
専門の遠藤周作を中心に、マーク・ウィリアムズ⽒(国際基督教⼤学副学⻑)が、島尾敏雄、三浦綾子、永井隆らにも触れて、キリスト教と文学のテーマを考察した。日本宣教学会第19回全国研究会(6月27日、福岡市、西南学院大学)の主題講演「⽇本にキリスト教を根づかせようとしてきた⼩説家たちの役割 — 荒れ野で叫ぶ者の声?」の概要を紹介する。
§ §
明治以降、キリスト教の影響を受けた文学者は多いが、「敗戦後特に多い」とウィリアムズ氏は概観する。一方キリスト教と文学の対立も見られるとして、「キリスト教信仰を理解しようとしている者にとって、文学の作品というものは、最も相応(ふさわ)しくないジャンルである」(内村鑑三)や「宗教と文学とは矛盾する」(亀井勝一郎)などの指摘を挙げた。
「遠藤自身、宣教のための文学(護教文学)か「純文学」か、を生涯かけて葛藤しました」。ウィリアムズ氏は「実生化」(inculturation)という視点で、遠藤の諸作品を振り返り、「初期作品では、日本人に押し付けた西洋人の宗教としてキリスト教を描くが、次第に日本の受容者の立場で描くようになった」と分析した。
(次ページで遠藤の文学的な特徴、『深い河』の解説、日本のキリスト者の文学者についての総括、など。約920字)
