タリバン政権下アフガニスタン 1月から地下教会への迫害激化

2001年にイスラム原理主義のタリバン政権が崩壊し、アフガニスタンで活動していたキリスト教団体が2021年8月にタリバンの政権復帰に伴い退去して以来、同国のクリスチャンの置かれている状況が分かりにくくなっていた。そうした中、本誌提携の米福音派誌クリスチャニティトゥデイが4月30日、同国内の地下教会が1月以降イスラム原理主義者から襲撃を受け、数十人のメンバーが殺害された事件を報じた。隣国パキスタンからアフガンの地下教会を支援している牧師が伝えた。

ヘラートの風景 写真=Mehdi Khoshnejad https://www.pexels.com/

過激派の襲撃により数十人のクリスチャンが殺害

ジル・ネルソン

犠牲者の数人に洗礼を授けたパキスタン人牧師は、タリバン支配下で暮らす教会員たちの指導を続けている。

1月下旬のある日曜日、イルファン牧師はパキスタンのクエッタで開催された聖書セミナーで説教をしていたところ、彼が関わっているアフガニスタンの地下教会のメンバーから、パニックに陥ったメッセージを受け取った。イスラム過激派がバーミヤン市近郊にあるその教会の場所を突き止め、ハザラ族のキリスト教改宗者約24人を殺害したのだ。

犠牲者のほとんどは銃弾による傷で亡くなったが、襲撃者たちは20歳前後の若い男性1人の喉を切り裂いたと、イルファン牧師は語った。その後、彼らはその家の教会を焼き払った。

この知らせにイルファン牧師は打ちのめされ、一晩中泣き明かした後、翌日のセミナーで話すのに苦労した。彼は1週間、一晩に2、3時間しか眠れなかったと振り返った。

イルファン氏は、アフガニスタンに関係を築き福音を伝えるため2009年に入国した。最初の改宗者から始まった地下教会は、今では数百世帯にまで成長している。その後、多くの人々がヨーロッパ、米国、イランへ移住したが、イルファン氏は現在、85世帯(ハザラ人60世帯、スンニ派ザドラン人25世帯)を牧会している。彼らは2021年にパキスタンへ逃れてきたが、数年後にアフガニスタンへの強制送還に直面した。

(イルファン氏の活動には危険が伴うため、CTでは彼の名前をファーストネームのみ表記しています)

アフガニスタン人がキリスト教に引かれる理由の一つは、彼らが「強制、恐怖、時には暴力を信仰と結びつける」宗教体制に直面しているからだと、イルファン氏は指摘する。2021年の米軍のアフガニスタン撤退以来、タリバンやその他の過激派組織は、イスラム教を離れる人々を処罰している。

「福音に出会うとき、彼らは根本的に異なる啓示に出会うのです。それは、功績や宗教的行いによる宗教システムではなく、キリストが成し遂げた御業によって実現した救いの宣言なのです」とイルファン氏は語る。

同氏は、仮想プライベートネットワーク(VPN)を通じて、説教やディスカッションの質疑を音声メッセージで送信することにより、地下教会の人々を指導している。ビデオ通話は安全ではなく信頼性も低いが、音声メッセージは比較的安全で、削除も容易だという。時折、国境を越えて地下教会を訪れているが、昨年初頭以降、アフガニスタンとパキスタンの国境沿いで戦闘が激化したため、入国できていない。

イルファン氏によると、アフガニスタンのクリスチャンは非常に多くの課題に直面しており、数え切れないほどの苦難に苛(さいな)まれている、という。4月16日、過激派が別の襲撃でさらに10人のハザラ人改宗者を殺害したことを聞いた。「家族たちは身を隠そうと努め、支援を求めています」

あるクリスチャンの夫婦は、幼い娘が入院していたため、1月のアフガニスタンでの礼拝に出席できなかった。彼らは襲撃事件を知ると、直ちに街から逃げ出し、タリバンに追われてはいないかと恐れている、と連絡してきた。襲撃者たちは教会から18歳と21歳の姉妹を拉致したという。この女性たちの両親と、4歳前後の男の子を含む3人のきょうだいは、全員この襲撃で命を落とした。

イルファン氏は、タリバンによる政権掌握を受けてパキスタンへ逃れたこの家族に、約4年前に洗礼を授けたことを振り返った。洗礼式の写真には、小さなビニールプールに立つ少女たちの父親の隣に、イルファン氏が写っている。その後、パキスタン政府が不法滞在外国人の強制送還を開始したため、この家族はアフガニスタンに戻っていた。

2021年以降、少なくとも60万人のアフガニスタン人がパキスタンへ逃れており、イルファン氏は彼らの再定住を支援する人道活動に携わっていた。多くの人が「衣服も、生活手段も、希望も持たずに」到着したといい、同氏はパキスタン国内のネットワークを通じて住居を確保し、小規模な事業の立ち上げを支援してきた。多くがパキスタンのハザラ人コミュニティーの中に身を隠しているが、その中にはイルファン氏が牧師を務める35のクリスチャン家庭も含まれている。

難民の中にはすでにクリスチャンだった人もいれば、イルファン氏の説教に触れて改宗した人もいた。しかし2023年11月、パキスタン当局は、在留資格のないアフガニスタン難民を国外退去させるため全国的な取り締まりを開始した。この動きは、両国間の紛争が続いていることから、最近さらに激化している。

4月16日にアフガニスタンのヘラート市で発生した襲撃事件では、過激派がハザラ人コミュニティーの30人を殺害した。その中には、イルファン氏の地下伝道ネットワークと直接つながりのあった10人のキリスト教改宗者も含まれていた。イルファン氏によると、過激派は自宅にいた30代前半のクリスチャンたちの喉を切り裂いたという。

