捕らわれない自由 普段着の読書 牧師編 第2回 鎌野直人

『アメリカはいつも夢見ている はた迷惑だけど自由な「夢の国」が教えてくれること』渡辺 由佳里著、KKベストセラーズ、千980円税込、四六判、2022年

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 自分の子どもに伝えておきたいことは、一つ二つは必ずあるものだ。私にもいくつかある。その一つが「本代はケチるな」。読みたい本があれば買え。積ん読(つんどく)だろ…
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【新連載 初回無料】普段着の読書 作家編 第1回:相手の哲学で福音を語る 餅月望(クリスチャン作家、小説家養成校講師)
はじめまして! クリスチャンのエンタメ作家の餅月望といいます。ライトノベルという中高生向けの娯楽小説を書いたり、小説の書き方を教える学校で講師をして生計を立てて…
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 今年7月、北米を訪問した。私は7年ぶり、妻は25年ぶりであった。物価が高かった。イチローがプレーした野球場でピザとミネラルウォーターを買ったら30ドル(約4千500円)した。在米日本人や日系人に出会ったが、「はた迷惑なアメリカ」(留学生を追い出す、関税を人質に様々なディールをする、嘘を真実であるかのように主張するなど)の話はなかなかしてくれなかった。政治の話も稀(まれ)であった。言いたそうだけど、議論を避けるために語ろうとはしないのだろう。分断されている、と感じた。


 だからといってはなんだが、アメリカに関する本の話をしよう、と考え、渡辺由佳里のエッセイ集を選んだ。彼女はアメリカ人と結婚して、30年近くボストン近郊に住んでいるエッセイストである。年間に200冊以上の洋書を読み、『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』などの著書でそれらを紹介している。本書は、2015年から7年間にわたってのオンラインマガジンでの連載をまとめものである。

1990年代に10年、北米に留学していた頃の記憶がよみがえった。