2025年7月25日

川口氏は、1939年の灯台社(エホバの証人)から43年のセブンスデー・アドベンチスト(SDA)まで5教派へのキリスト教弾圧が、灯台社は治安維持法第1条の「国体ヲ変革」、それ以降は第7条の「国体ヲ否定」「神宮ノ尊厳ヲ冒涜」のどちらか、または両方によって処罰されたなか、ホーリネス3教会(教団)はその再臨信仰が「国体ヲ否定」するものと見なされたことを指摘。41年の治安維持法全面改定で新設された「国体否定」は、それまで以上に思想そのものが取締対象となったことを意味することに着目した。
「神宮ノ尊厳ヲ冒涜」(耶蘇基督之新約教会が処罰対象)が三位一体の神以外の存在を否定し、神宮神社を偶像として礼拝すべきではないとする「神の問題」であるのに対し、灯台社、プリマス・ブレズレン、ホーリネス、SDAは、再臨信仰が天皇統治の廃止につなげられ、国体を否定(変革)するものとされた。
再臨信仰を説いた4つの教派の終末教義に共通するものとして、当局は、現在の国家社会は神の意に反するものであり、近い将来キリストが再臨し、「千年王国」=「地上神の国」が樹立されること、地上国家組織がすべて撃滅されること、と捉えていた。ホーリネスは「地上神の国」樹立の際、キリストが各国の統治権を摂取して統治することが、天皇統治の廃止につなげられ、国体を否定するものとされた、と見る。
当局は、ホーリネスを単独で弾圧したのではなく、キリスト教という枠のなかで見ていたことを、川口氏は重視する。「それぞれの弾圧を横断して見るとき、当局にとって重要であったのは『地上神の国』であり、それに付随して起こる出来事。それが、現在の地上国家に取って代わるもの、現在の統治体制の覆滅をもたらすものとされたからです」
「地上神の国」は灯台社事件で再臨の教義について問題にされた。川口氏は、「これがその後の弾圧の前提に置かれることで、それぞれの再臨に関する教義がこれに重ね合わされて理解されるものであったのではないか」と考えている。
弾圧されたキリスト教系団体に共通する特徴は、「現実的」という言葉で表すことができるという。司法省刑事局編『最近に於ける類似宗教運動に就て』(1943年)で判事の芦刈直巳は、「人類に対し安心立命の境地を教へるもの、之が宗教の本質である」とし、これに反して、最近の類似宗教は「個人の精神的救済」を重要な問題とせず、究極目的を「全地上に現実に成就せらるべき宗教的理想社会」とする。これが国家、社会の安寧秩序を害し、「宗教的理想社会」を目的とするものとして危険視されていたことが弾圧につながっていった、と読み解く。
検挙の経緯や理由について、具体的な事例を当局の史料から検討。その中で、きよめ教会の森五郎牧師の訊問(じんもん)調書に、千年王国(=地上神の国)建設の際、天皇の地位がどうなるかといった質問がなされていることに注目。「千年王国の建設に際し、天皇の統治権がキリストに帰するというのは国体を否定することになるのではないかと、かなり具体的に問われている。このような問いが向けられていることからも、当局は再臨信仰によって生じる天皇の地位というものを重要な問題としていたことがうかがえます」と指摘した。
「検挙と解散によって目論(もくろ)まれたことは、信者にホーリネスの信仰を捨てさせ、ホーリネスの教義を共有する団体を取り潰すことで、徹底的にその教義を葬り去ることです。指導者たちを検挙によって追いやり、組織を壊滅させた。信者を国家が許容する一般キリスト教に鞍替えさせることにより、『一般基督教』と異なる『特異』な信仰をなきものにすることでした」
終わりに川口氏は、「ホーリネス弾圧は、ホーリネス信仰の断絶、根絶へと向かわせるものでした。現実的志向をもつそれは、天皇を絶対的中心とする国家体制のなかでは存在が許されなかったのです」として、イエス・キリスト自身が再臨について語ったことば、「天地は消え去ります。しかし、わたしのことばは決して消え去ることがありません」(ルカ21・33)を引用。 「国家がいかにホーリネスの教義をなきものにしようとしても、それで神のことばが変わるわけではありません。神のことばは語られたとおりに必ず成るのです。神のことばは決して消え去ることがありません。それは私たちの慰めです」と結んだ。
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