映画「罪の余白」--悪戯にひそむ罪の根深さ
学校でのイジメによる自殺や事件が後を絶たない。学校側の説明責任の不十分さなどともすると隠ぺい工作がうかがわれるようなケースも無きにしも非ずか。そのような大人社会の建前と面子での行動を見透かし、教師や生徒たちの心理を操り学校ヒエラルキーに君臨する女子高生。彼女によって娘を亡くした行動心理学者とが、自殺か事故かの真実をめぐって壮絶な心理的バトルを展開するサスペンス。
罪とまで言い切れるのか、他愛のない日常的な悪戯からの出来事なのか。だが、他人の想いと心をもてあそぶのはやはり悪いこと。悪戯にひそむ罪の根深さが浮かび上がってくる。
キリスト教系の名門女子高校で生徒の安藤加奈(吉田美佳子)が、学校で休み時間に教室の手すりから転落死した。大学で行動心理学を講じる父親の安藤聡(内野聖陽)には、妻が他界したのち手塩にかけて育ててきただけに、加奈の死を受け止められない。遺書はない。部屋を探したが日記も見当たらない。自殺なのか、事故なのか。
失意の中で、加奈の異変に気づけなかった自分を責め始める安藤。ある日、笹川七緒と名乗るクラスメイトが訪ねてきた。笹川との会話でパソコンに書かれていた日記を発見した二人。そこには木場咲(吉本実憂)と新海真帆(宇野愛海)のグループにいた加奈が、咲によってしだいに追い込まれていく悲痛な叫びが書かれていた。
学校の文化祭。笹川に会い行った安藤だが、咲本人が笹川になりすましていたことを知る。美人で女優を目指している咲は、校内でも憧れの存在で教師たちには知られていないスクールカーストのトップに座っていた。
自分になびいてくる生徒たちの思いをもてあそび、悪戯ぽくイジメて心理的に追い込みことを愉しんでいるかのような咲。事実を確かめようとする安藤だが、咲が自分の目的と保身のため挑んでくる策略に翻弄され闘いはエスカレートしていく。
原作は、芦沢央の同名の小説。学校側の対応を読み、安藤を警察沙汰にしスキャンダルと孤立へ追い込む咲。二人のバトルは原作の緊張感とテンポの良さをみごとに描いている。だが、心理バトルの果てに起きた事件の咲と真帆の心の変化と行動は割愛されている。そこにも“罪の余白”の揺らぎがあると思われるだけに惜しまれる。【遠山清一】
監督・脚本:大塚祐吉 2015年/日本/120分/ 配給:ファントム・フィルム 2015年10月3日(土)よりTOHOシネマズ新宿ほか全国順次公開。
公式サイト http://tsuminoyohaku.com