【詳細】多世代・多民族前提に共生考える 青年たち証言 「外キ協」集会から

 「排外主義的が強まっている」。衆議院選挙を前に、外国人との共生を考えてきたキリスト者、青年らが実情を語り、共生の道筋を提案した。

 「外国人住民基本法」の制定を求める第40回全国キリスト者集会「排外主義にNO! 共に生きる社会にYES!」(外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会〔外キ協〕主催)が1月23日、東京・新宿区西早稲田の早稲田奉仕園リバティホールとオンラインで開催された。

「からふるな仲間たち」を手にメッセージを語る大嶋果織さん

 第一部は、大嶋果織さん(外キ協共同代表、日本キリスト教協議会〔NCC〕総幹事)が、ローマ信徒への手紙12章12、13節から「愛と歓待のネットワークを広げよう」との題でメッセージ。最初に外キ協とNCCとの協力で作成した冊子「からふるな仲間たち」(マンガ:みなみななみ、発行:マイノリティ宣教センター)を手にして、こう語った。「この冊子は全6冊、16人の外国にルーツを持つ方々の物語が紹介され、それぞれが異なる人生を生きている。生まれ育った国も、家族の形も、日本に来た理由も、就いてきた仕事も、抱えてきた困難も、みな違う。ただし、共通している願いがある。それは、家族や大切な人と安心して暮らしたい、夢や希望を叶(かな)えたい、そのための働く場所や学び場所があってほしい、ということ。これは日本国籍を持つ親の下に生まれ、そのことを特別に意識してこなかった、日本で暮らす多くの人々が、当然のように抱いてきた願いと同じだ」


 だが大嶋さんは、「この冊子の第1号が発行されてから8年がたとうとしているが、振り返ってみると、現実は8年前より悪くなっていると思わざるを得ない」と危惧する。「排外主義的な言説や行動は、確実に強くなってきている。日本人ファースト、国民の安全安心、という言葉が繰り返し言われ、外国にルーツを持つ人々が、社会の不安や問題の原因であるかのように語られる場面が明らかに増えている。これは世界的な風潮でもある」


 その流れを象徴するのが、出入国管理庁が昨年発表した「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」だと指摘。「国際的には『不法滞在者』でなく、『非正規滞在者』という言葉を使うよう合意ができている。ところが、不法滞在者をわざわざ使って、治安の脅威と外国人を結び付けているところに、悪意を感じる」


 その上で、パウロがローマの信徒に向けて手紙を書いた当時の状況を踏まえ、こう語った。「パウロは、軍事力と政治力により広大な土地を治めたローマ帝国の中心都市のキリスト者に手紙を送っている。そこは、差別、序列、排除が日常的に存在する社会だったと思うが、パウロはそこにいるキリスト者に『希望をもって喜び、苦難を耐え忍び、たゆまず祈りなさい。聖なる者たちの貧しさを自分のものとして彼らを助け、旅人をもてなすよう努めなさい』(12、13節、新共同訳)と語っている」


「私たちも、差別や排除が現実にある社会の中で、どう生きるかが問われている。私自身や私たちの共同体は完全ではない。だが、そのことを自覚し自己反省しながら歩んでいきたい」と結んだ。

クルド人の現状を語る山田拓路さん

 第二部は、「排外主義の日本を共に生きる青年たちの証言」として、3人が登壇した。一人目は、NPO法人メタノイア代表理事の山田拓路さん。メタノイアは、日本で生活する難民や移民など、外国にルーツを持つ子供たちに日本語教育を提供したり、交流の場づくりや在留資格・進学相談支援など、足立区竹ノ塚と埼玉県川口市・蕨市を拠点に活動する。


 山田さんは「ほとんどが難民として来日している。難民申請が認められず、在留資格がない仮放免の人も2、3割いる。そういう子どもたちが川口・蕨エリアに集まって住んでいる。約半数がクルド人で、中国人やネパール人もいる」と言う。


 昨今のSNSや政治の世界で、クルド人をはじめ外国人を貶(おとし)める排外主義の傾向に危機感を覚えるという。「昨年夏、私たちの日本語教室に通っていたクルド人中学生の父親が、なんの前触れもなく入管に収容され、まもなくトルコに強制送還された。突然引き離され残された子どもたちと母親は、涙を流し、混乱していた。その後、残された母子もやむなくトルコへと帰って行った。その中学生は『僕の人生がむちゃくちゃに壊された』と泣きながら言っていた」


