(C)2022「散歩時間 その日を待ちながら」製作委員会

新型コロナウイルスCOVID-19のパンデミックに襲われ、この数年間は商いも旅行も仕事も在宅にシフトされ言いようのない閉塞感に覆われた生活を送っている。感染者数が減少傾向になり治まるかと思うと、変種株の波状攻勢で気持ちが落ち込む…。パンデミックに限らず、それは平常の暮らしにも起こること。10代から40代のカップルたちが、そんな重苦しさを感じながら今日を乗り越えていこうとする、明日への想いにエールを送る佳作。

コロナ禍で立ち止まらされた
それぞれの想いを見つめる一日

2020年11月20日、しし座流星群の活動が極大となる一日。

20代の新婚カップル恵紙亮介(前原滉恵)とゆかり(大友花恋)。この日は、コロナ禍で結婚式を上げられなかった二人のために、大学の同窓生で同じ焼き鳥店のアルバイト仲間たちがささやかながらお祝いのホームパーティに招かれていた。だが、同居生活を始めたばかりなのに妻ゆかりは気乗りしていない。出発時間が迫っていても、亮介は相変わらずネクタイの場所も覚えられず、パーティ用に亮介が買って来た安価なワインにも不満で、何か意見を言うとすぐゆりかに調子を合わせるのも苛立つ。しかも、パーティのメンバーは亮介の友人で初対面の人たちばかりなのも気が引ける。

東雲真紀子(柳 ゆり菜)は、祖母が住んでいた郊外の一軒家で独り暮らし。刺激のない寂しさから亮介とゆかりの祝福パーティを呼び掛けたが、手料理は苦手でデザートのロールケーキづくりだけチャレンジ。ホームぺーティ用の料理はデリバリーのUber Eatsに発注した。ゲストたちが来る前に、配達パートナーのバイトをしている30代で俳優修行中の片岡つむり(アベラ ヒデノブ)が料理を届けると、真紀子は盛り付けが済むまで待たせて、ちゃっかり容器の廃棄まで片岡に押し付ける。座卓に配膳を済ませると程よくゲストの稲田秀和(中島 歩)と武田圭吾(篠田 諒)が到着。真紀子が手作りしたという料理をほめながら、みんなでバイトしていた焼き鳥店がコロナ禍の自粛がたたり店仕舞いする世間話などで時間をつぶしていると、亮介とゆかりが真紀子の家を探し当てやって来た。ゆかりの気まずい雰囲気を汲んだ真紀子は、ゆかりの気持ちに耳を傾ける。だが、家を出る前に妻とひと悶着あった秀和は、少しシニカルに結婚生活の問題をリアルに突き付けて場をしらけさせてしまう。さらには、圭吾がゆかりだけ知らなかった亮介の隠し事を口走ってしまい祝いのパーティに不穏な空気が漂い始める。

(C)2022「散歩時間 その日を待ちながら」製作委員会

40代のタクシードライバー淡路道彦(高橋 努)は、妻が実家で女の子を出産したばかりだがコロナ禍を気遣い、我慢して東京で仕事に就いている。だが、明日は自分の誕生日。だが、スマホで何の日か妻に尋ねるが「しし座流星群の日だね」と気づかない様子。だが、いいことの前兆か。酔って店から出てきた客が埼玉の飯能まで言ってくれという。客は、自粛の影響で焼き鳥店を閉じたのだと愚痴り始める…。中学3年の川村 鈴(佐々木悠華)は、幼稚園から中学まで一緒の学校に通って来た香取光輝(山時聡真)が望遠鏡を背負ってしし座流星群を観察しに行くというので後をついていく。公営のプールサイドで夜になるのを待つ二人。別々の高校を受験するのを機に、鈴は光輝に自分の淡い思いを伝えたいのだが、なかなか言い出だせない。コロナ禍で修学旅行は中止になり夏休みもつまらなかった二人。バックパックに入っていた花火を見つけた…。

互いの気持ちがすれ違い始めている新婚カップル、演劇のオーディションがコロナ禍で中止になり気持ちが折れそうになる若手俳優、産まれたばかりの娘と妻に会いに行きたいのを我慢する夫など、それぞれの人生が点在しているかのようでどこかつながりが感じられる身近な物語に、流星の出現数がもっとも多い極大日の夜が想いのロンドを結び合わせているようで、癒しと励ましの温もりが降ってくる。【遠山清一】

監督:戸田彬弘 2022年/95分/日本/G/ 配給:ラビットハウス 2022年12月9日[金]新宿シネマカリテほか全国順次公開。
公式サイト https://sanpojikan.com/
公式Twitter https://twitter.com/sanpojikanMovie