【レビュー】『カール・バルト入門』『悲しみに壊れた心はどこへ行くの? 』『驚くべき人間のからだ』『クィア神学入門』『サーバント・リーダーシップの原則』『ローマの道化師』

 

神と人、何より神からの「和解」をバルトは強調する。「和解論」を中心とする『カール・バルト入門 21世紀に和解を語る神学』(上田光正著、日本キリスト教団出版局、2千640円税込、A5判)が刊行。前半は、バルトの伝記的歩み、『ローマ書講解』にいたる神学形成をたどる。後半では、『教会教義学』における三位一体と「恵みの選び」を確認して「和解論」にいたる。著者は、バルトの現代的意義として、「審判代受的贖罪論」「現在的終末論」の吟味、さらに「正義」と「正義」の対立の中での「世界の和解」の希望を挙げる。

 

化学博士で組織神学者の著者が、妻と死別した自らの体験を、心理学、神学の視点で振り返っていく。『悲しみに壊れた心はどこへ行くの? 死との和解の神学』(W・ロス・ヘイスティングス著、小山清孝訳、ヨベル、2千200円、四六判)は、著者の専門の三位一体論が核だ。関係的な三位一体の神が、関係的人間のモデルとなる。夫婦の一体性ゆえに、一方の喪失は大きい。悲嘆の共有という教会共同体の可能性、牧会やカウンセリングの具体的なアドバイスなども伝える。

 

神のかたちに似せられた人間一人ひとりは、キリストのからだである教会の一部分と類比できる。『驚くべき人間のからだ 神のかたちとして』(ポール・ブランド、フィリップ・ヤンシー共著、赤木真理子訳有光潤介監訳、いのちのことば社、2千970円税込、四六判)は世界的な医師のブランド氏とジャーナリストのヤンシー氏の対話から生まれた。身体の多様性、細胞、皮膚や目、骨、血の機能から、キリストのからだである共同体の在り方を洞察。様々な医療現場での葛藤や助け、信仰の深まりについても自伝的に語る。

 

ジェンダー、セクシャリティーの規範に挑戦する「クィア」の神学の全貌について、『クィア神学入門 その複数の声を聴く』(クリス・グリノフ著、薄井良子訳、新教出版社、2千970円税込、四六判)は、多数の資料と共に紹介する。「クィア神学」は、時として「下品」なまでの挑発で、教会や聖書の規範の中の「権力関係」を暴き、かく乱する、「解体」の態度でもある。これに対して「保守」はいかに謙虚に自らの態度を点検し、「建設」することができるか。

 

 

権力によらず、人々に奉仕するリーダーシップは日本のビジネス界でも注目されてきた。『サーバント・リーダーシップの原則 権力によらないリーダーシップ』(ジェームズ・ハンター著、嵯峨根克人訳、豊田信行監訳、地引網出版、千980円税込、四六判)はビジネスの様々な事例、「権力」と「権威」の違い、「人格」と「愛」の重要性を述べる。著者はコリント書のハつの愛に気付き、教会とビジネスのリーダーシップを統合させた。

 

敵に対しても、歓迎の余地を設けるには、「独り」での神との親密な交わりが重要となる。『ローマの道化師 独り静まること、独身でいること、祈り、観想についての省察』(ヘンリ・ナウエン著、中村佐知訳、あめんどう、千980円税込、四六判)は、「独り」は、「結婚も友人関係も」含めた、「あらゆる形態の信仰生活において不可欠」だという。特に「観想的な祈り」は、自然との関係、時間との関係、人との関係を変え、支援活動(ミニストリー)の土台となる。