2025年12月15日

「戦後80年」をテーマに日本福音主義神学会東部部会の秋期公開研究会が12月１日に東京・千代田区のお茶の水クリスチャン・センターで開催された。 森島豊氏 ポピュリズムが暴走した歴史 基調講演１は、森島豊氏（青山学院大学総合文化政策学部教授、同大学宗教主任）による「戦争に向かわせた時代の正体――日本人の権利意識をめぐって」。 「民主主義と人権の脆弱性」と結びつく「ポピュリズム」がもてはやされる時代の中で、民主主義や人権が生成する土台となったキリスト教信仰の立場から、日本的権利意識に着眼点をおき、この問題の本質を神学的な視点も合わせて考察するものである・・・ （次ページで、天皇制と抵抗権、権利意識などについて） 欧米における近代抵抗権思想が君主よりも上位にある存在（聖書の神）を根拠にしたのに対し、日本ではそのような存在がなく、抵抗権の根拠を持つことが難しいとされてきた。必然的に自由や平等という人権の根拠も、国民の権利や人間の尊厳ではなく、国民を平準化する天皇への忠誠に基礎づけられ、国から恩寵（おんちょう）として与えられたものであった。日本における平等主義（平準化）という人権理念は、天皇とナショナリズムが構成要素となって国民に普及したのである。 このような国体に基礎づけられた一君万民の平等という人権概念は、１９２０年代になって国民の権利意識として受容され、経済的平等を求めて特権階級を排除するテロリズム的行動を誘発した。経済的不平等と貧富の格差をテロリズム的手法で是正しようとする動きは、軍隊の中で醸成され、青年将校たちによる「五・一五事件」や「二・二六事件」で顕在化する。 二・二六事件で死刑に処せられた磯部浅一は、すべての論理を一君万民の国体である皇祖皇宗の神の道に基礎づけ、最終的には天皇にも非難の矛先を向けた。そして、天皇よりも上位にある皇祖皇宗を根拠にして、ついに天皇をも相対化した。 同様の原理で、敗戦直前に発生したクーデター「八・一五宮城事件」がある。泥沼の戦争へと突き進んだ陸軍には、この思想が潜在的にも顕在的にも存在していた。 このように、軍隊によって培われた国体に基づく権利意識（天皇型人権）は、国体思想と国民感情という二重の正義感に支えられていた。国民一丸となって突き進んだ泥沼の戦争は、一君万民の平等と同じ原理で動いた。 近年、日本人ファーストや外人問題への若者の共感にも同様の動きが観察できないだろうか。その怒りを支える人々の正義が天皇を中心とする国のあり方と結びつくとき、テロリズム的な行動に走りやすく、その行動に庶民が共感し、国民が国家の暴走を助長したことを歴史は物語っている。 12月11日 10:23 AM こちらもオススメ 福音主義神学会東部部会「戦後80年を神学する」 山口陽一氏 基調講演②「赦されて生きる教会～罪責告白の戦後80年～」

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森島豊氏 基調講演①「戦争に向かわせた時代の正体――日本人の権利意識をめぐって」福音主義神学会東部部会

森島豊氏　基調講演①「戦争に向かわせた時代の正体――日本人の権利意識をめぐって」福音主義神学会東部部会