
礼拝では高学年が低学年と寄り添い、サポートする
東京・練馬区の住宅街の一角にある東京三育小学校は、毎週月曜朝に全校礼拝を開いている。時間になると、1年生と6年生が手をつないでチャペルに入ってきた。各学年一クラスずつの少人数教育。学年を越えたファミリーという縦割りのグループがあり、掃除や遠足もファミリーごとに活動している。
礼拝は児童が司会をし、聖書を開くときは、高学年の児童が低学年の児童を助ける。最後にミッションステートメントを唱和した。
「わたしたちは、神さまに愛されている人として、互いに愛し合い、互いの必要に応え、世界のどこにいっても平和をつくり出し、神さまの栄光を現すために共に学び、働きます」
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同校は、1919年にセブンスデー・アドベンチストキリスト教会(SDA)が設立した「天沼学院」の小学部に由来する。

平田理校長は「現在クリスチャン家庭の児童のうち半数はSDA以外の様々な教派から来ている。『教派は異なっても、聖書中心の教育は変わらない』と理解いただいている。クリスチャンではない家庭からも聖書教育への期待の声がある」と話す。ほかにも設立90年をこえるSDA系列の東京衛生アドベンチスト病院(杉並区)での出産をきっかけに同校を知るなど、近隣地域との長年のつながりがある。
キリスト教学校教育同盟に加盟し、全国の様々な学校と交流する。「学校の文化は違っても、この時代にキリスト教学校の教育を共に考え、協力し祈り合えるのが感謝」と語る。
「三育」とは徳育、知育、体育のバランスがとれた教育の意味。「体育」では水泳などでの体力づくりほか、卵乳菜食を奨励している。親子の絆を深める弁当持参を推奨しているが、共働き家庭などに配慮し、弁当注文も可能だ。
「徳育」は「単に『宗教教育』ということではなく『スピリチュアルケア』。一人ひとりが神様からケアされ、周りの人をケアできるということが大事です」
「知育」では「数値的評価にとらわれ過ぎない。子どもはミルフィーユのように層を重ねて成長していく。神様から愛された存在という自尊の感情が粘り強さを生む。順位や偏差値に揺さぶられないよう気を付け、個性と向き合うのが、少人数教育ならでは」と言う。
このような話を聴く最中、校長室のドアが開き、児童たちが飛び込んできた。教員と児童の距離が近い家庭的な雰囲気が感じられた。
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ウクライナにおける戦争について、児童、保護者から相談も受け、基本的な考えを話し合ったという。「SDAはロシアにもウクライナにも教会や学校がある。一方聖書の言葉を引用して侵攻が正当化された現実がある。大切なことは、いのちが守られること。『やられたらやり返せ』ではなく、侵攻する側のためにも祈る。戦争をやめようとしている人は両国にいる。繰り返し祈りの大切さを伝えています」
ミッションステートメントでも「平和」が語られる。「私たちがいきなり世界平和を政治的にはつくれない。まずは隣人や友だちから始めたい。『あいつが悪い』と言うだけでいいのか。意識しないと平和はつくれないということは、上級生ほどよく理解してくれる。ほかにも修学旅行は例年沖縄を訪ね、戦争の歴史や基地が身近にある現実を知ります」
世界のSDA系列の学校のネットワークが生かされ、様々な国から訪問があり、国際交流をしている。イスラム圏の学生を引率した大学教員もいた。多様な民族をルーツにした児童も在学する。「肌の色、髪の色が違ってもいのちは同じ。いのちが平和の土台。国際教育と言われるが単に英語を授業に導入するだけではなく、国と国、民族と民族の理解が重要です」【高橋良知】
