本書は、祈りの本である。
「香港」という、日本から海を隔ててすぐ近くにある一つの都市を、そこに植えられた教会を、そしてそこから逃れて世界中に散らされた香港人キリスト者たちを想って、オンラインでの祈り会が重ねられている。そこで、捧げられた祈りのことばが、それに備えるため語られたみことばの説教が、そして香港のキリスト者からの生の声が、香港のために祈ることについて聖書と教会の歴史(特にキング牧師とキリシタン史についての言及が非常に興味深かった)に基づく神学エッセーが本書には収められている。

私自身、本書を読む前は、正直に言えば、香港についての関心は薄れていた。連日のように香港からのニュースが流れていたときは、そうではなかった。あるいは私が奉仕しているKGKの全国集会にて、本書の編者である松谷曄介牧師の講演を聞いた際には、心震え、祈らされた。しかし、いつの間にか、香港のことは、どこか遠い国の出来事のように感じ、祈ることをやめてしまっていた。

香港では、個人の自由が抑圧されている。しかし、それに対する見解は、キリスト者の間でも分かれていることが本書でも紹介されている。あるいは、抑圧の背後にいるのは、あの強大な中国政府であり、反対運動は次々に潰されている。私自身が祈ることから逃げてしまったことの背後には、教会の分断を見る悲しみと、問題の大きさゆえの無力感があったのだと思う。

そんな私が、本書を読むなかで、香港のキリスト者たちの、そしてそのために祈ってきた牧師たちの、必ず「夜明け」は来るという確信と希望に満ちた声に大きな励ましを受けた。そして今も、香港の地で、香港を離れた香港人キリスト者たちの間で、確かに神はそのみわざを私たちに見せてくださっているのだと教えられた。だからこそ、私は、再び祈りたいと思った。もちろん、また時間が経つと、祈ることをやめてしまいそうになることがあるかもしれない。そんなときには、また本書を手に取りたい。
評・塚本良樹=キリスト者[KGK]学生会副総主事

『夜明けを共に待ちながら香港への祈り』
朝岡勝・松谷曄介・森島豊編、教文館、1,980円税込、A5判

 

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