「香港人」か「中国人」 か 揺らぐ97年返還の世代 香港を覚えての祈祷会

「中国人」か「香港人」か。1997年、英国からの返還以後、「中国化」が進んできた香港だが、市民の抵抗運動も繰り返されてきた。返還以後を生きる若者たちのアイデンティーは揺るがされている。日本の有志の牧師や青年らで開かれている「香港を覚えての祈祷会」が4月23日にオンライン開催された。「‶97年世代〟(香港返還年の出生)の呪縛」の題で香港人の大学院留学生が香港の現状や自身の心情を語った。【高橋良知】

 

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「97年世代をなぜ『呪縛』と呼ぶのか。この世代は、2003年のSARS流行で幼稚園卒園式が、09年豚インフルエンザ流行で小学校卒業式が、それぞれ中止になった。19年の逃亡犯条例反対運動の影響で、大学の卒業式も中止になった。卒業式を開けたのは中学の時だけ」と振り返った。

「アイデンティティーの危機」についても述べた。「中国大陸と香港では文化、社会が違い、幼いころから困惑していた。

08年の北京オリンピックが唯一中国人として意識できた時だった。中学校に入ると、様々な情報を知り、中国の統治に嫌悪感を持ち、『中国人になりたくない』と思った。

日本に来てから中国人留学生と交流して印象は変わったが、マイナスはプラスより大きい。自分を『香港人』と紹介しているが、けして中国人が嫌いなのではなく、中国人と香港人は違うということ。私は崇高な価値のために戦ってきた香港人に誇りを持っている」と述べた。

コロナ禍により香港で多数の死者が発生している状況を憂えつつ、感染対策で買い物などに義務付けられる監視ソフトのダウンロードによって、個人情報が政府に掌握される懸念も述べた。教会堂に入場するにも監視ソフトのダウンロードが必要になっている。

「中国大陸のような聖書改訂の圧力や、子ども向け書籍の中での聖書解釈のねじ曲げといったことは、今のところ香港では起こっていないが、それらも時間の問題かもしれない」とも話した。

現在留学の地で「卒業後の就職の問題、言葉や文化の壁がある」と身辺の実情も話した。香港の状況について「時間がたち、感覚がマヒする」と心配しつつ、「神様が人に知恵、忍耐を与え、傷ついた魂をあわれんでくださるように」と祈りを要請した。

質疑の中では教育の影響について、「中学生くらいまでは香港人の意識がある。9歳のいとこは、『自分は中国人だ』という意識」とも述べた。

同祈祷会の一連の報告、祈り、説教などをまとめた『夜明けを共に待ちながらー香港への祈り』が教文館で出版される。出版記念会が6月10日に東京で開催予定だ。