2017年が福音歌手デビュー25周年の森祐理さん。豊かに祝福されたその歩みには、阪神淡路大震災で亡くなった弟の渉さんの死、声が出なくなる試練、森さんをずっと支え続けてきた最愛の父・茂隆さんの死など、数々の苦しみ、痛みもあった。だが、「苦しみは苦しみで終わらなかった」と森さんは力を込めて言う。一つひとつの苦しみ・痛みが、大震災や自然災害で苦しむ人々に寄り添い、歌で支援する大きな力になり、試練が次の道へのステップにつながっていったと語る。森さんに話を聞いた。【中田 朗】
「『私たちの兄弟たち、さまざまな試練に会うときは、それをこの上もない喜びと思いなさい』(ヤコブ1・2)。この御言葉は、本当に真実です…」。森さんはしみじみとそう語る。「デビューして3年目に弟が亡くなりました。でも死は死で終わらないという強い確信をもって、主の約束に依り頼みました。神様がこのことを許された以上、何万倍にも祝福してくださる、と。毎週パーソナリティを務めるラジオ番組の働きも、一時的に声を失ったことがきっかけとなり、与えられました。試練が必ず次のステップにつながっている。だから試練が来るたび、次は何かな? と。試練を通して、神様が私自身を一段上に飛躍させてくださっているのです」
森さんは、NHK教育テレビ「ゆかいなコンサート」の歌のお姉さんを務めた後、1992年に福音歌手としてデビュー。福音歌手の道を歩み始めたのも、声が出なくなったことがきっかけだった。
渉さんが亡くなった後、森さんは大地震や台風などの自然災害やホロコーストを経験した国、飢餓で苦しむ地域など、まるで駆り立てられるかのように国内外で悲惨な体験をし、過酷な状況に置かれ、心に深い傷を負った人々のところに駆けつけては、歌を通して励まし、寄り添ってきた。
1999年の台湾大地震の時はすぐに駆けつけ、中国語と台湾語で歌を届けた。以後、毎年台湾に招かれ、各地でコンサートをするようになり、その数は300回を超える。「台湾は私のもうひとつの故郷になりました」と、笑顔で話す。
07年の四川大地震の時も、その半年後に自身が親善大使を務める日本国際飢餓対策機構のスタッフと共に現地に赴いた。壊れかけた建物に囲まれた野外ステージのコンサートに300人以上が集まった。「『中国語の勉強をしなさい』との主の語りかけを受け、10年以上の歳月の後、中国への道が開かれた」と感謝する。
その他、海外では、多くの日本移民が海を渡ってきたブラジル、ポルポト政権時代に大量虐殺のあったカンボジア、13年に台風被害に遭ったフィリピン、民族同士の争いで大量虐殺が起きたルワンダ、そして聖書の国イスラエルなどでコンサートを行ってきた。みな想像を絶するような痛み、苦しみを経験してきた国々だ。
国内では、100回以上にも及ぶ東日本大震災の被災地での支援コンサートをはじめ、広島や伊豆大島、茨城県の土砂災害・水害被災地でも支援コンサートをしてきた。「2016年は熊本被災地へ何度も行かせていただきました」と話す。その年の4月、熊本地震が発生し、熊本県や大分県の各地に甚大な被害をもたらした。森さんはその直後に被災地に入り、被害の大きかった益城町をはじめ、熊本の被災地を巡った。熊本の教会や仮設住宅で、継続的にコンサートを行っている。熊本地震から1年となる2017年の春、前震のあった4月14日から本震のあった16日の間にも、コンサートを行う予定だ。
森さんは、被災地に足を運ぶたび「弟の死がつながっている」と感じるという。自著『希望の歌と旅をして』(いのちのことば社)でこう綴る。「主がなぜ、その人の人生にこのような災害や苦しみを許されたのかはわかりませんが、私自身、弟の死があるからこそ今も歌いつづけることができるように、その苦しみを通してしか開くことのできない新しい扉があると信じます」。16年6月、父・茂隆さんが白血病で亡くなった。その日、森さんは茨城県常総市でコンサートを行っていた。「祐理、よくやった。仕事に戻りなさい」の茂隆さんのひと言が背中を押してくれたと語る。「本当に祈り支え続けてくれた父。でも、見事に天国に旅立ってくれました」
最後に「この25年をひと言で言うと、どうでしたか」と聞いてみた。すると「恵みにつぐ恵みの25年、どんなに苦しみがあっても必ずその先に新しい扉が開かれ続けた25年、苦しみは苦しみで終わらなかった25年、神の真実を体験した25年…」と、次々に溢れるように言葉が出て来た。「私自身は至らないものですが、神様の豊かな恵みを受け、歩んできました。神様は皆様の人生にも必ず大きな恵みの計画をもっておられるはず。このすばらしさ、この恵みを一人でも多くの方に味わってほしい。そして神様の道具としてそのすばらしさを伝えていくことが、私の思いです」と結んだ。
▽「森祐理25周年コンサート」の予定。【香川】9月18日、サンポートホール高松第一小ホール【北海道】23日釧路市民文化会館小ホール【静岡】30日、静岡市清水文化会館マリナート小ホール【愛知】10月7日、名古屋市東文化小劇場【東京】13日、なかのZERO小ホール【兵庫】21日、芦屋市民センター ルナ・ホール。


