
教会が〝カルト化〟しないために』
坂本兵部著、いのちのことば社、1,650円税込、A5判
本書は、新使徒運動について、その「教会破壊的な要素」に特化して記している。特定の組織ではなく実態が把握しづらい新使徒運動を、筆者は一つの「傾向」と捉えて、それを「新使徒運動のパン種」と表現する。
新使徒運動は、現在においても使徒や預言者を認め、それらを自称するリーダーが働きを進めていく。そのことの問題点として著者は、教会内にヒエラルキーを生み出すこと、特定の個人の賜物に働きが依存することを指摘する。また、福音とは別の預言者のみが知りうる知識が賞賛される点を「現代版グノーシス主義」と評する。そして、新使徒運動を、「論理的必然として必ずその教会をカルト化させる恐ろしいもの」と断言している。この点が本書の最大の意義と思われる。
各所での講演、礼拝説教、雑誌に掲載された論考の6章から本書は成る。直接的に新使徒運動に言及していないものもあるが、どれもが、新使徒運動に通じる普遍的な「パン種」に関して記している。教会に都合の良い人材を作ろうとする誘惑、教会内でのカルト化の温床形成を警告する一方で、健全なリーダーの在り方や聖書的な教会形成、本来のあるべき弟子訓練についての指針と実際を示す。しかも、どれもが、しっかりとした聖書的根拠をもって語られる。とりわけ謙遜な信仰リーダーは、他人事ではなく、自らの課題として受け止めるだろう。
ドキュメンタリーの要素が多いことも、本書の魅力。語られていく著者個人の経験は、極めて貴重なもので、通常では得難いものを教えられる。自らがカルトサバイバーでありながら、被害者ポジションに立つことなく、カルトで傷ついた魂を第一に考え、自らの弱さや失敗も隠すことなく記してでも、大切なことを伝えようとする真摯な姿勢に、感銘を覚える読者も少なくないだろう。
20年以上前のこと、急成長した一教会が注目を受け、その方法と目された弟子訓練は、一大ブームに。しかし、やがて、牧師の深刻なハラスメントの発覚を機に、それがカルト的手法によるものであったことが明らかに。それは一般雑誌にも取り上げられ、キリスト教会に衝撃を与えた。本書を読み終えた今、評者は新使徒運動の広がりは、その再現になりはしないかと危機感を抱いている。「新使徒運動の論理的必然としてのカルト化」と言われても、すぐに実感をもって同意することは簡単ではないだろう。判断の困難なテーマだからこそ、事前警告として、教会の健全な歩みのために、本書を手に取っていただきたい。
(評・水谷潔=JECA・春日井聖書教会協力牧師)
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