
キリスト者らが中心となり、1945年の敗戦と現在まで続く様々な問題を取り扱う「第48回許すな! 靖国国営化 8・15東京集会」が8月15日にオンラインで開催された。「歴史の裂け目をとらえる 沖縄から見る戦後史再考」と題して滋賀県立大学准教授の大野光明氏が語った。
大野氏は、沖縄基地問題など具体的な社会運動にかかわりながら、社会運動の歴史を学ぶという「実践的な関心」で研究活動をしている。
前半では日本の戦後の国民国家史(ナショナル・ヒストリー)を沖縄の戦後史と対比し、後半では「歴史の裂け目」という視点で自身の活動から考察を深めた。
戦後の国民国家史をいろどるイメージとして、「平和と民主主義」「経済成長」を挙げた。一方、沖縄にあったのは「米軍直接統治の継続」「軍事化と基地経済」「核兵器の貯蔵」だった。「軍事独裁や原爆実験などアジア太平洋地域では戦争すら終わっていない状況があった。そのような中、日本は軍需産業を中心に経済発展した側面もある。私たちの戦後史の中の欠落したものを考えていきたい」
「歴史の裂け目」とは、「〈国民の歴史〉が立ち行かなくなり、そこにおさまりきれない言葉、感性、経験が躍り出すこと」と説明する(西川長夫・大野光明・番匠健一編著『戦後史再考 「歴史の裂け目」をとらえる』、平凡社)。
「歴史の裂け目では、当たり前と考えてきた『国民の物語』のイメージにそぐわない現実に突き当たる」と言う。「社会構造というものは強固に見えるが、この世界はいつでも変わり得る。そのせめぎ合いが戦後ずっと続いてきた。沖縄の『復帰』運動では、『本土』側でも運動が高まり、戦後の矛盾を象徴する問いとして注目が集まった。そこには黒人など人種問題、性差別などの問題でも連帯がありました」
自身沖縄の辺野古基地建設反対運動にかかわり、地元の京都でも座り込みや、ゲリラ的な路上カフェでの交流などで活動した。京都府京丹後市宇川で米軍基地建設問題が起きると、抗議運動に参加した。工事作業員に声を掛け合うなど交流も重視した。「地域ではこの問題に腫物を触るような空気がある。外から来た者がこの息苦しい空間をときほぐすことができれば」と話す。
「体制が作り出す分断・境界線を越える」活動にも取り組んだ。宇川の住民の生活を理解するためいっしょに稲刈りをする活動も続けた。京都市内で収穫した作物を販売し、情報交換する場もつくった。 「当事者性とは関係性。自分自身がかかえる様々な問題、傷、感性と共鳴させ、張り巡らされた問題の網の目を組み替えて、あるべき社会をめざしていきたい」と話した。
星出卓也氏(長老教会・西武柳沢キリスト教会牧師)は「少数者の声を聞くのは、『助けてあげる』ということではない。その声には自分自身を見つめ、立ち位置を確かめるための大事なものがあるのだと学ばされた」と応答した。
最後に集会宣言を発表し、新型コロナウイルス感染拡大への政策、オリンピック・パラリンピック開催による社会の負担、アジアの平和、改憲、沖縄の基地問題、原発問題、外国人労働者問題、教育問題に言及し、いのちが守られることの大切さを訴えた。
集会の動画は8月31日まで https://peace815liberal211.at.webry.info/ から視聴できる。
