「”彼らをお赦しください”とは簡単に祈れない」ウクライナ船越宣教師報告 2023年5月12日

ウクライナの船越真人宣教師から現地の情報が5月12日に編集部あて寄せられた。一部編集して掲載する。

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以下は、私たちの友人で牧師のアレクサンドル・カリンスキー師(ウクライナ西部の町Zdolbunivにあるプロテスタント教会の牧師)が書いたものです。彼は現在、牧師をしつつ、ウクライナ軍の従軍牧師(チャプレン)もしています。ウクライナ東部ドンバスにも度々行き、兵士たちの心のケアをしながら戦況を目撃し、そこで感じたことを書いたものです。

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この現状を直視することがどれほど辛いことか。そして、そのすべてを実際に経験した人たちの気持ちを想像するのは、もっと辛いことなのです。私のカルチフ出身の友人は、私たちに言いました。 「ハリコフ市民はこのロシア人たちを決して赦さないだろう」と。 かつては静かで平和だったサルティフカ地区、より正確に言えば、そこに行われたすべてのことを見ていると、本当に単純な疑問が湧いてくるのです。

「これらの破壊を行なったものたちはいったい何者なのか。彼らをそんなふうに育てた人々はいったいどのような人々だったのか。彼らを教えた教師たちとは、いったいどのような種類の教師たちだったのか。いったいどんな宗教家たちが彼らの宗教心や価値観の形成に影響を与えたのか。」

クパンスイラク、イジュム、リマン、コンスタンチニフク、クラマトイラク、ドルジキフク、ポクロフスク、ミルノグラード、セリードヴォ、クラホヴォ、ザポリッツイラク、これらの地方の町々、村々を車で走っていると、人の心の中の悪と闇の深さに驚きを禁じえません。これらの町や村を外国のそれと比較しながら、どうやって自分たちの残虐行為や悪意を正当化し、自分たちを「解放者」と考えることができるというのでしょうか。唖然とするしかありません。

最近、東部から西部に移ってきた友人でウクライナ語の練習を始めたばかりの友人がいるのですが、彼が「人」と「生き物(動物)」を間違えたとき、それがおかしくて一緒に笑ったのを思い出します。しかし、ここに見るような悪は、到底「人」にはなし得ることができないことで、それはまさに「動物・獣」の仕業だと言う以外に形容のしようがないものなのです。その心に神を失うとき、人は「動物、獣」となり、恐ろしい「鬼」となりえるのです。おそらく、嘘とプライドと欲に取りつかれた二本足の生き物より、猿の子孫の方がましなのかもしれません。

もし、まだ神を見失ったニンゲンの堕落性と残酷さを信じられない人がいたら、この東部ドンバスに来て見てほしいと思うのです。ここには、私が今書いている罪人たるニンゲンの堕落性と凶悪性を示すあらゆる視覚教材が揃っています。そこにある家、車、村、都市の焼け跡には、悪魔のようなプライドの醜悪さと、焼けただれた良心の狂気がすべてはっきりと見えるのです。この破壊行為のプレーヤーたちだけではなく、彼らを鼓舞してきた人々、そして彼らの悪に神からの視点を与えなかった人々も同じく非難に値すると思います。

数日前、クピャンスクの博物館で二人の女性が普通通りに仕事をしていましたが、突如ロシアのロケット弾がすべてを吹き飛ばし、二人の命をあっけなく奪ってしまいました。このような話は何百、何千とあるのです。ただ「欲しい」というだけの誰かの傲慢で深い欲のために、殺人、残虐行為、暴力が日々行われている。プライド、自己崇拝、貪欲、それは神の呪いと完全な非難に値します。そして私は、すべての悪が滅び、罪のない神の支配がすべての栄光と調和をもって到来する日が来ることを心から期待しているのです。そして、虚偽と膨れあがったバブルのような「偉大さ」に飾られた帝国の崩壊は、信じられないような変化をもたらすことになるでしょう。

私たちは、神の恵みと神の裁きの啓示の両方を必要としています。神の正義は地上のあらゆる不義に耐える力を与えてくれるものです。しかし、公然たる具現化した悪の巨大さを目にするとき、イエスが言われたように「父よ。彼らをお赦しください。彼らは自分で何をしているのか分からないでいるのです。」とは簡単に言えない自分の弱さを痛感するのです。なぜなら、彼らは「自分たちには自分たちのしていることが分かっている」と言い切っているのですから。主よ、どうか弱い私たちを助けてください。

アレクサンドル・カリンスキー(2023年、5月7日)

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船越真人・美貴