イルファン氏は犠牲者たちを知っており、そのうちの1人は、米軍がアフガニスタンに駐留していた当時、国際機関傘下の現地病院で働いていたことがある。「タリバンがそうした活動に関わる人物を活発に捜索していたため、彼はすでに脅迫を受けていた」とイルファン氏は述べた。別の犠牲者は、2024年にアフガニスタンへの強制送還の動きに伴い、家族をパキスタンに残したまま帰国していた。

ハザラ人はアフガニスタンで迫害を受けている少数民族だが、イルファン氏は、この男性たちがクリスチャンであると特定され、信仰ゆえに標的とされた可能性が高いと考えている。ハザラ人は、アフガニスタンの人口4500万人のうち10~20%を占める。この民族的・宗教的少数派グループは主にシーア派ムスリムであり、スンニ派ムスリムが多数派を占める同国において、過激派から嫌悪されている。

人権団体「クリスチャン・ソリダリティ・インターナショナル(CSI)」の広報担当ディレクター、ジョエル・ヴェルドカンプ氏は、タリバンや過激派が数十年にわたりハザラ人を迫害してきたと述べた。近年、攻撃は増加しているという。

「残念ながら、彼らは多くの暴力に苦しんできた」とヴェルドカンプ氏は語った。さらに、ハザラ人は「顔立ちが非常に特徴的」であるため、見分けがつきやすいと付け加えた。

キリスト教に改宗した人々は、より大きなリスクを負うことになる。ヴェルドカンプ氏によると、アフガニスタンのクリスチャンは、タリバンの支配から遠く離れた僻地に住んでいない限り、ムスリムを装わなければならないという。男性は地元のモスクでの礼拝に出席し、ひげを伸ばさなければならず、女性は全身を覆い、男性の付き添いがいない限り家を出ることができない。これらに従わない者は、尋問を受けたり、様々な形の罰に処されたりする危険がある。

1月、タリバンはシャリア法の規定を明確化し、ある種の奴隷制を容認するとともに、夫が妻を殴打することを許可したと、ヴェルドカンプ氏は付け加えた。特に身も凍るような拡大措置である第58条は、改宗者に適用される。「イスラム教を離れて他の宗教に改宗した女性は、終身刑に処され、イスラム教に戻るまで3日ごとに10回の鞭打ちを受けることになっている」という。

アフガニスタンにどれだけのクリスチャンが残っているかは把握が難しい。CSIによると、2021年8月の米軍撤退時点で、約2万人がアフガニスタンに住んでいたとの推計もある。この撤退は、20年にわたる戦争疲れの末に超党派的に行われたものだが、バイデン政権の拙劣な実行には批判もあり、それがタリバンによる急速な政権奪取を招く条件を作り出した。それ以前は、米国が支援するアフガニスタン・イスラム共和国が国を統治していた。その崩壊は、1,000人以上の民間人のや、広範囲にわたる避難民の発生、そして自由の縮小をもたらした。

ハドソン研究所の宗教の自由センター所長であるニーナ・シェイ氏は、タリバンによる政権掌握後にクリスチャンの避難を支援し、多くの人々が拡大するイスラム過激主義を恐れていると述べた。

「タリバンよりもさらに過激なテロ組織が活動している。そして、秘密の教会があることを知れば……彼らを殺してしまうだろう」とシェイ氏は語った。「2021年のその時期、私は多くのクリスチャンと接したが、彼らはただただ恐怖に震えていた」

シェイ氏によると、多くのクリスチャンは廃墟の屋上で暮らし、食料や水を調達するためだけに地上に降りていたという。グレン・ベック氏の「ナザレン基金」と連携していたシェイ氏も、安全上の懸念から避難計画を明かすことができなかったため、安全な隠れ家に留まっていた人々の中にも、次第に被害妄想を抱く者が現れた。彼らは国外脱出が叶わないのではないかと恐れていたのだ。

同氏は、タリバンによる政権掌握以前から、アフガニスタンのクリスチャンは迫害に直面していたと指摘した。その後の数年間、人権侵害が増加するにつれ、国外への脱出ルートは減少していった。

2024年、米国国際宗教自由委員会は国務省に対し、アフガニスタンを「特に懸念される国」に指定するよう勧告したが、米国がタリバンを合法的な政府として承認することを拒否していることが、その手続きを複雑にしている。「ワールド・ウォッチ・リスト」は、アフガニスタンをクリスチャンにとって世界で11番目に危険な国と位置付けており、信仰が露見した信徒は殴打、拷問、さらには死に至る危険にさらされる可能性が高い。

イルファン氏は、黙示録2章8~11節に登場する、迫害を受けながらも忠実な信徒たちであるスミルナの教会や、ダニエルの生涯について説教することで、アフガニスタンのクリスチャンを励ましている。

ヴェルドカンプ氏は、クリスチャンは自国の法制度の中で迫害された信徒のための亡命ルートを提唱し、地下の支援・援助ネットワークを支えることで、地下教会を支援することができると述べた。「それは非常に困難な課題ですが、パキスタンにはこれに協力しようとする教会関係者が大勢います。私たちは彼らの申し出を真剣に受け止める必要があると思います」と彼は語った。

ヴェルドカンプ氏は、アフガニスタンの教会のために祈るよう強く呼びかけている。「神は、私たちの兄弟姉妹のための祈りを聞いてくださると約束してくださっています」と彼は語った。「祈り……は、主が情熱を注がれる事柄に対して私たちの心も情熱を注ぐように形作り、主の心が痛む時に私たちの心も痛むようにしてくれるのです」

クリスチャニティ・トゥデイの記事。許可を得て翻訳しています。クリスチャニティ・トゥデイの日本語版記事(
※)はすべてこちらでご覧いただけます。※主に日本関係の記事

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