松本雅弘 クリスチャン・ライフ成長研究会主事
カンバーランド長老教会あさひ教会協力牧師
昨年の3月まで、カンバーランド長老キリスト教会高座教会で牧会していました。現在は、カンバーランド長老教会の教職として、CLSK(クリスチャン・ライフ成長研究会)主事として奉仕しています。今月から牧会について、ご一緒に考えてみたいと思います。ただその場合、牧師も教会員もそれぞれですので、「原則」のようなものを考察しても分かったようで分からない。そこで連載では私自身が物語ることを聖霊にお委ねし、それがどこか読者自身のストーリーと響き合うことでともに神さまからの気づきをいただきたいと願っています。
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高座教会から離任が近づいたある日、こんな経験をしました。礼拝堂のトイレに行きましたら、ある方が尋ねてきたのです。「先生、イエスさまもトイレ行ったのですかね…?」
最初、質問の意図が分かりませんでした。〈何を訊(き)きたいのだろう。何故、こんな質問をしてきたのだろう〉と思いました。実は、彼は交通事故で大怪我をし、その結果、様々な課題を抱えて苦闘するなか、教会に来られ、主イエスを信じた方でした。皆さんでしたら、どのようにお答えになったでしょうか?
使徒ヨハネは受肉の出来事について、「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた」(ヨハネ1・14)と語り、御子が肉体をとって世界に来られ、私たちと共に生活してくださった、と伝えています。
11世紀カンタベリーのアンセルムスは「クール・デウス・ホモ(何故、神は人となられたか)」という問い立てにより、罪を贖うために人となる神を論じました。李仁夏牧師は、この大切な命題に関して「そこで問う普遍的『人』は、ともすると抽象的人間となり易いので、アメリカの神学者ハーヴィー.コックスは、『クワル・デウス・ホモ(神はどういう質の人となられたか)』と、もう一歩踏み込んだ命題を問うべきであると言います」と語っていました(李仁夏著、『自分を愛するように-「生活の座」から、み言葉に聞く』)。この問いかけを、私は牧会者としてずっと考え続けてきたように思います。
ある時、弟子たちと舟に乗り込み、「湖の向こう岸に渡ろう」と言って出発したことがありました。ところが、途中、主イエスは舟の上で眠ってしまわれます。
日頃、人々に囲まれて生活していました。弟子たちを訓練し、神の国の福音を説き、病気を癒やし、悩みに応え、人々を愛し、仕えて生きる日々の歩みでした。確かに、人々が恵みによって新しくされ、変えられ、救われていくことは、大きな喜びだったでしょう。しかし一方で、主イエスの周りには好意的な物の見方をする人たちばかりではなく、陰や日向(ひなた)で非難する人々も多くいました。日々の激務に加え、そうした人々の存在はイエスさまをどれだけ苦しめ、疲れさせたかと思います。
「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕するところもありません」(マタイ8・20)と語られましたが、疲れを癒やす場所や機会が本当に少なかったのでしょう。ですから舟の上でしばらく休まれたのです。弟子たちの中には元漁師がいましたし…。神でありながらも、私たちと同じように弱さと限界をもって生きておられた、人の子イエスさまの姿が実によく示されています。
でも、ここに見る「弱さ」は、私たちの主イエスへの信頼を裏切るどころか、かえって「眠り」を必要とする、そのような質の人間であることを教え、それにより私たちは主イエスへの親近感を覚えずにおれません。
十字架の前夜、肝心な時、疲れがドッと押しよせ睡魔に負けてしまった弟子たちに対し「心は燃えても、肉体は弱い」とお語りになった背景には、こうしたご自身の体験があったのだと思います。
へブル人への著者は、主イエスというお方は、「私たちの弱さに同情できる」ような質のお方として生きられた。何故かと言えば、「私たちと同じように試みにあわれた」たからだと語ります(へブル4・15~16)。
私たちは、このような質のお方として、日常生活のあらゆる領域において、主イエスと交わる必要があるように思うのです。このような「質の人間」となられた主ご自身が、今日も、そして今も私たちを愛し、大切にしてくださっている恵みに浴する経験をしたいのです。
牧会とは、教会員を愛すると言い換えてもよいかもしれない。そのために必要なことは、神の愛を実感すること、味わうこと。主イエスに牧会される経験を積むことに尽きるのではないかと思っています(Ⅰヨハネ4・19参照)。
冒頭で紹介した彼に、「イエスさまも、オシッコしたと思うし、ウンチもしたと思うよ」(ウンチは余計だったかもしれませんが…)と答えたところ、彼はホッとしたような顔つきになって帰って行かれました。何かが伝わったように感じたのです。
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