昨年、安保関連法案を強行可決し、今年3月には施行させ、今年7月の参院選では改憲勢力3分の2を目指すことを明言する安倍政権。そんな状況の中、日本キリスト教協議会(NCC)靖国神社参拝問題委員会は「70年談話の分析と講演の集い『安倍政権の現状と私たちの課題』〜歴史を直視し、平和をつくりだすために〜」を5月30日、東京・千代田区神田駿河台のお茶の水クリスチャン・センターで開催。中野晃一氏(上智大学政治学教授、立憲デモクラシーの会呼びかけ人)が講演した。【中田 朗】
中野氏は、今の政局について語る。「安倍晋三総理はサミットを使って、一人だけリーマンショック前の状況で世界経済が危機目前だからと言い、消費税増税を先送りした。ダブル選挙もなくなった。これは安倍政権の内部で若干もめている状況が生まれているということで、いろいろ難しい状況で参院選を迎えることになってきた。安倍政権は、意外と盤石ではない可能性がある」
その上で、どうしてこんな状況になってしまったのか、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障政策の大転換がどういう組み合わせで起きているのかについて言及。「現在、安倍政権において歴史修正主義、復古的ナショナリズムが恐ろしい状況になってきている。一方、アメリカとの軍事同盟を際限なく強化し、戦争のできる国にしようとしている。愛国者と言うわりにはどこを見て政治をしているのか、という奇妙さがある」
「今、世界的に新たな右派、保守勢力が台頭している。安倍政権もその流れの中にある」とも指摘。「冷戦が終わった直後は、これから世界は良くなると期待する人が多かったが、実際に世界を見ると、アメリカでは人種差別的な発言をするドナルド・トランプ氏のような人が、共和党の正式な候補になってしまった。言ってはいけないことを言うと拍手喝采を浴びる。ヨーロッパでも、極右移民排斥政党が台頭している。一方、左側においては、アメリカでは極めて珍しい、民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース氏がここまで善戦してきている。右、左の声が強くなり、中道右派・左派の部分が弱くなってきている。日本では日本会議に乗っ取られた自民党に対し、国会前での抗議行動を母体とする市民連合が後押しし、野党共闘を進めている」
「政治のいろいろなところで対立構造が浮かび上がっている」とも言う。「右側は富豪で強者が弱者を支配する。グローバルな規模で簒奪的な振る舞いをし、短期的に儲ければいい、あとは野となれ山となれと、歯止めのきかない状態になっている。それを隠すために、愛国のレトリックとかヘイトとか、外敵を指さすことが必要になってきている」
昨年発表された安倍総理の「戦後70年談話」については、「中国、韓国など東アジアに向けたものでなく、アメリカに向けられている」と指摘する。「新しい国際秩序への挑戦者となったことをお詫びしているが、『新しい国際秩序』とは、まさにアメリカを中心とした国際社会。今は挑戦者ではなく、アメリカを中心としたグローバルな経済秩序のパートナーだと。これが集団的自衛権やTPPとつながってきている」
ナショナリズムを富と権力の集中(寡頭政治)の「隠れ蓑」としている実態がある中で、「個人の尊厳」の擁護をエトス(精神)とした国内外の連帯を通じて、脅かす暴力と貧困に向き合うことを強調した。
その他、第一部ではカトリックを代表し光延一郎氏(カトリック・イエズス会社会司牧センター所長)、日本福音同盟(JEA)を代表し柴田智悦(同盟基督・上野町教会牧師)、日本キリスト教協議会(NCC)を代表瀬底正博(カンバーランド長老・高座教会牧会スタッフ)の各氏が「戦後70年談話に対する態度表明」をした。
