教会に居場所をつくるために 日本イエス・キリスト教団 堺栄光教会
開拓伝道から53年。4回、会堂を移転し、現在は大阪府堺市美原区に会堂は立つ。近年、大規模商業施設がオープンし、人の流れが変わってきたこの地でどのように教会形成をし、宣教しているのか後藤牧師夫妻に聞いた。
「伝道集会は全然していません」と堺栄光教会の牧師、後藤真さんは言う。「無造作に人を集めようという気持ちはないんです。関係を作っていかないと教会につながらない。ですから基本的に教会員が自分の知っている人、友だちを連れて来て、教会でまた誰かと友だちになって。そういうことで教会に居場所を作っていく宣教の形がいいと思っています」
当教会では、後藤夫妻が十年前に赴任する以前から、小グループでの分かち合いを大事にしてきた。男性、女性、青年、中高生、子どもと、3~4人のグループに分かれ、主に礼拝後に、近況報告と祈りの時を持っている。「最終的には、小グループに入れる信徒になってほしいんです。小グループの交わりの中に居場所がありますから」
人間関係を深めることで、信徒それぞれが教会に居場所を見つけることができ、分かち合うことで信仰を深めていく。「グループのメンバー同士でかなり話しているので、そこで解決したり、助け合ったりしています。私たちは後からリーダーたちに報告を聞くだけですね。自助グループになっています」
「キッズアガペ」とよばれる子どものグループもある。分かち合いのできる信徒になることを目的としている。いわゆるメッセージを聞いたりなどの「教会学校」ではない。賛美や遊びとともに、大人とともにした礼拝の説教を復習しながらお互いのことを話し合うのだという。「自分の言葉で分かち合うことができるように、また人として成長させていきたい。大人も子どもも同じ方向性で同じことをやりたいと思っています」
今は教会員の子どもが2、3人ほど。「地域の子どもは日曜日にはよんでいないんです。クリスチャンホームの子と、地域の子どもに同じ聖書の話をすることは成立しないと考えています」。また、保護者の同意を得ずに教会に子どもを集めることも「今の時代にはなかなか通らない」、むしろ「へたに引き込んでいないというのが、地域の信頼につながる」と考えているのだ。
といって何もしていないわけではない。「学区の小学校が水曜日に早く終わるので、遊びに来ていいよと、聖書の話はしないで、ただ遊び場として開放していました」。コロナ禍でしばらく閉じていたが、そろそろ再開できるだろう。
教会に来ている子が日曜日に友だちを誘うのは時間帯的にも難しい。しかし、平日に遊びに誘うだけならできる。「教会に連れてくる経験こそが大事だと思います」。一度、教会の敷居をまたいだ子が、中高生になって勉強するために教会を訪れることもある。
小グループの中で最も活動的なのは、青年たちの「ヤングアガペ」だ。15人ほどのメンバーが、既婚者、社会人、学生とさらに分かれている。牧師が作成した説教からの設問に従って「熱心に」分かち合っているのだという。
これからの宣教を担っていく青年たちがしっかりと育てられている。
礼拝後のヤングアガぺの様子。牧師作の説教設問を使って熱心に学んでいる
これからの事はこれからの人に
現在の地に会堂が建ったのは17年前のこと。前会堂から距離があり、30分ほどかけて通う教会員が多い。移転した当時、ここは教会未設置地域で、地元の人は1、2家族だ。ここ10年で、大きな商業施設ができ、道が渋滞したりと、人の流れが変わってきた。
そのような中「地域に対する宣教責任を果たすため、教会という集まりが地域に対して具体的に何ができるのか」を考え始めた。
「今の70代の人は、成功体験があると思うんです。伝道したら人が増え、会堂が建った、と。でも、今はその成功体験ではうまくいかないってことがわかってきました」
だから、「これからの教会のことはこれからの人が考える。そして、それを今までの人がサポートする」という体制に移行していきたい。それが今の課題だ。
「教会に人を呼ぶよりも、地域のイベントに出て行き、賛美ライブとかできるかな、と考えますが、これもやっぱり昔からよくあったこと。結局、50代の私はこれくらいしか思いつかない」
先日も宣教戦略について青年たちと話していた時に、「人が教会に来るか、来ないかは、教会に受け皿があるかないかですよ」と言われたという。「確かにその通りだなと。居場所がなければ教会に来られない。居場所を作ることが大事だと遅ればせながら気付かされました」
その居場所はリアルな場所だけではない。中高生リーダーの青年はネットでグループを作っている。オンラインでゲームをし、オンラインでディボーションの分かち合いをしている。「教会が遠い子も、あまり来ない子もその場にいるんですよ。その手があったか、と思いましたね」。そして時には土曜日に、教会に泊まり「オフ会」をしているのだという。
今後どのような宣教方法が出てくるのだろうか、楽しみだ。
(2023年06月18日号 08面掲載記事)
□―――――――――――――――――――――――――□
【お知らせ】★週刊「クリスチャン新聞」がリニューアルしました!!★
☆新たな装い 今求められる情報を伝道牧会の最前線へ
☆紙面レイアウトを刷新 文字が大きく読みやすく
☆独自取材による特集企画で教会が今直面している重要テーマを深く掘り下げる特集企画
☆教会の現場の必要に応じた新連載が続々スタート
□―――――――――――――――――――――――――□
★「クリスチャン新聞WEB版 https://クリスチャン新聞.com/csdb/」(有料)では、
1967年創刊号からの週刊「クリスチャン新聞」を閲覧、全文検索(1998年以降)できます。