映画「幸せをつかむ歌」--自分が選んだ道ならば肚すえて歩めばいい
ロックスターへの夢を捨てられず夫と離婚し3人の子どもたちとの家庭を棄てた女性が、娘の離婚と娘の兄の結婚をきっかけに元夫の家を訪ね子どもたちとの関係を取り戻そうとする姿を描いたエンターテイメントなヒューマンドラマ。嫌悪感を隠さない子どもたち、後妻に対する母親としてのプライド、そして自分で選んだロックミュージシャンとしてのこれからの人生は…。メリル・ストリープがロック・ミュージシャン役で歌い、実の娘メイミー・ガマーとの母娘役での共演など話題も豊富だが、女性として自分が選んだ道を腹を据えて歩むことへのエールにあふれている。
【あらすじ】
ロサンゼルス、下町の小さなライブバー。そこのハウスバンド“リッキー&ザ・フラッシュ”は、オリジナルの“Cold One”だけでなくRockの懐かしい曲から流行りの曲まで幅広いリクエストにパワフルな演奏で応えるので常連客の受けもいい。リード・ボーカルのリッキー(メリル・ストリープ)は、破産申告中で、週日の昼間はスーパーマーケットでレジのアルバイトをしているが、ロックシンガーの生活は楽しんでいる。同じ50代のギタリスト、グレッグ(リック・スプリングフィールド)からは、一緒に暮らそうとプロポーズされているが、家族を棄てた自分にはそんな資格はないと思っている。だが、グレッグも家庭を棄ててミュージシャンの道を選んできた負い目をもって生きてきた。
ある日、元夫のピート・ブラメル(ケビン・クライン)から久し振りに連絡が入った。娘のジュリーが突然夫から離婚されショックで自殺しかけたほど落ち込んでいる。あいにく後妻のモーリーン(オードラ・マクドナルド)は父親の看病のため実家に戻っている。留守の間、母親としてジュリーを元気づけてほしいということ。2人の息子や娘から嫌われていることは分かっているが、リッキーは少しでも娘のためになれるならばとインディアナポリスへ飛んだ。
警備会社がゲートで出入りをチェックする高級住宅街。離婚して20年以上経って入った家。案の定、ジュリーは「80年代を思い出すは」と嫌味を言い、ロックシンガーの格好そのもののリッキーに嫌悪感をあらわにする。それにはお構いなしに、髪の手入れもせず身なりも構わなくなっているジュリーを町へ連れ出し美容院とネイルサロン、ブティックで身づくろいと整えさせるリッキー。昔よく行ったドーナツ点の前に、ジュリーを棄てた元夫の車が停まっていた。ジュリーとリッキーは、店内で談笑する2人を見て文句を言いに行きひと騒動。リッキーは、息子たちをレストランに呼び寄せ一緒に食事した。その時、息子のジョシュ(セバスチャン・スタン)が婚約者を連れて来ていた。もう一人の息子は、ゲイなので家庭は持たないという。
なつかしい子どもたちとの再会だったが、モーリーンが戻ってきたためロスへ帰った。生みの母と育ての母、少し言い争ったモーリーンから、ジョシュの結婚式への招待状が届いた。子どもたちを愛してはいるが、家庭を棄てた自分の居場所はライブハウスのこのステージと自分に言い聞かせ辞退しようとするリッキー。だがグレッグは、そんなリッキーを思わぬ方法で後押しして結婚式に出席させようとする。
【みどころ・エピソード】
なんといってもロック・シンガー役のメリル・ストリープが、スタジオ録をではなく生演奏で歌っているライブシーンの臨場感は曲数も多く音楽映画としても存分に楽しめる。Ricki and the Flashのオリジナル曲として“Cold One”がいくつものシーンで歌われるほか、レディ・ガガの“Bad Romance”、Pinkの“Get The Party Started ”、エドガー・ウィンターの“Keep Playing That Rock & Roll”など盛り上がる。また、ブルース・スプリングスティーンの“My Love Will Not Let You Down”は、リッキーの生き方そのもののようでメリル・ストリープ自身が選曲したもので、その思い入れが伝わって来るるステージ。
ライブシーンが本物であるためにジョナサン・デミ監督は、友人のニール・ヤングをメリル・ストリープのギター指南役につけた。バンドのザ・フラッシュの編成には、リッキーの恋人でギタリスト役に“Hard to Hold”などで日本でも80年代に多くのファンを得たリック・スプリングフィールドを配し、キーボードにPファンクのバニー・ウォーレルを迎えて銀幕デビューさせるなど心にくい演出は流石です。 【遠山清一】
監督:ジョナサン・デミ 2015年/アメリカ/101分/映倫:G/原題:Ricki and the Flash 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント 2016年3月5日(土)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開。
公式サイト http://www.shiawase-uta.jp
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*Award*
2015年:第20回サテライト賞主題歌賞(“Cold One”)ノミネーート