熊本県で最大震度7を観測した地震の発生後、インターネットSNSツール「Twitter(ツイッター)」上に「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ」「熊本では朝鮮人の暴動に気をつけてください」といったツイート(つぶやき)があふれ返った。これは以前、関東大震災時に朝鮮人虐殺まで至ったデマの内容に似せたものである。こういったものをヘイトデマと呼ぶそうである。このニュースを知った時、初めは「ネトウヨもけっこう歴史を知っているものだな」なんて感心していたが、そのツイートの内容を見ながら、やはりヘイトスピーチと同等の問題があると感じた。
一番の問題は差別的内容を容易にネット上に「つぶやく」ことであるが、今回の「熊本の朝鮮人」という内容が大変問題である。熊本にも多くの在日コリアンが存在する。私たちの群にも「熊本教会」がある。これは特定の人々に関するデマであり、しかも「井戸に毒」を入れたという内容なのである。このデマによって熊本の在日コリアンは悲しくなるだろうし、もしかしたら周りの日本人は「在日コリアンはすこし恐い存在かもしれない」と思うかもしれない。新たな差別を生む可能性が「大」なのである。
関東大震災時のデマが広まったのは、朝鮮からの労働者に対してひどい扱いをしていることを自覚していた人々が、大震災のパニックの中、朝鮮人に仕返しを受けるのではという心配からであった。ただのヘイトデモではなく、罪悪感を多少持ちながらも朝鮮人を見下げ続けた人々の恐れである。横浜にはデマを聞いた小学生たちの作文が発見されている。「朝鮮人が攻めてくる。恐ろしい」と書かれてある。人々はデマによって生み出された恐れから、朝鮮人を虐殺したのである。デマで人々は命を落とすのである。
では熊本地震でのヘイトデマが広まった理由はなんだろうか。それは「ノリ」であり「ネタ」である。もっと詳しく述べるなら、普段から在日コリアンを見下すべき存在であることを確信する人々が、関東大震災でのデマをまねて朝鮮人に関するヘイトデモを、今ツイッターにツイートしたら、かなりウケるんじゃね?ということである。そして多くの人々にウケたのである。もちろん他の多くの人々はうんざりしたわけであるが。
デモと質的にすこし差があるが、デモを発声する人々と観念は同じであると思う。それは「在日コリアンを見下すべき存在であることを確信」していることである。この固定観念を持っている限り、何を言っても問題解決にはならない。クリスチャンでも人間なので固定観念からなかなか解放されず困る時がある。しかし、もし私たちがまだ国籍で人々を見下げているなら、救われていないのではないかと思う。私が住む横浜には多くの外国にルーツを持つ人々がいる。私はその人々とすれ違う時、「外国人はうるさいな」と「つぶやく」時がある。つぶやく私も「外国人」であり、かなりうるさい外国人である。心の底から自分に嫌になるのである。(李明忠=在日大韓基督教会横浜教会牧師)
