8月3日、日本福音キリスト教会連合(JECA)終戦80年企画「『平和をつくる者』―私たちは戦争を知らない―」、がオンラインで開催された。戦争を経験した世代の信仰や祈りを若い世代がどのように引き継いでいくかを共有することを目的とし、社会委員会と青年プロジェクト推進委員会が主催した。第1部「教会と戦争の歴史」では、青年による歴史の発題と、JECAが戦後50年、80年に出した声明についての講演が、第2部「平和をつくる者」では、青年と教職者による「語り合いタイム」が行われた。
司会を担当した末松謙一さん(栄聖書教会会員)はプログラムを始めるにあたり、戦争を直接経験していない自分たちの世代と、自身や親が戦争を経験した世代との間にある認識の違いについて言及し、上の世代が積み上げてきた信仰と祈りにある核心部分を若い世代がどう継承していくかが重要だと強調した。また、現代の複雑な世界情勢の中で「平和」について考えることの難しさにも触れつつ、全世代で共に主のみ心を知る一歩になればと期待を示した。

第1部では、末松さんが「青年の視点から学んだ日本の教会の歴史」として、第二次世界大戦中の日本のキリスト教会の歴史と、戦争への加担について解説した。明治時代から戦時中にかけて、国家神道と天皇制が強化され、キリスト教会がどのように妥協し、戦争体制に協力していったか、1940年の全国キリスト教信徒大会、日本キリスト教団の成立、教会での礼拝における「宮城遥拝」(皇居への拝礼)や君が代斉唱の強制などの具体例を挙げた。また、教会が戦勝祈願や軍事献金に協力した歴史、アジア諸国への侵略を祝賀した事例なども紹介した。
続いて油井義昭さん(田園つくし野福音教会協力牧師)が、JECAが1995年に出した声明「第二次大戦における日本の教会の罪責に関する私たちの悔い改めー戦後50年を迎えて」について講演。声明が出された背景として、1967年に日本基督教団が戦争責任を表明したこと、74年のローザンヌ誓約で福音派的立場においても「伝道と社会的責任」の両立が重視されるようになったことを挙げ、さらに85年のヴァイツゼッカー独大統領の演説「荒れ野の40年」における歴史責任論も刺激となり、「特に福音派の教会に過去の教会の罪責への真摯な取り組みをすべきであるとの促(うなが)しを感じました」と言う。

JECAは戦後成立した団体であるが、「歴史を通して、信仰告白を共有する主の公同の教会の一体性に立」って、二つの罪責を表明。第一に、天皇を現人神とする国家神道体制下での偶像礼拝。第二に、侵略戦争や植民地支配に関わり、積極的に戦争協力した点。加えて、戦後も預言者として国や社会に対し警鐘を鳴らすべき役割を十分に果たせなかったことも自己の罪として告白している。最後に朝岡勝氏の言葉を引用して、物事を歴史的にとらえる視点を養うこと、聖書的な世界観を持つこと、この世との衝突を怖れないこと、教会が預言者としての声を獲得していくこと、この勤めを担う覚悟がこれからの日本の教会に求められている、と語った。
以上を受けて、小此木優さん(田園つくし野福音教会牧師)が応答。「具体的に3つの知る責任について個人的に学ばされた」として、過去を知る責任、神様の御心を知る責任、平和を知る責任、を挙げ、現代の世界情勢や自己中心的な国々のリーダー、そして自分自身の自己中心性を見つめながら、キリストによって約束された平和を信じることの重要性を強調した。

児玉智継さん(布佐キリスト教会牧師)は、全国社会委員会から発表された「戦後80年声明」について報告し、特にその「決意」の部分を説明。歴史に学び歴史認識を深める、キリスト者の社会的責任を自覚する、警戒を心がける、預言者・見張り人としての使命を果たす、聖書の使信に生きる、を挙げて、この声明が特に新しいことを述べているわけではないが、世代交代が進む中で大切にしてきた価値観を継承していくことの重要性を強調した。

第2部では、第1部を受けて、末松さん、島田ひさらさん(夙川聖書教会スタッフ)、植木謙人さん(朝顔教会会員)の青年3人と、相山扶さん(八重山福音光る海教会牧師)、姜明善(カンミョンソン)さん(恵庭福音キリスト教会協力牧師)、児玉さんの教職者3人が語り合った。
植木さんは第1部についての感想として、まず歴史を忘れないことの重要性を指摘。また「声明」にある「罪責」の具体的な内容について質問して、教会が背負うべき責任について考えを深めたいと述べた。相山さんは教会の罪として、戦前の天皇制教育や国家による教育に対する教会の無関心さを挙げ、戦後も同様に国家による教育に対して教会全体が十分な関心を持っていないことを指摘した。現在社会科教員として日本史を教える植木さんは、「じわじわと」境界線を超えてきているものに気づく知識の重要性を認識し、教員としての責任も感じていると応答した。


島田さんは、クリスチャンとして赦されているという十字架のアイデンティティーと、日本人として背負うべき罪の負い目をどう捉えるべきかという疑問を投げかけ、児玉さんは神様の言葉を本当に聞いているかを常に問い続けることの重要性を指摘し、消極的ではなく平和を積極的に作り出していく姿勢の必要性を強調した。

姜さんは自身の祖父が北海道の炭鉱に強制徴用された経験や、韓国の親戚が日本に対して持つ複雑な感情について語り、歴史を覚えることは日本人を嫌うためではなく、二度と同じ過ちを繰り返さないためであると強調した。また、多くの韓国人クリスチャンが日本にイエス・キリストの愛を伝えたいという思いから来日していることを指摘し、これはキリストの救いの恵みがなければ説明できないものだと述べた。

末松さんは、今回教会の歴史を振り返りながら、自分もあの時代に生きていたらと、当時の人を責められないと思ったとし、神様の言葉を聞くこと、神様との関わり方の大切さをあらためて思った、と語った。
島田さんは自身の教会での経験を共有し、シンガポールからの宣教チームに対して牧師が日本のアジア諸国への過去の行為について謝罪したことが重要だったと述べ、戦争を直接経験していない世代として、どのように海外の人々と交流し、また子どもたちに戦争の歴史を伝えていくべきかという課題を提起した。植木さんは戦後50年の時に「罪責告白」声明を出した人々の勇気を覚えることの重要性を指摘し、罪を認めて戻る勇気も平和への一歩だと述べた。
姜さんは平和を作るためには正確な情報を知ることが重要だと強調し、特にSNSやYouTubeなどで誤った情報が広がる現代において、事実を確認する努力の必要性を訴えると、末松さんは、広く書物などから学ぶことの大切さに言及。それに対し児玉さんは、経験していないことを想像力によってとらえ、考え続けていくことが、平和への一歩になると述べた。
最後に相山さんは、戦争が人間性を破壊することを警告し、平和を作るためには歴史を知り、現在何が起きているかを知ることが重要だと強調した。また、許された罪人として自己中心という罪との戦いを続け、聖霊の助けを求めながら戦っていくことが平和構築には不可欠だと述べた。
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