁に講演を行い、数え切れないほどの教会指導者の指導者でもあった。
遺族には妻のティア、息子のジェームズとジョン、そして彼らの家族がいる。
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