ベテラン企業エンジニアが語る 環境対策の聖書的なとらえ方  長老教会学習会で

被造物ケアの視点で、政府や企業の環境対策を捉え直す視点が現場の一線で働くクリスチャンから語られた。

可知さん

「環境問題を聖書的に考える」をテーマにしたオンライン集会で、企業で環境関連の技術開発に携わる可知純夫氏(山の上教会長老)が、環境問題では何が課題となっているか、政府や企業などこの世の組織の取り組み、「聖書的環境コンソーシアム」の働きや、『被造物ケアの福音』(デイブ・ブックレス著、いのちのことば社)からの学びを通して語った。日本長老教会社会委員会主催のオンライン集会で10月21日に話した。

「成長の限界」とキリスト教会の環境意識の変化

可知さんは、カトリック系の学校に入り、hi-b.a.(高校生聖書伝道協力会)を通じて、信仰を持った。1972年ローマクラブによる報告「成長の限界」に衝撃を受け、エネルギー問題を考え、大学では原子力工学科で学んだ。就職した古河電工では、光ファイバー事業を電力会社と協力して進めてきた。現在は同社サステナブルテクノロジー研究所で勤務し、効率的な電力システム構築を研究する。「ローマクラブの報告後、成長を止めるという主張は世間で受け入れられなかったが、持続的な開発目標(SDGs)は世界の共通目標になった」と振り返る。

キリスト教に対しては、神から託された支配権を人間が思うままに使用したという批判があった。「しかし、実際は、世界教会協議会は、『地球環境、責任ある選択、社会正義』声明(71年)、カトリックは環境回勅『ライダート・シ』(2015年)を発表。福音派も10年の第3回ローザンヌ世界宣教会議で世界への愛と、悔い改めの必要性、環境危機に対する責務への献身を表明し、12年にローザンヌ/世界福音同盟被造物ケアネットワークが設立された。日本では聖書的環境コンソーシアムが情報の共有・発信をしている」と紹介。可知さんも、同コンソーシアムの『被造物ケアの福音』(デイブ・ブックレス著、いのちのことば社)読書会に参加し、2章まで読んだ。

ブックレス氏の解説を紹介し、「生態系全体に対し、人間が頂点に立つ『人間中心主義』でも、他と同列の『自然崇拝』でもなく、生態系の下に位置してケアをする役目がある」と述べた。

自身が属する教会が土台にする長老教会改革主義神学の伝統にも触れた。「100%神の力が中心である。環境問題の根底には人間中心の世界観がある。人間の権利が神の権利に優先することが当たり前の現在にあって、もう一度神中心に戻したい」と語った。

『被造物ケアの福音』の図を引用して神、人間、自然の関係を整理し、原罪が「神と人間のあいだのみならず、他の生物、地球の秩序も崩壊させてしまった」と環境問題を聖書から捉えなおす立場を明らかにした。

足尾銅山鉱毒事件を被造物ケアの視点で見直す

環境破壊の例として、土壌汚染により、渡良瀬川下流域の漁業や耕作に被害を与えた足尾銅山鉱毒事件(1880~1918年)を挙げた。古河電工(1884年創業)の親会社の源流、古河鉱業(75年創業)の社有地から起きた事件だったため、可知さんは関心を持ち、独自に資料を調べ直した。

(次ページで足尾鉱毒事件の考察、現在の政府・企業の環境対策の動向、聖書的な行動の勧め、質疑応答など、約1700字)

聖書的環境コンソーシアム主催の「キッズ環境プログラム」が「美しいフィリピンの自然があぶない!! 気候変動の問題から覗く世界の『今』」のテーマで11月29日10時からオンラインで開催される。