河野 優 石神井福音教会協力教師、前日本同盟基督教団法人事務主事
ある教会が宗教法人設立のために所轄庁の窓口を訪ね、教会の過去の資料(教会規則、週報、記念誌、決算報告書など)を見せて相談したところ、担当者から文書「規則等の認証に関する審査基準(留意事項)」を渡されて次のように言われたという。
—同文書にある通り、この教会が宗教団体であることを確認するために「過去3年間程度の実績の一覧」が必要である。「過去3年間程度」とは、今から3年間の実績を見るということで、現時点からさかのぼって過去3年の活動実績を見るのではない。今後は概ね3か月ごとに3年間、次のような文書を添付して宗教活動報告書を提出すること。添付文書は定期的な集会と内容、事務処理簿、役員会議事録、信者名簿、週報、会計報告、集会等の写真などである。—
一方、先とは別の都道府県に所在する教会が同様に相談したところ、次のように言われたという。
—(教会から提示された各種資料を見て)この教会が宗教団体として過去3年以上の活動実績を持っていることが確認できたので、規則認証手続きの準備に進むことができる。—
一つ目の教会は3年間誠実に報告書を提出し、その後規則認証申請を行い、無事に設立登記まで完了することができた。最初に所轄庁の窓口を訪ねてから手続きが完了したのは4年後であった。二つ目の教会は直ちに規則認証申請の準備を行い、手続きが完了したのは半年後であった。なぜこれほどの差が生じたのだろうか。
教会を行政の下に置くことなく
冒頭文書(審査基準)は二つ目の教会でも示されており、内容の相違はなかった(他の都道府県の審査基準も内容に大差ない)。また、いずれの教会もそれぞれ数十年の歴史をもち、信徒数は100人以上、団体としての運営体制も十分整っているという点で共通していた。
大きく異なったのは、所轄庁による「過去3年程度」の解釈であった。二つ目の教会に所在する所轄庁では示された説明文書に「事前協議(期間中)以前の3年間の活動実績が審査対象となる」と明記されていた。過去を見る基準点を一つ目は規則認証申請時点に、二つ目は窓口を訪ねて協議を開始した時点に置いているのであった。
私は二つ目の教会への対応、解釈が妥当な運用と考えているが、見聞きするほとんどの事例では3年間の実績を積んでから申請するのが当たり前となっているように思う。そして、定期的に教会の詳細な活動状況報告をすることが手続き上必要だとしても、3年もの間定期的に教会活動を行政に報告し続けることには注意が求められる。それは、行政が教会の宗教団体としての適格性を審査しているかのように、また宗教団体とは何かということを行政が決めるかのように錯覚しないようにすることである。冒頭にある通り、行政は教会にかなり詳細な資料の提出を求めているが、果たしてそれらが妥当なのか、時には提出拒否することも含めて、十分な検討が必要であろう。
宗教団体、宗教法人に対する社会の目が厳しくなっている中、宗教法人の規則認証や解散手続きが注目され、行政は宗教法人の監督・規制を強化すべきとの声を多く耳にしている。しかし、宗教法人、宗教団体は行政に監督されるいわれはなく、ましてや規制されるべきものでもない。今回見た「過去3年程度の実績」も、あくまで宗教団体であるかどうかを確認するものであって、それ以上に行政が宗教団体の内面に踏み込んでその可否を審査するようなものではないことを十分に理解しておくことが大切である。教会は法令にのっとって誠実に対応するとともに、行政が教会の信仰にかかわる事柄に触れるようなことがあれば、自らを行政の下に置くようなことはせず、毅然とした態度をもって信仰に基づいて対応することが必要である。

《連載》教会実務を考える