アドベント

かつて奉仕していた高座教会では、毎年12月24日にクリスマス賛美礼拝を行っていました。会衆賛美に加え、降誕劇、聖歌隊、ハンドベルクワイア、ゴスペルバンドなど、教会のさまざまなグループによる特別賛美がありました。 そして、メシアに関する預言から始まり、御子の降誕を伝える聖書箇所の朗読に耳を傾け、牧師がクリスマスメッセージを取り次ぎ、最後は聖歌隊によるハレルヤコーラスへと続く、主イエスのご降誕を共に祝う礼拝でした。 牧師仲間の間でよく聞く話に、教会学校で降誕劇を演じる際、誰がどの役を務めるかで、かなりもめることがあります。女の子たちはマリア役を希望し、男の子たちには羊飼いや博士が人気です。そして最後まで決まらないのが「ヘロデ王の役」です。今でも鮮明に覚えていますが、何年か前、教会学校校長のＹさんのへロデは迫力満点、後にも先にもない素晴らしい演技でした。 いずれにしても、賛美礼拝は、日頃から祈りに覚えている家族や友人、地域の方々をお誘いする、一大伝道イベントであることに変わりありません。 ある年、新共同訳聖書が発行されて間もない頃、「一般の方にも分かりやすいように、新共同訳を使ってみたい」という提案がありました。実はその時、問題になったのが・・・ （次ページで失敗と気づき、約1400字） ・・・マタイ２章の「博士」が「占星術の学者」という訳語に変わっていた点でした。議論の末、「牧師預かり」となり、結果として新共同訳を使用しつつも、「占星術の学者」という訳語を従来通りの「博士」に変更して朗読することにしたのです。 なぜそうしたかといえば、旧約聖書が禁じる行為を職業とする者たちが、御子の最初の礼拝者として招かれるのは、どこか辻褄（つじつま）が合わないと、勝手に考えてしまったからです。 しかし今ふり返れば、これは大失敗だったと思います。牧師として大きな過ちを犯してしまったと、告白せざるを得ません。それは福音書記者の意図に反するものであり、いや、何よりも慈しみ深い神さまの豊かなご計画に反していたからです。まさに余計なことをしてしまい、今思い出しても恥ずかしい限りです。神のお働きを、私自身の常識の枠内に無理やり封じ込めてしまったのだと思うからです。 マタイ福音書によれば、この時、占星術の学者たちだけが御子イエスに出会うことができました。そして、彼らだけが主イエスを礼拝し、喜びに溢（あふ）れたのです。 当時のユダヤ人の常識からすれば、占星術の学者たちは三重の意味で祝福から外れた存在でした。第一に「東方」出身であること。ユダヤから見た東方とは、アラビアの砂漠が広がる不毛の地であり、聖書では「東風」が吹けば草木を枯らし、泉を干上がらせ、イナゴの大群を運ぶと恐れられていました。つまり「東」は貧しさの象徴だったのです。第二に、彼らの職業です。「占星術の学者」、言い換えれば「占い師」でしょう。旧約聖書のレビ記や申命記などには、「占い」がいかに忌み嫌われていたかが記されています。そして第三に、彼らは「異邦人」でした。当時のユダヤ人にとって異邦人とは、神の選びに属さない者、祝福から漏れた者、救いの枠外にいる者と見なされていました。 しかし福音書記者マタイは、父なる神が、まさに「祝福の蚊帳の外」にいたと考えられていた占星術の学者たちをまず選び、救い主の降誕の知らせを最初にお伝えになったという事実の中に、「福音（良き知らせ）」を聴き取り、そのメッセージを読者である私たちに伝えようとしていたのではないかと思うのです。 時に私たちは、「こんな私だから、神さまは顧みてくださらないのでは」と思い込んでしまうことがあります。しかし、私たちの常識で神さまの愛やお働きを制限してはなりません。使徒パウロはエペソ教会に宛てた手紙において、神の愛が広く、長く、高く、深い愛であると語っています（エペソ3・17～19）。 「広さ」とは、ユダヤ人も異邦人も、すべての人を救いに導く愛の広さでしょう。「長さ」とは、私たちが悔い改めるまで忍耐強く招き続ける愛の長さかもしれません。そして「高さ」とは、この世の愛とは比べ物にならないほど清く崇高な愛であり、「深さ」とは、どんな罪の深みにも届き、どん底にいる者さえも引き上げる神の愛を表しているのではないでしょうか。広く、長く、高く、深い愛とは、すべての人を包み込む大きく豊かで立体的な愛です。手で触れ、肌で感じることのできる、クリスマスの出来事にあらわされた神の愛なのです。 聖書を開けば、「みどりご」「布」「飼葉桶」「星」「人口調査」「羊飼い」「主の使い」「旅」など、思考の枠組みに納まり切らない言葉や出来事に遭遇します。ただ、あのアドベントの季節の失敗以来、御言葉を読み違和感をおぼえたならば、それを自分の常識の枠に納めようとするのでなく、マリアにならい、「心に納めて、思い巡らす」（ルカ2・20）ことを心がけるよう努め始めたのです。 関連記事 https://xn--pckuay0l6a7c1910dfvzb.com/article-v4tgqwvwb5iayj21/

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