 「クルド人生徒の親子が日本語教室から帰る時、私は自分たちを盗撮している人を見つけた。子どもはおびえて泣いていた。母親は『今日のことは、この子の心から消えない』と取り乱していた。こうした被害は珍しいことではない。盗撮や暴言におびえながら過ごさなければならない社会は間違っているが、現実はそちらのほうに向いている」


 昨年7月、あるクルド人の子どもが短冊に「優しい人に、なれますように」と書いたという。おりしも、参院選の最中で、外国人憎悪の声をばらまく候補者が増えていた時期だった。「私たちは、あの良きサマリヤ人のように、誰かがつまずいて転んだら助けてあげる人でありたい。このクルドの子どものように、やさしい心を持った子どもたちを大切に守り、育てていけば、きっと実現すると思う」と語った。


 二人目は、仮放免高校生奨学金プロジェクトからの支援を受けるエマさん(仮名)。エマさんとその一家はクリスチャンだが、母国ナイジェリアでは、宗教を理由に命の危険にさらされるため、8歳の時、家族と共にナイジェリアから来日。全員が仮放免で苦しい生活を送る。現在高校三年生で、大学進学を目指して勉強中だが、受験資格は満たしているのに、仮放免ゆえに志望校から受験拒否されるなど、闘いを強いられている。


 「私は大学に進学し、英文学を深く学びたい。そして学んだことを日本社会に還元し、人の命を守る働きをしたい」とエマさん。「仮放免ということで、受験したかった学校から拒否されたことが何度もあった。また、両親が働けないため受験料が払えないという問題にも直面している。それで、寄付で進学費用を集めようと願っている。どうか、私が未来への一歩を踏み出せるよう、力を貸していただきたい。皆様からいただいた支援はただの支援ではない。生きていいんだという大きな励ましであり、この恩を私は決して忘れない。学び続け、必ず社会に貢献できるようになる」と抱負を語った。

永住許可有志の会について語る荒木生さん

 三人目は、永住許可有志の会の荒木生(うぶ)さん。同会は2024年6月、「永住許可取消条項」を含む改正出入国管理及び難民認定法(改正入管法)が成立したころから活動を開始。20~30代の日本で生まれ育った永住者や、その家族・友人らによる若者のグループだ。荒木さんは、中国、韓国、日本の3つのルーツを持つ。「永住許可取消条項」に、当事者たちの声を反映することを目指して活動する。
荒木さんは、永住許可有志の会が今年1月に発表した「今後の共生社会と制度に関する声明」について説明した。


 声明では、日本には2024年時点で20歳以下の外国籍の住民が61万人いること、日本で生活する外国籍の住民は決して一様ではないこと、20歳以下の外国籍の住民の中には、日本で教育を受け日本での長期的な生活を視野に入れている人も多くいること、生活基盤は日本にあり、将来への選択や不安、期待も日本社会の中で形作られてきたこと、などの現実を踏まえ、3つの視点を提示する。
 ① 多世代定住を前提とした制度へ
 日本で生まれ育った人、幼いころから日本で教育を受けてきた人々にとって、日本は「滞在先」ではなく、生活の場、将来を考える場所である。このことを前提に、幼少期から成人期、次世代に至るまでを見据えた制度や施策を検討していくことが、長期的な共生社会の実現につながる。
 ② 支援から取り残さない仕組みと配慮
 保険料や税、年金などの負担は社会を支えるうえで重要だが、一時的に支払いが難しくなる状況は、誰にでもありうる。また、入管手数料の引き上げが検討されているが、申請や更新にかかる手数料は、生活状況やライフステージによっては大きな負担となる。必要な時に制度から距離が生まれない設計が必要だ。
 ③ 分断を防ぐ情報発信と対話の蓄積
 事実とは異なる情報や一面的な言説が広がることは、不安や誤解が生じやすく、当事者だけでなく、社会全体に不必要な緊張や分断をもたらす。誰かの不安をあおる形ではなく、互いの立場や背景を理解し合いながら議論が積み重ねられることが、長期的に安定した共生生活につながると考える。
 最後に、こう結んだ。「来年4月に改正入管法は施行される。この1年は、他人事ではなく自分事としてこのことを考え、関心を持ち、隣人として生き、生活していける社会をつくっていきたい」


 また、韓国基督教教会協議会(NCCK)からの連帯メッセージがり、最後に大久保正禎氏(日基教団・西片町教会牧師)が「全国集会宣言2026」を朗読した。

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